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第4回 他人からの評価と自己評価にギャップがある・・・。どう解消すればよい?
2022.07 老施協 MONTHLY
大抵、人は自己評価を高く見積もっているという認識を
「結局は上司の好き嫌いで評価が変わっているように思えてなりません。私が中途入社であることも、評価されない原因になっていると思うんです。利用者さんのためだと考えて取った行動でも、余計なことをしてくれるな、みたいな目で見られてますから」
こう話すのは一般企業から転職した下園さん(仮名)36歳。職場の人間関係はいいし、介護の仕事にやりがいも感じている。しかし、評価されないむなしさからやる気がうせ始めているという。
働く人にとって「評価」は常に不満の種。以前、企業の人事部の人が「異動になった7割くらいが、左遷されたと思い込んでいる」と話してくれたことがあった。「左遷」と書いて、「納得できない評価」と読むってことか。評価が明確とされるアメリカでさえ、労働者の48%が職場で評価されていないと感じているという調査結果もあるので、自分の思った通りに評価してもらうのは、宝くじに当たるようなものなのかもしれない。
社会的動物である私たちは、他者と協働することで生き残ってきた。生き残るには他者から「この人と力を合わせたい」と見なされる必要がある。そのため周りの評価を気にするようになった。
一方で、大抵、人は自己評価を高く見積もっている。「あなたのリーダーシップ能力は、このクラスの中で上から何%くらいですか?」という質問をした場合、「上位20%」と答える人の割合は、「上位80%」と答える人より圧倒的に多く、「半分より下」と答える人はごく少数しかいない。これは「平均以上効果」と呼ばれ、人の「基礎的な性質」と考えられている。このちょっとだけ高い「自己評価」と、「他者評価」のギャップが不満につながるのだ。
では、ギャップを解消するには、どうすればいいのか? 残念ながら…無理。人が人である限りギャップをなくす手立てはない。ただし、評価されない悔しさを生かす方法はある。評価は自分を知るチャンスだと考えてはどうか。案外私たちは気付いていないけど、自分を知ることは他人を知るよりはるかに難しい。かくいう私も評価されない歯がゆさを何度も経験した。が、あるとき評価されない未熟さが自分にあると気付いた。逆に評価されると調子に乗り謙虚さを失っていたように思う。評価されないのはまだやるべきことがあるってこと。ならばスパッと気晴らしして、次につなげるのみ。人の評価は一夜で変わる。前へ! ゴー!!
健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士
河合薫
Profile●かわい・かおる=東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士として「ニュースステーション」(テレビ朝日系)などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行う
イラスト=佐藤加奈子