福祉施設SX
多角的に取り組む排泄ケア PART3-2 排泄ケアに取り組むベンチャー企業に聞く 先進技術はどこまで業務負担を軽減できるか?

ベッドに設置したヘルプパッド2から、排泄(尿・便)のにおいを検知し、施設のパソコン、スマホやタブレットに「おむつ交換タイミング」を通知。ある施設では導入前に比べ、空振り回数が90・1%削減、 尿便漏れ回数も86・2%削減と大きな効果が現れた。

においを検知しておむつ交換タイミングをお知らせ
おむつを開けずに中が見たいという介護現場の声に応えたい
家業で忙しい母親に代わって育ててくれた祖母がうつ 病を患い、介護の大変さを身をもって 知りました。「テクノロジーで介護者を支えたい」という思いで、千葉工業大学工学部未来ロボティクス学科に進学。介護現場で働く職員の「おむつを開けずに中が見たい」という切実な声が「ヘルプパッ ド」誕生の原点となっています。
創業後は、週末に介護事業所で夜勤を含む現場作業に従事し、介護者と共にケアを行いながら、施設職員、管理者や家族、在宅介護の当事者からもヒアリングを行いました。しかし、いざ排泄の実験となると協力してくれる施設はなく、自らおむつをはき、排泄する実験を行いデータを収集しました。その後、徐々に協力者は増えていきましたが、充実したデータを収集するのには長い時間がかかりました。

においなら排尿も排便もわかるシートタイプだから違和感も少ない
においを検知する方法を採用したのは、「ご利用者様の身体に機械を付けずに検知してほしい」「尿と便のどちらもわかるようにしてほしい」との声が多く、その両立を考えた結果、ベッドに敷くシート型で、においをセンサーで検知するタイプにた どり着きました。「おむつに貼る」タイプではなく、「ベッドに敷く」シート型の排泄センサーのため、要介護者の身体に機器を直接装着する必要がなく、違和感や不快感、羞恥心を大幅に軽減できるのが特徴です。 また身体に何も装着しないため、高齢者が普段通りに過ごすこともできます。
デザイン面では、「帯(Obi)」をコンセプトに、温かみのある桜色やグレーを基調とし、生活空間に自然に溶け込むよう工夫をしました。医療機器特有の冷たさや威圧感を与えないデザインとなり、 2024年のグッドデザイン賞を受賞しました。
私たちは、排泄を単なる作業でなく「生活のリズム」として捉え、ICT化で利用者一人ひとりに 合わせたケアの実現に寄与したいと考えています。

取材・文=池田佳寿子