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自治体向けの認知症発症と進行のリスク早期発見の手引きを公開
#自治体向けの認知症発症/進行のリスク早期発見の手引き
▶日本独自の大規模実証研究の成果をもとに作成
国立長寿医療研究センターは8月28日、東北大学、鳥取大学、鹿児島大学、秋田大学、神戸大学、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所、札幌医科大学、東京都健康長寿医療センターと共同で行った日本独自の認知症早期発見・早期介入モデルの確立に向けた大規模実証研究「Japan Dementia Early Phase Project(J-DEPP)」の成果をもとに作成した、自治体向けの認知症発症/進行のリスク早期発見の手引きを公開した。
同研究チームは、令和6年1月より本人やその家族の視点を重視した“日本独自の認知症早期発見・早期介入モデル”の構築を目的として大規模な実証研究を実施。全国40市町村で合計13,871名の高齢者がスクリーニング検査に参加した。使用されたスクリーニング検査は、対面式からタブレットやパソコンを使って自宅で行えるものまで、多様な方法が実践された。また検査を受けた人が、その後実際に医療機関を受診したかどうかを確認するため、調査に同意した5,055名に郵送での追跡調査も実施し、2,567名から有効な回答を得た。
このうち、受診を勧められた人は1,083名で、実際に精密検査を受けたのは79名(受診率7.3%)だった。また研究スタッフや保健師が電話や訪問、面談などで丁寧に受診を勧めた地域では、受診率が11.6から12.5%と比較的高く、「人を介した支援」の効果が示された。
さらに、認知症発症/進行リスクの早期発見のスクリーニング検査をきっかけに病院を受診された人の中では、抗アミロイド抗体薬を含む治療や認知リハビリテーション、介護サービスの導入など診断後支援につながったケースが認められた。一方、受診を勧められながらも検査を受けなかった1,004名に理由をたずねたところ、最も多かったのは「健康状態に自信があり、自分には必要ないと感じたから」(42.2%)という回答だった。このことから、認知機能の低下を指摘されてもそれを自分ごととして捉えていないことが、受診行動を妨げている可能性が示唆された。
J-DEPP研究チームはこれまでの研究成果をもとに、自治体が地域で認知症発症と進行の早期発見に取り組むための実践的な「手引き(ガイド)」を作成。この手引きは、地域において認知症発症/進行のリスク早期発見・早期介入・診断後支援を実践する際の参考となるよう、体制準備、市民啓発、住民への周知・リクルートの仕方、認知症スクリーニング検査の実施、検査後の受診推奨、認知症カフェやピアサポート、本人ミーティングなどの支援へのつなげ方などを具体的にまとめたもので、実際に全国各地で行われた事例や工夫が掲載されている。