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第2回 愛知県名古屋市 社会福祉法人緑生福祉会 特別養護老人ホーム ケアハウス 南生苑
2022.05 老施協 MONTHLY
独自の取り組みでキラリと光る各地の高齢者福祉施設へおじゃまします!
※令和3年度全国老人福祉施設研究会議(鹿児島会議)入賞施設を取材しています
地域に密着し、入居者一人一人に合ったケアを行う
名古屋市南部の住宅街に従来型特養ホームとして開設
名鉄名古屋駅から名鉄常滑線に乗り13分、名鉄大江駅から徒歩5分の場所にある特別養護老人ホーム・ケアハウス「南生苑」。
ここ名古屋市南区は、工業地帯の一角ではあるが、市営住宅や古い家屋も多く、高齢者の多い地域だ。苑の近隣には、保育園、幼稚園、小学校、コミュニティーセンターなども多く点在している。また、協力医療機関である山口病院(医療法人山和会)をはじめ、特養とは切り離せない救急指定病院が施設の近隣に多く存在するのも利点となっている。
南生苑は、’94年に従来型特別養護老人ホーム(定員100人)、短期入所事業(ショートステイ 定員15人)、ケアハウス(定員30人)として開設。他にも現在までに、居宅介護支援事業、デイサービス(認知症対応 定員12人)を併設し、日々のケアを行っている。
敷地面積は3400㎡、建物は吹き抜け構造の4階建て。1階にはデイサービス、2階、3階には特養・ショートステイ居室、4階にはケアハウス居室がある。
入居者の健康を維持するためレクリエーションに注力
同施設の特徴として、ケアハウスを中心とした入居者のレクリエーションに力を入れている。
以前より、同施設を社会資源として地域の方に使ってもらおうという趣旨の下、原則自立されている4階のケアハウスの入居者の方に、施設の中だけでなく地域の方とも交流して、地域に友達もつくろうという企画を計画。地域の民生委員に協力していただき、独居の方に声を掛けてもらい、夏祭りなどの催しを行ってきた。
その後も、コグニサイズと呼ばれる認知症予防の体操、カラオケやヨガ、作品作りなど、当初は2カ月に1回だったが、その後は毎週実施するなど、地域交流が元となって始まっている。
そしてコロナ禍となった今でも、ケアハウスの職員である阿山博美さん、中園奈々恵さん、玉置翔さん、古畑直美さんの4人が取り組みを継続。「最期の一瞬まで自分らしく生きるためには心身共に健康でなければ難しい」と考え、入居者の健康維持・向上のため、ほぼ毎日、何らかのレクリエーションや企画を実施している。
レクリエーションとしては、①身体機能の維持 ②脳の活性化(回想法)③音楽 ④食べ物企画 ⑤クラブ(書道・園芸)⑥その他(工作等)に分類。’20年には「GO TO熱田神宮」と称して、3カ月歩行訓練をし、実際に3月下旬に熱田神宮の参拝を実現している。
そうした活動の結果、コロナ流行前より参加者が増加。定期的な体力測定を見ても体力が維持できており、目標を持ち意欲的に体を動かすことが、ADL(日常生活動作)の維持だけではなくQOLの向上へつながり、表情も豊かになり、活力や楽しみが持てるようになったと分析している。
この取り組みは、「令和3年度全国老人福祉施設研究会議(鹿児島会議)」最優秀賞を受賞している。
介護職員は施設の重要な存在
待遇と職場環境改善に尽力
近年、介護とその他の職種との待遇の格差を是正するため、介護職員の処遇改善の取り組みがなされている。阿閉芳信苑長は「特養は福祉施設であり、介護施設。介護は特養の中心で、介護職員は重要な存在」と言い、同法人では’92年より介護職員の待遇改善に取り組んでいる。職員が長く働き続けられるよう、給与面の改善のほか、7割を超える有給休暇取得率や育児休業・短時間勤務など、職員一同で職場環境を良くしていこうとしているのも特徴だ。
【キラリと光る取り組み】
コロナで運動不足と言わせない!! 南生苑
「令和3年度全国老人福祉施設研究会議(鹿児島会議)」最優秀賞受賞
阿山博美さん(右)・中園奈々恵さん(左) インタビュー
――取り組みを始めたきっかけは?
中園:普段コロナで外出自粛をお願いしていたので、苑内でできる運動レクリエーションに力を入れていました。
阿山:その中で、何か健康的に体を動かすことはないかなって考えていたときに、本施設が回廊型になっているので、歩行訓練に適しているのではないかというところから、発想したのですが、ただ歩いてください、歩いてください、と声を掛けても皆さん続かないかなと思って。何か楽しみになるような目標を持ってもらおうと「熱田神宮に行くから皆さん歩行訓練頑張っていきましょう!」というふうにやっていました。
――他にはどんな企画がありますか?
