はじめての人も
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審査員からの創作のコツ審査員からの創作のコツ

エッセイはどう書く?
写真やキャッチフレーズで大事なことは?
審査員の先生に、
作品づくりのコツについて伺いました。

フォト部門

カメラマン・介護福祉士

山田 真由美さん

伝えたいことを強調する構図で

日々、介護施設の現場で入所者やシニアの方々の撮影をされているカメラマンの山田真由美さん。介護にまつわる素敵なシーンやおじいちゃん・おばあちゃんの魅力的な表情を撮影するコツについてお聞きしました。

取材:岡田千重

撮影対象に寄り沿ってみよう

過去2回の作品審査を通して、感じたことはありますか?

 たくさん拝見していますが、本当にどの作品も素晴らしいんですね。それぞれに撮った人の想いが感じられて毎回感動します。だから、たとえ選ばれなくても、これはダメな写真だとは思わないでほしい。写真は見る人によって好みや印象が違ったりするので、私がいいなと感じてもほかの審査員には響かないことがあるんです。介護というテーマを見据えて撮ったご自身の作品に自信を持っていただきたいです。

受賞作の中で印象深い作品はありますか?

 昨年の受賞作でいうと、『おうちにて。大好きな紫陽花の花』という作品が印象的でした。ベッドに寝たまま紫陽花を抱えているおばあちゃんの写真です。撮っている人がおばあちゃんの目線まで下がって顔をしっかりと写している。私にはその寄り添っている感じが、とても素敵だなと思いました。

山田先生はどんな写真に心惹かれますか?

 どういう視点で撮ったのかを見ます。私は介護の現場で仕事をしているので、食事やレクリエーションなどの風景全体を撮ったものにはあまり新鮮さを感じないんです。それよりも、対象者の一瞬の表情や感情を大胆に切り取って、クローズアップした作品に惹かれます。
 どうしても皆さん、引きでメインの人物と周りにいる人を同じように入れて撮ってしまう。そうなると主役が誰なのかわかりにくくなるんです。

バランスがいいと平均的になり、むしろインパクトは弱くなりますよね。

 テーマがぼやけてしまうんですね。撮影する側がおばあちゃんの表情がいいと思ったら顔のアップを撮って、周りにいる人は切れていてもいいわけです。おじいちゃんの手に歴史を感じたなら、いっそ手の平だけのアップでもいい。そのほうがテーマは強調されます。
 昨年の優秀賞『おうちで美容室』は、縁側でおばあちゃんの髪を娘さんが切ってあげている作品です。これは背景が陰で写っていないのがいいなと思いました。親子の日常の姿が浮かび上がり、おばあちゃんに光が当たっているのも素敵です。陰影のメリハリがいいですね。想像が掻き立てられます。

思い切った構図や人とは違う写真を撮るにはどうしたら……

 正面から全体をパシャっと撮って終わりではなく、いろんな角度からたくさん撮ってみてください。また、デジタルカメラで撮ったなら、データでトリミングができると思うので、いろんなパターンの構図にして比べてみる。一部をアップにしてもいいと思いますよ。より印象的で自分の気持ちが伝わる作品を選ぶといいです。

これは残念だなと思う作品はありますか?

 スマートフォンって広角レンズなので、どうしても背景までしっかりピントが合ってしまうんですよね。そうすると、本当は手前にいるおばあちゃんだけ撮りたかったのに、後ろの方まで全部ピントが合ってしまい、いろんなものに意識がいってしまう。特に黒いものには目がいきやすいので気を付けたほうがいいですね。
 デジタルカメラで撮ったら合わせたいところにしっかりピントを合わせ、他をぼかすということもできますが、スマートフォンはそれがでない。だから、ちょうどいい場所に自分が動くようにしたらいいですね。

介護する側の視点で撮るのも面白い

家族以外の人を撮りたい場合に気を付けることは?

 自宅以外の外や介護施設内で撮る場合、写ってはいけないものが入っていないか注意したほうがいいです。最初からどかしておく、写って大丈夫か聞いておくといった配慮が必要です。また、個人が特定されると嫌がる方もいると思うので、事前に許可をとっておく必要があるかもしれません。または、撮影後に加工して特定できないようにするという手もあります。

こんな写真があってもいいのでは、と思われることは?

 全体にどうしても介護されている方を撮っている作品が多いです。でも、介護する側をもっと撮ってもいいんじゃないかと思います。介護施設のスタッフでもいいし、老々介護をしているご夫婦でもいい。偶然道で出会った、初対面の若者とおじいちゃん、おばあちゃんとの交流でもいいと思います。

山田先生は介護施設でヘアメイクや撮影をされていますが、
いつもどうやって良い表情を引き出されるのですか?

 私はメモリアルの写真撮影がメインなので、コンクールの趣旨とは少し違いますが、まずはコミュニケーションの時間をしっかり取りますね。いろんな質問をしてお話をして、先に私が相手を好きになる。そうすると相手も自然と笑顔になってくれるんです。そして、その交流は実際にとても楽しいですし、撮影している私が一番幸せそうな顔をしていると思います。

応募者にメッセージを!

 このコンクールはカメラを通しておじいちゃん、おばあちゃんを見る、介護の現場を見るとてもいいきっかけになると思います。カメラを通すと普段気づかない新たな場面に出会えたりもする。そういう機会にしてほしいです。また、コロナ禍が落ち付き、社会が動きつつある今、また新しい視点の作品が出てくると思いますので、今からとても楽しみにしています。

良い写真を
撮るためのコツ

コツ1

何を一番見せたいか絞る

主役は誰なのかを見極め、その人物が強調されるように撮ろう。周りはぼかす、その人以外は切ってしまうのもあり。また、体の一部分のアップでもいいし、撮影後にデータをトリミングするのもあり。

コツ2

とにかくたくさん撮ろう

アングルは一つではなく、正面、横、後ろ、また下から煽るなど、様々なアングルでたくさん撮ろう。また、ぶれた作品がむしろ面白い場合もある。フィルターをかけて比較してみるのも良い。一番いい作品を選ぼう。

コツ3

カメラの特性を生かそう

デジカメはピントが合わせやすく、それ以外をきれいにぼかすこともできる。スマホは手軽で撮りやすいが、広角レンズなので四隅がゆがみやすい。間延びすることがあるので注意。逆にそれを活かすのはGOOD!

山田 真由美さん
[ カメラマン・介護福祉士 ]

介護福祉士、美容師、ケアマネージャーの資格を持つ写真家。高齢者向けにメイク・ヘアセットをして写真撮影を行うサービスを提供。