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速報(JS-Weekly)

軽度認知症(MCI)の高齢者に多因子介入プログラムの検証研究

#軽度認知症 #MCI

▶血圧や血糖などの管理が十分でない高齢者に効果的である可能性

 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センターの研究グループは11月13日、軽度認知障害(MCI)をもつ高齢者を対象とした18か月間のランダム化比較試験(J-MINT)のデータを解析し、多因子介入プログラムは血圧・血糖・脂質のコントロールが十分でない人において、認知機能低下を防ぐ効果が高いことを明らかにした。

 認知症を予防するためには、運動・栄養・社会活動・生活習慣病の管理など、複数の要素を組み合わせた「多因子介入」が効果的であるとされている。また近年では、遺伝子検査や認知症の血液バイオマーカーなどによって認知症の発症リスクが高い人を特定し、そのような人で多因子介入の効果が得られやすい可能性も示されているが、これらの検査を地域や一般の医療機関で広く行うのは難しいという課題があった。一方で、血圧・血糖・脂質などの「血管リスク(高血圧、高血糖、脂質異常)」は地域の特定健康診査などでも測定されており、これらがうまくコントロールできていない人は、認知症のリスクが高いことが知られているため、本研究では特別な検査を行わなくてもわかる血管リスクの情報(血圧・血糖・脂質)を用いて、多因子介入の効果が異なるかどうかを検証した。

 本研究で用いたJ-MINT研究は、65歳から85歳までのMCIをもつ高齢者531名を対象とした認知症予防のための多因子介入プログラムの効果を検証するランダム化比較試験。血圧、血糖(ヘモグロビンA1c)、脂質(HDLコレステロール、non-HDLコレステロール)の数値をもとに、それぞれがコントロール不良かどうかを判定し、コントロール不良な血管リスクの有無によって、多因子介入による認知機能改善効果が異なるかを検討した。

 解析の対象となった432名の参加者のうち、298名が少なくとも1つ以上のコントロール不良な血管リスク(高血圧226名、高血糖53名、脂質異常125名)をもっており、この血管リスクの有無によって多因子介入プログラムの効果に違いがあるかを検討したところ、血管リスクの有無と介入の交互作用が認められ、これらの血管リスクをもつ参加者で介入による認知機能の維持・改善効果が得られやすいことが示された。さらに個別のリスク要因ごとに分析したところ、特に高血圧や高血糖がある人で、介入の効果が得られやすい傾向もあった。

 これらの結果から、多因子介入プログラムは血管リスクのコントロールが十分でない高齢者の認知機能や血管リスクの改善に特に有効である可能性が示された。同センターでは令和8年4月より、本研究成果に基づき、全国の19自治体と協働して新たな試験(ランダム化比較試験)を実施する予定。

(参考資料:https://www.ncgg.go.jp/ri/report/20251113.html