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第8回 同僚の陰口ばかり言う先輩に困惑…。うまく巻き込まれないようにするには?
2022.11 老施協 MONTHLY
健康社会学者として活動する河合 薫さんが、介護現場で忙しく働く皆さんへ、自分らしく働き、自分らしく生きるヒントを贈ります。
同僚の愚痴を聞かされるのは拷問以外の何ものでもない
「悪い先輩ではないんです。でも、同僚の陰口ばかり言うので、いちいち相手をしてたら、私も仲間と思われないか心配です。かといって先輩なので、突き放すこともできません。なるべく2人きりにならないようにはしてるんですけど。先輩の機嫌を損ねることなく、うまく付き合っていくには、どうすればいいのでしょうか」
どこの職場でも一人ぐらいは〝悪口大好きさん〟がいるけど、先輩だとちょっとばかりややこしい。そんなお悩みを吐露してくれたのは春子さん、24歳。介護士2年目の若きエースだ。上司の悪口なら「そーだ! そーだ!」と酒のつまみになるが、同僚の愚痴は、さて困った。これは何とも拷問である。
たとえ心の中で、「確かにそういうところあるかも」と思っていたとしても、そんな空気を一瞬でも醸し出そうものなら、地獄へまっしぐらだ。「ね! あなたもそう思うでしょ!」と先輩にグッと腕をつかまれ、毒舌仲間の道連れにされかねない。春子さんはそれが怖くて、心も体もこわばり、ストレスだけがたまり続けているという。
しかし、愚痴や陰口を言う人にとっては、それもストレスへの対処戦略の一つ。心の中のネガティブな感情を吐き出すことにはカタルシス効果があるので、実にスッキリする。聞かされる方からすれば「私を吐き出し口にするな!」と文句の一つや二つ言いたいかもしれないけれど、世の中には愚痴を言いやすい〝お人よし感満載〟の人もいる。なぜ私に?という疑問は、自分のチャームポイントとしてポジティブに考えた方がいいかも。
では、毒舌仲間にさせられないためには、どうすればいいのか?
まずは〝そうなんですか〜攻撃〟で乗り切ること。どんな陰口を相手が言おうとも、ひたすら「そうなんですか〜」を繰り返す。それでも陰口が止まらないときは、「勉強になります!」と陰口を学びに変える〝感謝攻撃〟にチェンジしよう。これで相手の気分は上々だ。
実際、陰口には決して明文化されない暗黙のルールが含まれていることもある。「私もやっちゃいそうなんで気を付けます」と言えば、先輩は逆に「あなたは大丈夫よ」と励まし屋さんに大変身。もし、どこからどう考えても学びにならないときは、「先輩! お疲れさまでございます」と〝ねぎらい攻撃〟に出るのも悪くない。まかり間違っても否定しないこと。火に油を注ぐことになる。陰口のターゲットにならぬよう、お気を付けて!
健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士
河合薫
Profile●かわい・かおる=東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士として「ニュースステーション」(テレビ朝日系)などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行う
イラスト=佐藤加奈子