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〈大阪公立大学〉
新型コロナウイルス、唾液中のたんぱく質に感染予防効果
JS-Weekly No.838
大阪公立大学などの研究チーム、国際科学誌に発表
ポイント
① 唾液の分泌量が多い子供ほど軽症の傾向
② ウイルスと受容体との結合を2種類のたんぱく質が阻止
高齢者は唾液の分泌量が少なく、発症や重症化に関係している可能性も
大阪公立大学の吉里勝利特任教授(合成生物学)、松原三佐子准教授(細胞分子生物学)などの研究チームは、唾液に含まれる特定のたんぱく質に、新型コロナウイルスの感染を防止する役割があることを解明したと国際科学誌に発表した。
研究チームによると、唾液の分泌量が多い子供ほど軽症であることに着目。加齢に伴って唾液の分泌量が減少する高齢者の発症や重症化に関係している可能性があるとしている。松原准教授は「感染予防薬の開発につなげたい」と述べた。
溶液中の唾液の濃度が高くなるほど、ウイルスのたんぱく質とヒトの受容体が結合する割合が3~6割減少
新型コロナウイルスは、ウイルス表面のスパイクたんぱく質と、ヒトの細胞表面にある「ACE2」と呼ばれる受容体が結合することで感染する。
研究チームは、健康な20~70代の7人の唾液を使って、ウイルスのたんぱく質と受容体の結合に変化が現れるかを調べた。その結果、普通の生理食塩水に比べて、溶液中の唾液の濃度が高くなるほど、結合する割合を3~6割減らせることが判明した。
さらに、ヒトの受容体と結合する唾液中のたんぱく質は4種類あり、そのうちの「好中球エラスターゼ」と「ヒストンH2A」というたんぱく質が、ウイルスのたんぱく質と受容体との結合を阻止する能力が高いことが分かった。この2つのたんぱく質がウイルスの増殖を防いでいる可能性があるとみて、重症化との関係も含めてさらに調べるとしている。
研究チームは、受容体と結合する能力が高い既存の食品保存剤などを生かして、感染予防薬を開発することを目指している。松原准教授は「あめやガムで唾液の量を増やすことで、予防効果が高まることも考えられる」と話す。