トピックス

PICK UP POINT

ケア記録の簡素化・標準化をめざす観点から、標準的な101項目を選定

2020.6 老施協 MONTHLY

全国老施協「特別養護老人ホームにおけるケア記録に関する調査研究事業調査結果報告書」令和元年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)

ケア記録の項目に関し、特養、システムベンダー、自治体の間で認識に違いがあるのではないか。この三者がケア記録で必要とする標準的な項目は何か——。これらの仮説を検証するため、全国老施協は調査研究事業を行い、調査結果の報告書を3月に発表した。概要を紹介する。

関係者が共有すべき標準的な項目は何か

特別養護老人ホームに対する指導の内容や確認するケア記録の項目、確認文書について自治体ごとにさまざまな差異が生じており、このことが介護の現場の負担となり、ケア記録ソフトを作成するベンダーにも負荷をかけているとの指摘がある。また現在、業務効率化、生産性向上などのため介護現場へのICTの導入が加速しているが、特養で用いているケア記録ソフトとICT機器の情報の突合などについて十分な検証が行われているとはいえない。
こうしたことの背景に、そもそも関係者が共有すべきケア記録の標準的な項目を何にすべきか、という課題があった。
そこで全国老施協は、特養で作成しているケア記録の項目、自治体が実地指導で確認する項目について、それぞれの目的や提出を求める根拠などを明らかにし、必要性の高いケア記録の項目を浮き彫りにするため、令和元年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)として調査を実施(図表1)。このほど「特別養護老人ホームにおけるケア記録に関する調査研究事業調査結果報告書」として取りまとめた。この報告書では、介護記録システムを作成、提供するベンダーについても、設定している項目を明らかにしている。

図表1 調査の概要

「手書き」の記録ほど自治体は提出を求める!?

特養の調査では、ケア記録の項目ごとに記録を作成する手段が「システムに入力」か「手書き」かを調べた(図表2、3)。手書きにしているのは、何らかの理由でシステム入力にできない場合や、必要に応じて手書きにしている場合が考えられる。
項目ごとに分析したところ、手書きは「常に使う」項目、すなわち、すべての利用者に使用する傾向があることがわかった。また、手書きの割合が高い記録項目ほど、支援実施の有無の確認には使われていなかった。これらの結果は、手書きは利用者の動向や情緒などを表現するために必要とされており、実施の有無を確認するには適さないことの現れと考えられる。

図表2 図表3

また、自治体調査との関係では、「手書き」で記載する割合が高い項目は、実地指導で自治体から提出を求められやすいことがわかった。施設側は自治体側に求められるから記載しているという可能性があり、自治体の求めによって介護現場の事務負担が増えているのではないか、との指摘にも符合する。提出を求める項目と「根拠はない」と回答した項目との間に正の相関関係があったが、これは自治体側が「特段根拠がない」と考えている項目が手書きになっている可能性を示唆している。
これらの分析結果から、今後の課題として、三者それぞれに工夫が求められることがわかる。特養はシステム入力でも手書きでの記載と同一の趣旨となるような複数の選択肢により表現できるようにする工夫のほか、ケアの標準化も進める必要があるといえるだろう。ベンダー側は音声や動画など手書き以外の方法による代替について検証する必要があり、自治体側は根拠を説明できないものは実地指導などで求めないなどの運用の改善を図る必要があるといえる。当然、政策面でもこれらを後押しする取り組みが不可欠だ。
また、三者への調査により、施設が記録している項目はベンダーで記録可能な項目、自治体で監査確認する項目とも正の相関関係があることがわかった。一方、ベンダーの記録可能とする項目と自治体の監査の確認項目は弱い正の相関であり、このことはベンダーの記録項目は施設が記録している項目によって決められていることを示唆していた。

標準101項目を整理周知・普及を図る

今回、特養、ベンダー、自治体への調査結果から得られた情報を分析し、必要な標準的な項目の抽出、選定を行い、「ケアプラン」「ケアカンファレンス」「身体拘束」「ヒヤリハット・介護事故関係」「参加」「口腔」「入浴」「褥瘡」「食事等摂取量」など本調査における101の標準項目を整理することができた。これ以外はオプショナル(任意)で対応すべき項目と考えられる。
本調査の標準的項目は、施設ではチームが情報共有するうえで活用でき、自治体の監査などで確認する項目としても必要十分なものと考えられ、全国老施協としては、今回の調査で得られた結果や視点を自治体に対しても情報提供し、理解を求めていく必要があると考える。また、ベンダー各社にも周知し、普及を図っていきたい。

調査報告書の詳細はこちらまで