〜審査員からの〜創作のコツ

エッセイはどう書く? 写真やキャッチフレーズで大事なことは?
審査員の先生に、作品づくりのコツについて伺いました。

介護に興味がない人にも
届く言葉を

キャッチフレーズ部門の審査員は、コピーライターとして第一線で活躍されている渡辺潤平さん。

伝わる言葉とはどういうものか? どのようにつくればよいか? キャッチフレーズの本質について伺いました。

相手を明確に見定めると
言葉はリアルでシャープになる

そもそも、キャッチフレーズの役割って?

渡辺さん
キャッチフレーズやキャッチコピーの本来の目的は、商品の良さを一言で広く理解して好きになってもらい、売れるようにすることです。なので今回でいえば、介護に対する理解や好きという気持ちを深め、期待値を高められるものがよい作品といえます。

よい作品を書くにはどうすればいいですか?

渡辺さん
誰か一人を想定して、その人になにを言いたいかを想像するのがいいと思います。僕なら作業療法士をしている友人のことを想像して、彼になにを言おうかなと最初に考えます。

「介護職全般」に向けた言葉を書こうとしても、結局はただのうわべだけの言葉になってしまう。自分が本当に思っている言葉で書くことが大切です。誰か一人に向けてLINEやメールをする感覚で、「ちゃんと寝ろよ」とかぶつけたい言葉を書いてみるといいですよ。相手を明確に見定めたほうが圧倒的に言葉はリアルでシャープになります。自分の経験や自分と誰かの物語の中でしか、発見のあるよい言葉は生まれないんです。

審査でも、「ここに目を付けたんだ」「そういう捉え方もあるのか」と、ちゃんと発見のある言葉を評価したいです。そんな言葉を書くためには、「正しいことを正しい言葉で言うとつまんなくなる」という法則を知っておくといいかもしれません(笑)。ちょっと違和感がある言葉をわざと入れたり、「介護士の人の休日って……」と想像したり、違う角度の言葉や想像を入れてみましょう。一般論の一歩先をゆく言葉を期待しています。

フレーズの長さは関係ありますか?

渡辺さん
僕は短ければ短いほどいいと思っています。究極を言えば、単語一語でもいいくらい。それくらい言いたいことを煮詰めるのが大切です。いろいろとあーだこーだ言っても、結局は誰も覚えてくれません。なるべく短く、歯切れよく、多くの人の記憶に留まる言葉を書けるといいですね。

介護に関わったことがなくても書けますか?

渡辺さん
直接的な介護経験はなくても、たとえば祖父母に何かをしてあげたらすごく喜んでくれたとか、そういう気持ちを書くのもいいですよ。映画やドラマを見たときに感じた気持ちや、考えたことを元に書くのでもいいと思います。

いろいろな人生や物語に触れて自分の中にインプットされていれば、視点を広げることができます。中高生のような若い人のほうが傾向と対策を考えすぎない分、みずみずしい発見をすることもありますよ。

渡辺潤平さん

Watanabe Junpei

2000年博報堂入社。07年に株式会社渡辺潤平社設立。主な仕事に、三菱地所グループ「三菱地所を、見に行こう。」、第97回箱根駅伝「風よ、変われ。」など。