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首脳介談

さまざまな課題に対応するアメーバのような連携が望ましい

2021.9 老施協 MONTHLY

今回から介護関連団体のトップとの「介談」をお届けします。第1回は、医療の側から壁を越え、介護団体との連携を進めてきた公益社団法人全国老人保健施設協会(全老健)の東憲太郎会長です。介護報酬改定に向けた国への働きかけやLIFEへの対応など、さらなる連携強化について意見交換しました。

東 憲太郎/公益社団法人全国老人保健施設協会 会長
東 憲太郎
公益社団法人全国老人保健施設協会 会長

平石 朗/全国老施協 会長
平石 朗
全国老施協 会長


平成27年度改定で連携の必要性を痛感

平石 東会長は全国老施協を含む介護関連団体との連携に力を入れてこられました。他団体と手を結ぶべきと思われたきっかけがあったのでしょうか。

 平成26年に全老健会長に就任し、翌年の正月明けに平成27年度介護報酬改定について陳情するため、麻生太郎財務大臣(当時)のもとにうかがいました。今も覚えていますが、このとき麻生大臣から「介護は団体が多く、ばらばらに動いている。日本医師会は団体として一つにまとまっているから、あれだけの力がある」と言われたのです。
それを機に、全国老施協さんをはじめ他団体との関係強化に取り組み、次の介護報酬改定では186万筆という過去最多の署名を集め、11団体のトップとともに財務大臣室を訪れ、要望書をお渡しできました。この経験が原点です。

平石 さらなる結束のため、団体を束ねる上位組織をつくるというお考えはありましたか。

 当時、そういう意見もありました。しかし、同じ介護に関わる団体とはいえ、それぞれ方針、求めるものが異なります。各団体の上に組織をつくれば逆に動きにくくなり、統率も取れず、結局、空中分解するのではないかと危惧しました。

新型コロナのクラスターに対するワクチン接種の成果と今後の課題

平石 確かに職能団体も複数あり、事業者団体も医療法人や社会福祉法人、営利法人と主体が多様ですから、常に足並みをそろえるのは難しいですね。

 アメーバのように多団体が臨機応変に結束できる形が望ましいと思っています。介護施設でのワクチンの優先接種をお願いするときは施設団体でまとまる。介護報酬改定では多数の団体が集まり大きなアメーバとなる。そのようにテーマごとに結集できればいいのではないでしょうか。

平石 今回の令和3年度介護報酬改定でも連携することができました。

 新型コロナウイルス感染症の影響により、集会も記者会見もできませんでしたが、いくつかの団体と一緒に行動できました。特に、そのだ修光先生(参議院議員・全国老施協常任理事)のお計らいで、菅義偉総理と田村憲久厚生労働大臣との面会がかない、平石会長をはじめ介護団体の代表とともにコロナ禍における介護事業の窮状と要望を直接お伝えすることができました。これがプラス0・7%改定と、高齢者施設でのPCR検査の充実につながったと思います。そのほかにも、そのだ先生には、介護職員への慰労金支給や高齢者施設の従事者へのワクチン接種などでもご尽力いただき、感謝しております。

平石 ワクチン接種で高齢者施設の職員の不安感が大きく軽減されましたね。

 7月に職員も入所者も全員接種を終えた老健でブレークスルー感染によるクラスターが発生し、施設で療養するという事案が発生しましたが、1人の死者も出さず、約1か月で終息しました。

平石 時間が経てば効果も低下します。油断はできません。

 全国老施協とも連携し、介護事業所の利用者、従事者を対象とする3回目の接種を速やかに実現できるよう、要望したいと思います。

認知症の人の残存能力にかかる新たな評価指標をつくりたい

平石 令和3年度介護報酬改定の目玉とされるのがLIFE(科学的介護情報システム)ですが、介護ソフトへの対応が間に合わないなど混乱が生じ、現場は苦労しています。

 全老健で調査したところ、7割の施設がLIFEへの対応のため残業が増えたとしています。
また、LIFEの認知症の評価項目に課題も感じています。BPSD(行動・心理症状)が入っていますが、これは一部の人に見られるものです。
私たちは現在、記憶力や見当識、意思疎通能力など共通の障害に関する残存能力を評価できる指標がつくれないかと、日本老年医学会や厚生労働省に検討を依頼しています。BPSDのない人にどういうケアをするべきか、どういう介入をすれば残存能力を維持・向上できるかなどについて、科学的なエビデンスをつくりたいと考えています。BPSDも大切な指標ですが、残存能力を評価することは尊厳の保持にもつながるはずです。

平石 LIFEについても意見交換しながら、生活施設である特養の現場で活かせるものにしていきたいと思います。これからも、よろしくお願いします。

<公益社団法人全国老人保健施設協会>

平成元年、「全国の介護老人保健施設の一致協力によって、高齢者等が自立して生活できるよう、地域社会の健全な発展を図るとともに、保健医療サービス及び福祉サービスの質の向上確保に係る調査研究等を行い、もって高齢者等の保健医療の向上及び福祉の増進に寄与すること」を目的に、社団法人として設立。平成23年、公益社団法人に移行。
会員施設3,581、会員施設入所定員数33万5,030(いずれも正会員のみ。令和3年8月末現在)。

https://www.roken.or.jp/


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