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〈サービス継続に必要な人的支援や経費補助を実施〉

知っておきたい!介護施設への「新型コロナ」支援策

2021.6 老施協 MONTHLY

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策本部が5月28日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」の変更を決定するなど、国は状況の変化に応じて新たな感染症対策を打ち出している。新型コロナウイルス感染症についての介護施設・事業所への支援策は現在、どのようになっているのか。感染リスクの高い高齢者を受け入れている施設として把握しておきたい最新情報を整理する。
※本記事の内容は、6月1日現在の情報に基づいています。

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全国老施協の要望と追加支援策の実現

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうなか、地域によっては医療体制のひっ迫度が増しており、高齢者施設としても患者の退院後の受け入れや、陽性者の施設内療養(入所継続)などへの対応に迫られる事態になっている。
全国老施協では5月6日、参議院厚生労働委員会において「病床のひっ迫を抑えるため、退院基準を満たした方を適切に介護施設や一般の医療機関に移さなければならないが、介護施設のなかに受け入れに関しては消極的な所があり、検査で陰性であることを求める声もある」と主張し、また「退院基準を満たせば、仮に陽性でも他人にうつすことはほとんどないという認識に欠けることにも要因がある。この点について、より丁寧な科学的根拠に基づいた退院基準についてのアナウンスが必要だ」と現状を説明し、施設への支援策の充実を求めた。あわせて、そのだ修光常任理事(参議院議員)が菅義偉総理に直接要望を伝えている。
5月21日、厚生労働省は高齢者施設等における新型コロナ感染者発生に備えた対応と感染者が発生した場合の施設内療養に関する支援策をとりまとめた事務連絡※1を発出し、このなかで施設内療養の費用にかかる追加の支援策として、地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)を活用する新たな補助制度を設けることを示した。
具体的には、「施設内療養者1人につき1日1万円(最大15万円)を今年4月1日にさかのぼって支給(15日以内に入院した場合は、施設内療養期間に応じ、1万円/日を日割り補助)する」というもの。対象は、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、グループホーム、ショートステイなどの介護施設で、ゾーニングやコホーティング(隔離)、担当職員を振り分ける勤務調整などを実施することが、支給の要件となる。

※1:高齢者施設等における感染防止対策及び施設内療養を含む感染者発生時の支援策(介護保険最新情報Vol.981)(5月21日)
感染者発生に備えた対応、施設内療養に関する支援策、必要なマニュアル等を整理して通知している。

6月中までを目途に集中的検査の実施を要請

重要なコロナ対策の一つに、検査の充実がある。特に、高齢者施設で集団感染が発生した場合、入所者や施設運営への影響が大きく、医療提供体制への負荷の増大にもつながるからだ。
これを防ぐため厚生労働省は、4月から6月までを目途に高齢者施設等の従事者等の検査の集中的な実施計画の策定および実施を自治体に要請しているが、なかなか検査が進まないという実態もある。
その理由として、「検査の意義がわからない」「症状がある場合に受検している」「陽性者が出た場合の事業への影響を危惧するため」「陽性者が発生した場合の代替スタッフの確保が難しい」といった声があることを踏まえ、厚生労働省は5月17日、定期的な検査の意義や感染者が発生した施設への支援策(図表1)をとりまとめた事務連絡※2を発出している。

図表1 定期的な検査の流れと感染者が発生した高齢者施設等への支援

※2:高齢者施設の従事者等への定期的な検査の積極的な受検について(5月17日)
高齢者施設職員等への定期的検査の意義、定期的検査の流れと感染者が発生した高齢者施設等への支援について説明。

「基本的対処方針」を見直し、検査を受ける施設の増加を図る

新型コロナウイルス感染症対策本部は5月28日、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を見直し、集中的検査の対象を通所系の介護事業所にまで拡大するとともに、都道府県による高齢者施設等に対する受検の要請、好事例の横展開、当該要請と連携した高齢者施設等に対する施設運営上の指導等を通じ、検査を受ける施設を増加させる方針を打ち出した。
これを踏まえ、厚生労働省は同日の事務連絡※3で、集中的検査の対象施設をこれまでの入所系の高齢者施設等(特別養護老人ホーム、グループホーム、障害者支援施設等)から、外部との接触の機会が多い通所系の事業所(通所介護、通所リハビリテーション、認知症対応型通所介護など)にも広げることを明示した。
感染者数が多く、危機意識の高い大都市圏の高齢者施設では集中的検査が比較的進んでいるが、地方などでは任意で行っていることもあり、遅れがちだ。だが、地域に関わりなく、ひとたびクラスターが発生すれば、施設は危機的状況に陥る。感染者数の少ない地域でも慢心せず、積極的に検査を進める必要がある。

