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第10回 コロナとインフルエンザが施設で流行しやすい季節。自己免疫力アップ策は?
健康社会学者として活動する河合 薫さんが、介護現場で忙しく働く皆さんへ、自分らしく働き、自分らしく生きるヒントを贈ります。
感染ストレスを感じているとかえって感染しやすくなる
くしゃみ、せき、鼻水…。コロナ禍より前は「ちょっと風邪気味かも」で済んだ症状も、今ではそりゃあもう大騒ぎだ。特に今年の冬は、コロナとインフルエンザの同時流行が危惧されていて、南半球のオーストラリアでインフルエンザの感染者が過去5年で最多だの、アメリカでは既にインフルエンザの入院者数が過去10年で最多で、世界中で多くの子供たちが亡くなっていると報道されているので、ますます心配になる。
「施設長から『感染させない、感染しない。気を引き締めて!』と言われ続けてもう3年です。いい加減疲れました」と嘆く声もちらほら。介護士さんたちのストレスはたまる一方だ。が、感染ストレスを慢性的に感じているとかえって感染しやすくなるというあべこべの事態につながるので、この冬は「寝る、食べる、笑う」のウイルスに負けない〝幸せ習慣〟で、心と体の免疫力を徹底的に高めよう。
特に笑いのある生活は、体に悪影響を及ぼす物質を攻撃するナチュラルキラー細胞の活性化につながるので、一日一善ならぬ「一日一笑」を心掛けて。お気に入りのコントを見る、周りに苦笑されようともダジャレを言い続ける、なかなか笑う気分になれないときは、作り笑いでもいいので口角を上げてみる。ある介護施設では「ホームに笑いを!」を合言葉に、利用者さんと一緒に歌ったり落語を聴いたり、おばあちゃんたちに口紅とマニキュアを塗ることにしたという。気が付けば笑いが増え、ナチュラルキラー細胞の活性度が上昇し免疫力が高まった。また、寝る前にホットミルクで入れたココアを飲むと、「甘いね〜」と笑顔になったり、湯たんぽで下腹部や腰を温めてあげると「温かいね〜」と朗らかな表情になり、質のいい睡眠が期待できる。
私も国際線のキャビンアテンダントをやっていたときには、ステイ先のホットココアは寝る前のお供だった。海外にはマシュマロ入りのココアなど、甘過ぎるくらい甘い!ココアがあるため、まったり幸せ気分。時差解消にも役立った。
自己免疫力アップに加え、感染状況の情報収集もお忘れなく。不意打ちほど怖いものはない。利用者に感染が拡大した場合、スタッフに感染の疑いが出た場合、利用者さんの日常生活をどう確保するか。家族への連絡はどうするかなどリスク管理を、スタッフ全員で共有していただきたい。その際には、どうかキリキリせずに、深呼吸して、鏡に向かってニッコリ!でね。
健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士
河合薫
Profile●かわい・かおる=東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士として「ニュースステーション」(テレビ朝日系)などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行う
イラスト=佐藤加奈子