はじめての人も
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審査員からの創作のコツ審査員からの創作のコツ

エッセイはどう書く?
写真やキャッチフレーズで大事なことは?
審査員の先生に、
作品づくりのコツについて伺いました。

フォト部門

カメラマン・介護福祉士

山田 真由美さん

見る者の想像力を
かき立てよう

15年以上の介護福祉士経験を活かし、介護施設の入所者やシニアの方々にメイク・ヘアセットをし、撮影する会社を立ち上げたカメラマンの山田真由美さん。介護をテーマに、いきいきとした瞬間を撮影するにはどうしたらいいのか……。そのコツについてお聞きしました。

取材:岡田千重

写真にストーリーがあるといい

前回、作品審査をされて、何か気付いたことはありますか?

どれも感動的な写真なのですが……アングルや構図の似た写真が多かった印象ですね。みんな被写体全体を入れようとしがちですが、手だけのアップとか背中とか、強調したい部分だけを写すという手もありますよ。

なぜ構図は似てしまうのでしょうか。

介護というとどうしても、介護職員と介護者が見つめ合って笑っているとか、家族みんなで楽しく一緒に過ごしている、という写真が多くなりやすいという傾向があります。それも悪くはないですが、もっと違う側面も見たいですね。
高齢の方たちだけで何かを作ったり、ゲームをしたり、力強い生命力を感じる瞬間もある。そういう作品が増えてもいいと思います。

前回の最優秀賞は、おじいさんとひ孫が並んで立つ後ろ姿でしたね。

第14回最優秀賞「僕がついてるよ」
(鹿児島県 ゆいまるさん)

アングルとか色みとか関係なく、その場の様子をそのまま写したという感じの作品でした。私だったらローアングルから狙ってみたり、男の子の手にピントを合わせたりもするかもしれませんが、特別な技巧は使っていないけれど、それだけに多くの審査員の心を掴みました。

心を掴むにはコツはどうすれば?

ストーリーがあると、見る側の想像力をかき立てるんです。被写体の笑顔のアップもいいけれど、全員が笑っているのに一人だけが泣いているとか、あえて背中や横顔を撮るとか。そういう場面を見ると、この人は何を考えてるのかな、なぜ一人泣いてるのかな、うれし泣きかな、悲しいのかなと、写らない部分にドラマが広がっていくんですね。

普段からたくさん撮って視点を磨く

想像力を掻き立てる瞬間をうまく撮るには?

こういうイメージで撮ろうと思いすぎると、やらせ感が出てしまいますよね。だから、コンテストだからと短期間で焦って撮るのではなく、日常的に気になった時に撮っておく。探しに行くというより、その瞬間をみつける感じで常にアンテナを張っておくことが大切だと思います。
私も仕事柄、日々撮っています。たくさん撮っていたら意図せずに良いのが撮れたり、技術的にはつたなくても味のある作品が撮れたりする。また、撮ったときはいまいちだと思ったけど、あとでいいなと思うこともあります。自分の変化・成長と共に、見方や気持ちも変わっていくので、観察することが大切です。

介護経験のない人は何を撮ればいいでしょうか?

街中やスーパーで大変そうに荷物を持っているおばあちゃんでもいいし、シルバーカーを押すおじいちゃんを助ける家族でもいいと思います。今は高齢化社会なので、意識をして見ていたらたくさんの出会いがあると思います。
ただし、知らない人を撮るときは許可が必要なので、顔が特定できないよう工夫したほうがいいですね。 介護をしている場そのものを撮らなくても、介護を連想させるといいと思います。

フォト部門の応募者にメッセージをお願いします。

実は前回の審査をさせてもらった時、すごく泣いてしまったんです。どの作品も素晴らしくて、選ぶのが本当に辛かった。すべてを受賞作品にしたい気持ちでした。
今年も、家族の絆・高齢者の強さ・現場の優しさ、さまざまなシーンを切り取って、感動させてほしいと思います!

良い写真を
撮るためのコツ

コツ1

いろんなアングル。バリエーションで撮ってみる

例えば紫陽花がきれいで撮りたいと思ったら、まず全体を引きで撮る、そのあと花をアップで撮る、さらに小さな花の一つを撮るなど試してみる。あと、花びらの先に水滴を垂らす、その水滴にあたる光を撮る、誰かの手や顔を入れてみる、下から煽って向こうに見える青空を撮る、角度を変える、いろいろ試してください。その中から伝えたいイメージに合ったものを選びましょう。

コツ2

過去の受賞作品に引きずられない

コンテストに応募するという意味では、今までにないもの、ドラマがあるものが審査員の目を引きます。過去の作品を見て分析しそれに寄せるのではなく、むしろ今までにないものを応募する。斬新な感じがあるといいです。

コツ3

日常的にたくさんの人に見てもらう習慣を

撮った写真は普段からインスタグラムなどのSNSでどんどん発表することです。第三者の目を意識する訓練になるので、絶対上達しますよ。「いいね」がつくのもあれば反応が少ないのもありますが、それも誰かに見てもらわないと分かりません。

コツ4

カメラマン自身が笑顔になって撮る

写真を撮ることだけに集中するのではなく、カメラを通じたコミュニケーションだと意識してください。そして、被写体を好きになること。笑っている人に撮られると嬉しいから、モデルさんもつられて笑顔になりやすいです。
撮影時はみなさん緊張するものです。こちらが笑って「かわいい!」とか思ったことを言ってると、そのうちいい顔になってくれたりします。だから後半になるほどいい表情になってもらえたり。「終わりでーす」と言った直後に撮ったものが最高の笑顔だったりします。

山田 真由美さん
[ カメラマン・介護福祉士 ]

介護福祉士、美容師、ケアマネージャーの資格を持つ写真家。高齢者向けにメイク・ヘアセットをして写真撮影を行うサービスを提供。