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永田町&霞が関TOPICS

制度を動かす

誰一人取り残さないデジタル化――実現には、政治の役割が重要だ

2021.9 老施協 MONTHLY

法案・政策成立プロセス

菅義偉首相肝いりのデジタル庁が発足した。「役所に行かなくても、あらゆる手続きを可能にする」(首相)という触れ込みで、強い権限によって霞が関の縦割りを打破し、各省庁のデジタル化推進を統括する司令塔役を担う。首相がトップを務め、担当大臣が指揮し、600人規模の職員のうち、200人程度は民間から採用する予定。霞が関と民間企業を行き来する「回転ドア」方式の試行と位置づけられているのも大きな特徴だ。
初めてIT基本戦略を策定してから約20年間、多額の予算を投入してきたにもかかわらず、コロナ禍では、給付金や助成金、協力金の支給が遅れ、教育現場でもオンライン授業の環境が整っていないなど、貧弱なデジタル化の実態が浮き彫りになった。それだけに「器」をつくっただけではなく、早急かつ具体的な成果が求められている。
年末までに「重点計画」を決定する方針で、マイナンバーカードを健康保険証としても利用できる制度の本格運用は今年10月から始まり、2024年度末までには運転免許証と一体化。コロナ対策が後手に回ったとの批判を浴びた教訓から、さまざまな公的な給付金を迅速に受けられるよう、希望者はマイナンバーと預貯金口座を事前に登録するシステムもスタートする。
期待が大きい一方で、課題も山積する。マイナンバーカードの普及率はまだ40%に満たない状況で、いかに国民の理解を促していくのか。また、個人情報の利用が広がるとあって、それがしっかり保護されるのか、不安に感じている人たちも少なくない。民間職員の大半は身分が非常勤で、企業に所属しながら週に数日間、公務に当たる兼業も選択できるため、入札などをめぐってはこれまで以上に透明性の確保が不可欠だ。
そして、利便性を追求するだけでなく、デジタルを使いこなせないお年寄りに配慮する温かい目配りが、何よりも政治の役割となる。(凛)

今月の修光Style

今回は、ソーシャルワークを研究される昭和女子大学人間社会学部の教授で、今期、全国老施協の新理事に就任された北本佳子氏をお迎えしました。

そのだ修光

そのだ修光
全国老施協常任理事・参議院議員

北本佳子

北本佳子
全国老施協理事・昭和女子大学教授

特養は地域に欠かせない貴重な資源
地域から信頼され必要とされるためにも地域貢献活動を行うべき

原点を忘れれば社福の存在意義が揺らぐ

そのだ 社会福祉法人の地域貢献について研究されている北本先生は、どのような問題意識を持たれていますか。

北本 人手が足りないこともあり、多くの法人は自施設の利用者の支援が中心になり、地域と十分に関われずにいるのが実情です。そのようななか、介護に参入した営利企業がCSR(企業の社会的責任)を重視し地域貢献を意識するようになっており、社福の役割が改めて問われています。

そのだ 確かに重大な局面だと思います。人手不足は深刻ですが、地域貢献という原点を忘れれば、社福の存在意義が揺らぐことになります。

北本 地域貢献をしているとする施設にしても具体的な内容をお聞きすると、地域の課題を積極的に解決していこうという活動ではなく、祭りへの協力や、慰問であったり、従来の交流レベルにとどまっている場合が結構あります。

人手が足りないからこそ地域に貢献を

そのだ 地域貢献にこれから取り組むという特別養護老人ホームには、どのようなことを望まれますか。

北本 特養は専門性の高い職員が多く、建物があり、これらが貴重な資源であることを理解していただきたいと思います。そして高いハードルと考えず、施設のスペースをカフェにするなど、地域の人たちと関わることから始めればいいと思います。そうすれば地元に施設の存在が認知され、ボランティアを募集しているからやってみようとなるかもしれません。親の入居先に選んでもらえれば、マーケティング活動にもなります。

そのだ ご指摘のように、特養は地域の貴重な資源です。たとえば、自治体と災害協定を結び、いざというときに高齢者の避難先となることも考えられます。これらの活動についても人手不足を訴える施設は少なくないようです。

北本 人手が足りないからこそ、地域に貢献すべきだと思います。そうすることで次は地域の人たちがサポートする側になってくれます。地域の高齢者にボランティアやパートタイマーとして介護の周辺業務を担ってもらえれば、介護職員は専門のケア業務に専念できますし、高齢者にとっては生きがいや介護予防につながります。

そのだ 政府の提唱する「地域共生社会」にも通じます。

北本 地域から信頼され必要とされるには、「この施設を支えたい」と思ってもらえるよう、地域に働きかけを行うことが必要です。条件整備も必要ですが、負担感ばかりに目を向けず、地域との共存をめざしていただきたいです。

そのだ 貴重なご指摘です。先生の研究の成果を全国老施協の事業や国の政策の参考とするとともに、フィールドワークに全国老施協として協力していきたいと思います。

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