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首脳介談

ICTを活用することで介護の現場を変革し魅力ある仕事に

2021.12 老施協 MONTHLY

今回のゲストは、国家資格である介護福祉士の職能団体である公益社団法人日本介護福祉士会の及川ゆりこ会長です。新型コロナウイルス感染症を契機とするICTの利活用の急速な進展が、介護の職場にどのような変化をもたらすのか。岸田文雄総理が言及した介護職の賃上げ、両団体の連携のあり方など広範なテーマについて語り合いました。

平石平石 朗
全国老施協 会長

及川及川ゆりこ
公益社団法人日本介護福祉士会 会長


ICT導入には「利用者のため」という視点を忘れてはいけない

平石 全国老施協では、新型コロナ感染症の影響で参会者が集合しての会議や研修は難しくなりましたが、一方でICTの活用が急速に進展しました。日本介護福祉士会も同様の状況でしょうか。

及川 私たちも活用を進めておりまして、研修でいえば、YouTubeで配信したり、オンデマンドのコンテンツをつくったりして、新たな形の自己研鑽の場を提供しています。

平石 10年後に振り返れば、「コロナ禍の2020年は大きな時代の転換点だった」とされるのではないでしょうか。今や社会全体がDX(データ、デジタル技術の活用と対応)に関心を持たざるを得ない状況で、この流れをうまく利用すれば、介護を変えられる可能性もあると考えています。

及川 確かにICTには大きな可能性を感じますが、導入を進めるにあたっては、利用者のために、という視点を忘れてはならないと思います。

平石 国がICTの導入による介護現場の合理化・効率化に着目すること自体は悪くはないのですが、大切なのは効率化で生じた時間をどう使うかです。私自身の経験でいえば、高齢者を故郷にお連れして共に昔の記憶をたどったり、お墓参りをしたり、こうしたことに介護の仕事の魅力を感じたものです。今は、そうした余裕を持ちにくくなりました。

及川 介護福祉士をはじめ介護の現場で働く人には定められたルーチンワークがあり、そこは崩せません。空いた時間を利用者の想いを実現するために使えるようになれば素晴らしいですね。

介護現場、利用者のため職能団体と事業者団体の連携が必要

平石 あるべき公的介護制度を求めていくには政治への働きかけも不可欠です。関連団体の長としては、やはり組織力の強化も課題でしょうか。

及川 その通りです。介護福祉士の資格を持っている皆さまには職能団体があることを認識して、加入していただきたいですし、自分たちの課題を知り、声を上げるようになっていただきたいです。

平石 介護現場のため、利用者のため、必要なことを国に要求していくうえでも、私は職能団体と事業者団体の連携が必要だと思っています。

及川 立場の違いはあれ、課題を共有することは意義のあることです。全国老施協とはこれまで、「潜在介護福祉士復職支援プログラム」の実施や、新型コロナ対策についての国に対する要望活動などでご一緒させていただきました。

平石 たとえば研修を企画するとき、双方に呼びかけて参加者を増やしコストを下げるとか、お互いの専門分野では協力し合うなど、連携の仕方はいろいろあるはずです。

及川 協力できることについては、いろいろ検討していきたいと思います。

「やればやるほど全部返ってくる」介護はやりがいのある魅力的な仕事

平石 岸田政権が、分配戦略の一つとして介護職の賃金アップを打ち出しています。

及川 月9,000円という金額が独り歩きしている感もありますが、人手不足のなかで懸命にがんばっている人たちに一時的に配って終わりとせず、ぜひ継続していただきたいと思います。

平石 全産業の平均賃金はボーナスを入れて月額35万2,000円、一方、介護職は29万3,000円です。6万円の賃金格差を穴埋めしようというなら当然、恒久的であるべきです。

及川 ただし、介護保険料に反映されることで利用控えが起きないようにする配慮は不可欠ですね。

平石 財源については、利用者の負担感とのバランスなどを踏まえて工夫していただきたい。問題は、賃金の格差が埋まれば人材が来てくれるかということです。それとあわせて、介護という仕事の魅力の発信に努めていかなければなりません。

及川 同感です。平石会長がおっしゃられたように、介護は本来、魅力的な仕事です。私は一般企業から転職したのですが、病院で介護の仕事を始めて“どうすれば生活の質が改善するのか”“微笑んでもらえるにはどうしたらいいか”を考えながら仕事をするなかで、やればやるほど全部返ってくることを体験し、「この世界で仕事をしていきたい」と強く思うようになりました。「辞めたい」と思ったことは一度もありません。

平石 より喜びを感じられる職場、働く人・利用する人をより大切にする職場にしていくため、これからいろいろな機会で連携していきましょう。

公益社団法人日本介護福祉士会

我が国唯一の介護分野の国家資格である介護福祉士有資格者による職能団体。平成6年発足。介護福祉士の資質の向上や介護に関する知識・技術の普及を図り、国民の福祉の増進に寄与することを目的とした諸活動を推進している。
47都道府県の介護福祉士会が集まった全国組織で、各都道府県の団体は公益社団、一般社団など法人化され、地域それぞれの研修や交流の場づくりに取り組んでいる。会員は約4万人(令和3年11月現在)。
https://www.jaccw.or.jp/

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