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みんなの気持ち

第24回 “みんなの気持ち”を大切にするには、どのように接すればいいのでしょうか?

2024.03 老施協 MONTHLY

健康社会学者として活動する河合 薫さんが、介護現場で忙しく働く皆さんへ、自分らしく働き、自分らしく生きるヒントを贈ります。

あちらの気持ちを立てれば
こちらの気持ちが立たぬ

 あちらを立てればこちらが立たぬ、双方立てれば身が立たぬ、と古くから言われる通り、対立する両者を丸く収めるのは至難の業。うまくまとめようとすればするほど心はミシミシとゆがみ、ストレスはたまる一方だ。施設の中堅どころ、入社6年目の春田さん(仮名)もその一人だ。

「年齢的にも経験的にも、チームのまとめ役を担う場面が増えてきました。しかし、これが難しいのです。上司の指示を実行すると、ベテランスタッフの指示と反することがよくあります。利用者さんの場合も、あちらの利用者さんの言い分を聞くと、こちらの利用者さんの言い分を否定することになったり。私はみんなの気持ちを大切にしたいし、尊重したいのですが、結局誰かを傷つけることになってるような気がしてなりません。みんながいい気分で過ごすには、どうしたらいいのでしょうか」――。

 春田さんの眉間にしわが寄った顔が想像できるお悩みである。最近は「われ関せず」とばかりに見て見ぬふりをする人が多いのに。春田さんの責任感の強さ、優しさには心から拍手を送ります。

 が、人間関係は時に気負えば気負うほどうまくいかないもの。相手を信頼し、任せることも肝心だ。とはいえただ任せるだけではダメ。「吐かせる→謝る→信頼する」次の手順を踏んで、相手に「私は大切にされている」と思わせることだ。

①文句や意見をとことん吐かせる。相手が利用者さんの場合は、腰をかがめるなどして目線の高さをそろえる。上司・先輩の場合には、言い分をメモ帳に書き留める。途中で反論したり意見するのはNG。言いたいことを全て吐かせること。

②「私が気が回らずごめんなさい」と謝罪する。「何で私が?」と思っても心を込めなくていいので、相手の目を見て謝り続ける。

③この時点で相手は「私も言い過ぎた」「あなたが悪いわけじゃない」「私も〇〇してみる」と、自分で解決できるスイッチがオンに。「私のことを聞いてくれた①」「心を寄せてくれた②」ことで「私は大切にされている」と思えれば、人は自ら動こうとする力を持っているので大丈夫! どうか信じてほしい。

 尊重とは「あなたは大切な人」というメッセージを送り続けることであり、それが周りを元気にし、あなた自身も「自分の存在する意味」を手にできる。笑顔あふれる施設を実現するために「声掛け」を続けてください。愛をケチらず!

 遠くから応援してます。


健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士

河合薫

Profile●かわい・かおる=東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。退社後、気象予報士として「ニュースステーション」(テレビ朝日系)などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行う

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イラスト=佐藤加奈子