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首脳介談

地域の福祉を一手に担う ますます高まる社会福祉法人の役割

2021.4 老施協 MONTHLY

高齢者福祉施設に関する施策を所管する厚生労働省老健局高齢者支援課は、全国老施協とも非常に関係の深い部署です。2019年に国土交通省から赴任された同課の齋藤良太課長と、今回の介護報酬改定でのテクノロジー導入による介護現場の生産性向上や、それに対する全国老施協の取り組みなどについて語り合いました。※本対談は3月末に実施したものです。

齋藤良太/厚生労働省老健局高齢者支援課長齋藤良太
厚生労働省老健局高齢者支援課長

平石 朗/全国老施協 会長平石 朗
全国老施協 会長

制度をつくるうえで介護現場の声が非常に重要

平石 厚生労働省老健局高齢者支援課長として新型コロナウイルス感染症対策の最前線に立たれ、大変な1年間だったと思います。3次にわたる補正予算の編成などタイムリーな対応に感謝しています。

齋藤 今回の対応を通して、高齢者施設で働く皆さんは社会に必要不可欠なエッセンシャルワーカーなのだ、との思いを改めて強くしました。マスクや防護服などの施設への配布、通所介護の業務継続のための報酬特例、施設でのPCR検査の実施や職員への慰労金支給など、現場を支えるために何をしなければならないのかを考え続けた1年でした。

平石 齋藤課長の介護現場に寄り添う思いは我々にも十分に伝わっていました。

齋藤 制度をつくるうえで、全国老施協を通して届く介護現場の皆さんからの声が大きな助けになりました。

平石 現場の声を届けて、施策に反映していただき、現場で実行した結果をフィードバックする。この仕組みができたという手応えを感じています。社会福祉法人が地域で求められる役割を果たしていこうとすれば、仕組みをつくる国との連携が欠かせません。

齋藤 国土交通省出身の私としては、今回の経験を自然災害への対策にも活かしていただきたいと思います。首都直下や南海トラフなどの巨大地震はいずれ必ず起こります。国も自治体も全力を尽くしますが、即座に完璧な支援ができるわけではありません。本格的な支援が入るまでの間、地域に強固な絆を築いている社会福祉法人の役割がとても重要になります。

平石 全国老施協は今年度、感染症対策を含む災害対策の強化を図り、DWAT(全国老施協災害派遣福祉チーム)の全県設置に取り組み、発災後できるだけ速やかに救援に入れるようにしたいと考えています。

齋藤 それはとても心強いです。

開かれた施設にして先進的取り組みの横展開を

平石 全国老施協は「介護現場の革新」を今年度事業計画の重点事項の一つに位置づけました。国のほうでも、今回の介護報酬改定にICT(情報通信技術)の活用を盛り込んでいます。ただし、製造業などと異なり、介護業務の生産性向上は容易ではありません。

齋藤 テクノロジーを導入しても、最初からすべての施設でうまく対応できるわけではありません。たとえば、人員配置を緩和するための見守り機器については、3か月間試行したうえで施設が導入できる形にしています。まずは各地でパイロット事業を行い、これをショーケースとして介護報酬と予算で後押しするスキームです。全国老施協の会員施設の皆さんにも、ぜひご協力いただきたいと思います。

平石 介護保険制度ができて多様な運営主体が参入するようになり、民間のサービス付き高齢者向け住宅も増えました。経営感覚に優れた大規模法人が国の補助事業の情報にアンテナを張り、いち早く取り入れる動きも見られるようになり、現場の変革が進むのはよいことですが、先進的な取り組みを自施設・事業所で完結せず、周辺の法人にもノウハウを開示し共有できればよいと思っています。

齋藤 同感です。今回、テクノロジーの導入支援では、他の施設の見学を受け入れることを補助要件としたものもあります。コロナ禍では難しさもあると思いますが、開かれた施設にしていってもらえればと思います。

令和3年度介護報酬改定で打ち出された「介護人材の確保・介護現場の革新」

多様な事業を展開し地域の福祉をすべてカバー

平石 齋藤課長は4月に国土交通省に復帰されますが、超高齢社会への対応は国土交通省の政策にも関係します。

齋藤 たとえば、中山間地などから地域の中心部に移住していただくコンパクトシティの取り組みですが、これは最低でもひと世代、つまり30年間かかる施策と捉えています。高齢者のなかには「私の代まではここに住みたい」という方も多く、強制的な移住はできません。長期的視点を持って施策を進めていくなかで、福祉サービスをどう供給していくか。これは本当に重大な課題で、下手をすれば各地に人の住めない地域を生み出しかねません。
 こうした事態を防ぐための介護サービスの供給主体の中心は、やはり特別養護老人ホームでしょう。特養を持つ社会福祉法人には訪問や通所も行ってもらい、さらにサ高住も併設していただくなど、「この地域は自分たちですべてカバーする」という気持ちを持って事業を展開し、地域の福祉の核となっていただければと思います。

平石 今後とも、いろいろお力をお貸しください。本日はありがとうございました。

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