※3:高齢者施設等の従事者等に対する集中的検査の対象施設の拡大等について(5月28日)
集中的検査の対象を通所系の事業所にも広げることを通知。今後も、地域の感染状況に応じて、集中的検査を進めるために必要な準備を行うよう自治体に依頼している。

さまざまな支援策をとりまとめ、通知

冒頭に紹介した施設内療養者1人につき1日1万円の支給のほか、国は高齢者施設の感染防止対策と感染者発生時に備えたさまざまな支援策を打ち出している。
厚生労働省が5月21日に発出した事務連絡※1には利用できる支援策がとりまとめられている。主な内容を見てみよう。

感染対策のシミュレーションや定期的な検査の促進

感染者発生に備えた対応としては、次のような支援がある。

[1]感染対策のシミュレーションの促進

自治体は「高齢者施設における感染対策の更なる推進について」(3月9日付事務連絡)で示したツール等を活用しながら、管内の高齢者施設への感染対策の実施を促進する。その際、個別施設への訪問による研修、助言等の実施の検討に努める。

[2]高齢者施設の入所者・従事者に対する早期のワクチン接種の促進

高齢者施設の従事者は、高齢者施設に入所する高齢者と同時に接種することとする。

[3]高齢者施設の従事者等に対する定期的な検査の受検促進等(前述)

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施設内療養への人的支援と費用にかかる支援

施設内療養時の対応については、留意点をまとめた「施設内療養時の対応の手引」を作成し、施設内感染が発生した施設への支援に活用する。施設内で感染者が発生した場合は「新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」等における感染者発生時の対応が適切に行われるよう、感染制御・業務継続支援チーム等による支援を実施するよう求めている。
そのほか、人材や費用についての支援も用意されている。
①人材についての支援
都道府県は、感染者が発生した場合に、感染制御・業務継続支援チームが支援を行い、必要に応じて専門家やDMAT(災害派遣医療チーム)・DPAT(災害派遣精神医療チーム)等の医療チーム等を迅速に派遣できるよう、都道府県内で連携を図っておく。厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部地域支援班およびクラスター対策班は、各班に所属するDMATや感染症管理の専門家による相談対応や、都道府県の要請に基づき、必要な人材の派遣等を行う。
また、都道府県は平時から介護サービス事業所・施設等の関係団体等と連携・調整し、緊急時に備えた応援体制を構築するとともに、感染者が発生した事業所・施設等に対し、地域の他の介護サービス事業所・施設等が連携した支援を実施するために必要な経費についても支援を行う。各施設、法人が調整しても職員の不足が見込まれ、応援職員の派遣依頼があった場合は、適切に対応する。
②費用についての支援
感染者等が発生した場合でも介護サービスを継続できるよう、地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)によるかかり増し経費を支援する補助制度が利用できる。
地域医療介護総合確保基金を活用する事業として、都道府県は「新型コロナウイルス感染症流行下における介護サービス事業所等のサービス提供体制確保事業」を実施している(図表2)。冒頭の施設内療養者への対応に対する助成は、令和3年度事業の一環として追加されたもので、国は都道府県に同事業を積極的に行うよう事務連絡を出している。
また、特別養護老人ホームや介護医療院、介護老人保健施設などの利用者がやむを得ず入所を継続して療養を行う場合、配置医師等の往診に対し、診療報酬における特例的な対応も用意されている

図表2 令和3年度新型コロナウイルス感染症流行下における介護サービス事業所等のサービス提供体制確保事業(地域医療介護総合確保基金)


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認知症の人や成年被後見人がワクチンを受ける際は

厚生労働省は4月23日の事務連絡「新型コロナ予防接種の実施に係る留意事項について」※4で、認知症の高齢者等で新型コロナウイルス感染症の予防接種を希望するかどうかの意思確認を行うことが難しい場合、季節性インフルエンザ等の定期接種と同様の対応をするよう依頼している。
具体的には、状況に応じて、家族やかかりつけ医、高齢者施設の従事者など日頃から身近で寄り添っている人たちの協力を得て、本人の接種の意向を丁寧に酌み取ることなどにより本人の意思確認を行うことや、身体的事情等で自署ができない場合は家族等による代筆を行うなど適切な運用に努めることが必要となる。
また、成年被後見人への接種の留意事項としては、本人の接種の意思を確認するのが難しい場合は成年後見人による同意の署名が可能だが、その場合は家族や医療・ケアチーム等、本人の周りの人と相談しながら判断することが求められる。

※4:新型コロナ予防接種の実施に係る留意事項について(4月23日)
意思確認を行うことが難しい認知症高齢者等がワクチンを接種する際の本人確認の留意点を説明。成年被後見人の場合にも、別の事務連絡を参照するよう促している。