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首脳介談

福祉の原点を押さえつつ上げた利益を社会に還元するべき

2021.3 老施協 MONTHLY

1925(大正14)年に第1回全国養老事業大会を開催した大阪養老院をルーツに持つ社会福祉法人聖徳会。同大会はその後、全国老施協の源流となった全国養老事業協会の設立につながっています。今回は、全国老施協の歴史とも関係する聖徳会の岩田敏郎理事長と、社会福祉法人や高齢者福祉のあり方などを語り合いました(オンライン開催)。


岩田敏郎
近畿老人福祉施設協議会会長
いわた・としお/社会福祉法人聖徳会理事長。近畿老人福祉施設協議会会長。社会福祉法人大阪府社会福祉協議会老人施設部会長。聖徳会(大阪府松原市)は1902(明治35)年に創設された大阪養老院を前身とし、来年、創立120周年を迎える日本の福祉事業の草分け的存在。


平石 朗
全国老施協 会長

入会していない民間施設にも支援物資の活用を呼びかけ

平石 新型コロナウイルス感染症の新規感染者数がようやく減少傾向となりました。大阪では感染拡大を防止するため、どのように対応されましたか。

岩田 各施設で感染予防を徹底するため、府社会福祉協議会では何度も研修会を開き、関連情報の発信に努めてきました。昨年秋からは大阪府とともに、高齢者施設でクラスターが発生し職員が出勤できなくなった場合、応援職員を派遣する事業も始めました。応援職員には社協の老人施設部会だけでなく保育部会や成人施設部会等にも協力してもらい、100以上の法人の職員が登録されています。
そのほか、大阪府では1月21日に府内7か所に高齢者施設スマホ検査センターが設置されました。高齢者施設の入居者や職員に発熱や倦怠感などがあったとき、ここから検査キットを入手できる仕組みです。

平石 感染拡大が収まりつつあるのは、そうした組織的な取り組みの効果が出始めているということですね。

岩田 全国老施協からは衛生用品や防護用品を大量に送っていただきました。これも大変助かりました。

平石 昨年6月の総会で広域感染症災害救援事業を立ち上げ、会員・非会員を問わず、必要とする施設に対して物資の配布を始めました。

岩田 送っていただいた物資と老人施設部会の保有分を府内7施設に備蓄し、高齢者施設をはじめとする関連施設にも呼びかけ、活用できる体制を構築しています。

図表1:近畿2府4県の介護人材、図表2:全国老施協会員数

地域に利益を還元しなければ本来の目的から外れてしまう

平石 聖徳会の創設者であり、岩田会長の曾祖父の岩田民次郎氏は、明治35年に生活に困窮している人たちのため寺の一角を間借りして大阪養老院を始められ、明治37年の東北大飢饉にも対応されるなど、日本の社会福祉事業を牽引されました。こうした福祉の原点が見失われかけているのではないかという思いが、私にはあります。介護保険制度ができて、株式会社も高齢者福祉事業に参入するなか、社会福祉法人は制度への対応に追われているようにも感じます。

岩田 介護保険制度で競争が生まれ、地域や住民のニーズに応えなければならないという意識が高まり、それがサービスの質の向上につながったと思いますが、事業を拡大せんがために利益を追うような社会福祉事業家になっては困ります。

平石 民間企業が営利のために社会福祉の制度を活用しているとおぼしきケースも見受けられます。株式会社は利潤追求が目的だとしても、社会福祉法人の最終目標は地域におけるセーフティネットの構築であるはずです。

岩田 私の曾祖父は決して裕福な篤志家ではなく、寄付を募りながら運営していたのですが、それだけでは運営ができないために営利事業も手がけ、利益を社会福祉に投じていました。今の介護保険制度のもとで、利益を上げようとすれば上げられる。利益を上げることは必要だと思いますが、その利益を社会に還元しなければ、本来の目的から外れることになります。

平石 目的を押さえたうえで経営力を高め、より良いサービスを提供し、地域住民から選ばれる存在になる。容易ではありませんが、挑戦するだけの価値のある目標だと思います。

次世代に介護・福祉に触れてもらう取り組みも必要

岩田 経営力の向上については、会員の全国老施協への期待は大きいでしょう。

平石 経済的に厳しい状況にありながら、地域の福祉を支えるべく努力している社会福祉法人は数多くあります。こうした法人を支えられるよう組織力を高めたいと、私は会長就任後に「融和と再生」というテーマを掲げ、関係性が希薄であったブロック・各都道府県・指定都市老施協とも協力関係を深められるよう努めてきました。社会福祉法人同士も、何らかの形で連携していくべきだと思います。

岩田 合併は難しいとしても、連携は絶対に必要です。

平石 全国老施協への要望等は何かありますか。

岩田 私たちの老人施設部会では2年前、次世代育成委員会を立ち上げ、小中学生に福祉や介護に触れてもらう事業を始めました。10年先、20年先に、そのなかの何人かでも我々の世界に入ってきてもらえればと考えています。人材確保のためにも、全国老施協にもこうした事業に長期的に取り組んでいただきたいと思っています。

平石 ぜひ考えたいと思います。岩田会長とも一緒に取り組めることを楽しみにしています。

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