阿山:日々やっておりまして、毎週「いきいき体操」といって重りを着けて運動するとか、毎日お昼前に「みんなの体操」といってラジオ体操のようなものをやっています。
中園:ここに今月のレクの予定表があり、その企画の中でも、介護職員のいる日は毎日、必ずレクを入れています。
阿山:つい最近だと、花見に近くの公園へ行くとか。歩行器の方はなかなか一人では行けないのですが、職員と一緒に行きましょうとか。あと、近くの和菓子屋さんに散歩がてら和菓子を買いに歩こうというのも一つの訓練としてやりました。
中園:そういう企画をケアハウスの職員4人で考えています。
阿山:やりたい企画があっても、やれずにもどかしいこともありますよね。皆さん、お好み焼きが大好きなので、近くのお店にお連れしながら、公園を歩いたり、電車でちょっと遠出するようなことも考えていたのですが、さすがに今はまだコロナが収まっていないのでそういう時期ではないなと。
中園:第7波が来ているということだったので、本当だったら名鉄電車に乗ってお好み焼きを食べに行く計画をしていました。電車に乗る行為と飲食がNGなので延期にして、その代わりの企画を考えています。
阿山:入居者さんは、健康のためには運動することが良いと、皆さん分かっているのですが、ただ運動だけにすると、なかなか第一歩が踏み出せないんですね。何か楽しみになる目的を作って、頑張ってここに行きましょうとキッカケを作ると、「じゃあ、行くわ」って皆さん連れ立って積極的に参加されます。
中園:特に高齢者の方には、食べることが一番の楽しみなので、できれば飲食には連れて行ってあげたいのです。
阿山:昨年は熱田神宮だったのですが、今年は徳川園に皆さんチャレンジされました。皆さん来て良かったと言ってくださって、車で片道50分かかるところなので、大丈夫かなって不安がられていましたが、やっぱり車に乗るのも楽しいドライブだったと思っていただいて良かったです。
中園:一点反省するとしたら、そこまで行ったのに飲食がなく「せっかくここまで来たのにお茶も飲めない!」というのがあったので、何かあれば良かったなと思いました。
――レクリエーションをやって皆さん変わりましたか?
阿山:変わりました! 皆さん、いきいき体操をやっていても去年はあまり重りを増やそうとされなかったんですけど、今は重りを増やす方が多くなりました。
中園:私たちでも結構重たいと思うものを頑張って着けてらっしゃるのですごいと思います。あとは自発的に廊下を歩いてくださるようになりました。歩いた分だけシールを貼る企画のときも歩かれていましたが、GO TO熱田神宮企画が終わった後も継続して歩いてくださるようになりました。
――今後考えられている企画は?
中園:来週は「春祭り」を月曜日から金曜日まで行います。1日目が沖縄民謡を演奏しながら桜茶を提供したり、2日目は女性職員が着物を着て、抹茶をたてたり、職員手製のイチゴのデザート作りもあります。最終日は、昨年も好評だった往年のスターの美空ひばりやジュディ・オングになりきって(笑)。
阿山:全ては入居者さんに楽しんでもらいたいっていうところがあるので、私たちも頑張れるんです。そういう企画をすると本当に喜んでくださるので、私たちもうれしくなっちゃいます。生き生きした表情で生活される姿を見ることができ、私たちは本当にうれしく思っています。
社会福祉法人緑生福祉会
特別養護老人ホーム ケアハウス
南生苑
〒457-0835
愛知県名古屋市南区西又兵ヱ町4丁目8番2
TEL:052-619-5310
FAX:052-619-5311
URL:http://www.ryokusei-fukushi.jp/
[定員]
特別養護老人ホーム:100人
短期入所事業(ショートステイ):15人
ケアハウス:30人
デイサービス(認知症対応):12人
撮影=山田芳朗/取材・文=石黒智樹
社会福祉法人緑生福祉会
’93年、愛知県名古屋市緑区に設立。以来、原田孝理事長の下、「やすらぎ」「やさしさ」「活力」「自由」「清潔」を理念として、穏やかな日々と笑顔に満ちた生活の実現に向けて努力を続けている社会福祉法人である。’94年に「緑生苑」の事業を開始。特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービス、居宅介護支援の事業を行う。’04年に「南生苑」の事業を開始している。