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〈国立長寿医療研究 センター〉
レビー小体型認知症の新たな発症リスク遺伝子変異を発見 発症メカニズムの解明や予防・治療法確立に期待
JS-Weekly No.838
ポイント
① DLB発症リスクを高めるMFSD3遺伝子/MRPL43遺伝子変異
② 民族特異的なDLB発症リスク遺伝子変異と考えられる
レビー小体型認知症の発症リスクを高める新たな遺伝子変異を発見
国立研究開発法人国立長寿医療研究センターは7月7日、レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies:DLB)に関する研究の成果として、MFSD3遺伝子のストップゲイン変異およびMRPL43遺伝子のミスセンス変異が、 DLB発症リスクを高めると発表した。
アルツハイマー病(AD)に次いで多いDLBには、効果的な治療法がないこと、AD患者よりも死亡率が高くQOLが低いことが知られている。DLB発症には遺伝的因子が36%程度寄与(遺伝率)すると推定されるが、SNCA(α-シヌクレイン)、APOE(アポリポプロテインE)、GBA(グルコシルセラミダーゼ)の3遺伝子以外明らかになっておらず、新規発症リスク遺伝子の同定が求められていた。本研究で得られた成果は、DLBの発症メカニズムの解明や認知症の病型鑑別に関する研究に資するものであり、認知症のゲノム医療や治療法開発につながるものと期待される(この研究成果は、2022年6月29日付で神経科学分野の国際専門誌である「Neuropsychiatric Genetics」に掲載された)。
東アジア人特異的なDLB発症リスク遺伝子変異。将来のゲノム医療につながる重要な知見
今回の研究によると、MFSD3遺伝子のストップゲイン変異は、東アジア人以外の人種では見つからないことから、東アジア人特異的な遺伝子変異であると考えられる。また、MRPL43遺伝子のミスセンス変異も日本人以外では見つかっておらず、民族特異的なDLB発症リスク遺伝子変異と考えられる。同センターは、今回の研究に使用した日本人コホートは、本邦におけるDLBの遺伝子研究としては最大規模であり、DLBのクリニカルシークエンスや個別化医療等、将来期待されるゲノム医療につながる重要な知見となったとしている。