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介護のかくしん

介護現場におけるアンガーマネジメント その3 ムダな怒りを抱えないための 『行動のコントロール』

介護の現場に必要な「革新」や「確信」や 「核心」をその分野の専門家にうかがいます。


怒っても「変えられないこと」には いっそ関わらない選択も

 前回までは、怒る必要のあることとないことを明確にする、思考のコントロール方法をご紹介しました。今回は、怒る必要があると判断した時の『行動のコントロール』方法をご紹介します。

 例えば日々の業務の中で、上司に職場の不満を訴えても対処してもらえない、部下に何度同じことを注意しても改善がみられない、同僚の言動に納得がいかない、など、自分は「こうあるべき」と思っていてもその通りにならない場面は多々あります。そのような時にムダな怒りを抱えないために有効なのがこの『行動のコントロール』です。

 まず、下の図のように、イライラの原因になっている状況を「変えられるか、変えられないか」で仕分けます。変えられないのであれば右に。さらにその事柄が「重要であるか、重要でないか」に分けます。重要である場合は、「自分の力ではコントロールできないことなんだ」という現実を受け入れる、ということになります。この右上の行動が一番悩ましいのですが、アンガーマネジメントはすべての怒りを解消するメソッドではありません。「怒りと上手に付き合うための心理トレーニング」なので、いかに必要以上の怒りを抱えないようにするかが大切。現実を受け入れられず、「なぜこの人は変わらないのだろう」といった、いわば不毛な怒りをいつまでももち続けると、怒りはどんどん大きくなってしまいます。 

 そのため、重要だけれどどうにもならないことに対しては、それ以上の怒りを抱えないための選択肢がないかを考え、行動していきましょう。重要でなければ、人生の大事な時間を使ってイライラする必要はありません。関わらないでやり過ごすのも怒りと上手に付き合う一つの方法です。

 

心身が不調の時こそ アンガーマネジメントを意識する

 疲れやストレスを抱えている時は怒りが大きくなりがちなので、普段よりもイライラすると感じたら、いつも以上にアンガーマネジメントを意識してみてください。そして自分の状態と向き合い、睡眠不足が続いていたら質の良い睡眠を、疲れていたら積極的に休養をとりましょう。こまめにリフレッシュできるよう、5分あればできることや、同様に15分、30分、1時間と、使える時間に応じた自分なりの気分転換メニューを用意しておくのもおすすめです。

 

 

それでも一番避けたい 「怒りで後悔」 してしまった時は・・・

 アンガーマネジメントを心がけてはいても、上司からのやつあたりにイラっとして、つい売り言葉に買い言葉で応戦してしまったり、介護現場は利用者の命を預かっているので、スタッフの危険な行為に対して思わず声を荒げてしまい、「あんなことを言わなければよかった」などと後悔したりする可能性はあるでしょう。そのような状況になってしまった時は、話を聞いてもらえそうなタイミングを見計らって、言い過ぎたことを謝ったり、声を荒らげた理由をフォローしたりするなどコミュニケーションをとりましょう。相手を尊重し、素直に話し、また相手の話を聞く対話を心がけていくことで、あなた自身のメンタルヘルスや職場の人間関係がより良い状態へと変化するはずです。

 アンガーマネジメントはダイエットと同じで、日々の小さな努力の積み重ねで身についてくるもの。ぜひできることから継続して実践してみてください。