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みんなの気持ち

第23回 施設の同僚と結婚するのですが、式にはどなたを呼べばいいでしょうか?

2024.02 老施協 MONTHLY

健康社会学者として活動する河合 薫さんが、介護現場で忙しく働く皆さんへ、自分らしく働き、自分らしく生きるヒントを贈ります。

自分の気持ちとしては仲のいい同僚も呼びたいが…

「どうかお元気で!」と別れ際に相手のことを気遣ったり、「すてきな一年になりますように!」と友人の誕生日を祝ったり、「お仕事頑張って!」と同僚を励ましたりすることは誰にでもある。時には見知らぬ人に「幸せになってほしい」と願ったり、ドラマの主人公のハッピーエンドを祈ったり。誰かの幸せを願い、喜ぶ人がいると知るだけで心がフワァッと温まる。

 実はこれは「人間」だけが持つ感情だ。人間以外の動物、おサルさんやゴリラさんにも「愛」はあるのかもしれないけれど、無償の愛を注ぐ心を持つのは人間だけ。人だけが見も知らない人の幸せを願い、誰かが幸せになっただけで自分のことのように喜ぶ。人間の本性である「愛」がそうさせるのだ。

「なぜ、いきなり愛バナ?」と首をかしげている人もいるかもしれないが、今回のお悩みのテーマは「結婚!」。本コラム初のハッピー話だ(以下送られてきたメッセージ)。

 ──施設の同僚と結婚することになったのですが、結婚式に役職者や上司などは、どこまで呼べばいいのでしょうか。気持ち的には仲のいい同僚も呼んで祝ってもらいたいのですが。アドバイスお願いします。(松井さん[仮名20代〕)。

 まずはおめでとうございます!

 多忙な介護の職場でのハッピーな話題は本当にうれしい。施設の利用者さんたちも、自分をケアしてくれる若者の門出を喜んでいることでしょう。一方で、「式に誰を呼ぶか問題」は誰もが頭を痛める。世話になっている上司だけ、と考えていても親が体裁を気にして会ったこともない偉い人を呼び、話したこともない偉い人が「〇〇さんはとても誠実な人間で〜」などと話したり、「愛するとは互いに見つめ合うことではなく、一緒に同じ方向を見つめることである」といったどこかで聞いたようなフレーズが飛び出したりして「もっと内輪だけでやりたかったのに」と内心思うこともあるだろう。

 10組いれば10通りの結婚式があるので、誰を呼ぶか? は親と相談して決めるのがベスト。結婚式は、育ててくれた親のためにあるといっても過言ではない。友人や同僚にお祝いされたい気持ちは分かるが、日を改めて会費制などで、お2人らしさを発揮してください。

 一番大切なのは「松井さん夫婦、幸せそうだったね」「何かいいね、あの2人」と施設の人たちの心がほわっとする2人になること。どうかどうかお幸せに! 誰かが幸せになると心が温まるのは人間だけ。


健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士

河合薫

Profile●かわい・かおる=東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。退社後、気象予報士として「ニュースステーション」(テレビ朝日系)などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行う

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イラスト=佐藤加奈子