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〈8月から負担限度額が変わりました〉

「施設での食費・居住費」および「高額介護サービス費」を見直し

2021.8 老施協 MONTHLY

8月から、「高額介護(予防)サービス費の負担限度額」および「補足給付における食費の見直し」が実施された。介護事業者としては、こうした制度の見直しを理解し、利用者に説明できるようにしておきたい。見直しの内容とその経緯を解説する。

食費・居住費について負担限度額が変更に

介護保険制度では、在宅系サービスとの公平性の観点から、施設系サービス(介護老人福祉施設や介護老人保健施設、介護療養型医療施設、ショートステイ)について、食費と居住費は利用者の自己負担が原則となっている。しかし、生活保護受給者や所得の低い利用者については自己負担が過重なものとならないよう、負担の上限額(負担限度額)を定め、これを超える部分は「補足給付」として、特定入所者介護サービス費で助成を行っている。
負担軽減措置の対象は、生活保護受給者のほか、世帯全員が市町村民税非課税などの条件に加えて、預貯金の額も要件になり、具体的には、本人および配偶者の預貯金等の資産の額の合計が2,000万円以下(配偶者がいない場合は本人の額が1,000万円以下)とされていた。
この補足給付について、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会の「介護保険制度の見直しに関する意見」(令和元年12月27日)は「能力に応じた負担とする観点から、制度の精緻化を図ることが必要」と提言。令和3年度介護報酬改定に向けた厚生労働省の第194回介護給付費分科会(令和2年11月26日)で全国老施協が主張してきた基準費用額の見直し(基準費用額の見直しの経緯参照)が論点とされたことに伴い、「介護保険施設における食費の基準費用額について、令和2年度介護事業経営実態調査による平均的な費用額との差の状況を踏まえ、利用者負担への影響を踏まえつつ、必要な対応を検討してはどうか」という対応案が示された。
これを受け、今年8月1日から、助成を能力に応じた負担となるよう制度を精緻化し、支出額について所得段階間の均衡を図る見直しが行われた。具体的に、認定要件における預貯金額の基準が図表1のように改正された。また、介護保険施設の入所者・ショートステイの利用者の食費(日額)の負担限度額も見直された(図表2)。居住費の負担限度額には変更はない。
なお、今回の見直しにより、補足給付の対象外となる人であっても、将来、預貯金額が減少して認定要件を満たすこととなった場合は、申請により負担軽減の対象となる。

図表1 介護保険施設における補足給付の預貯金要件の見直し 図表2 介護保険施設入所者・ショートステイ利用者の食費(日額)の負担限度額の見直し

「高額介護サービス費」の負担限度額も見直しに

介護保険制度では、介護サービスを利用した際、自己負担割合に応じた利用料を負担することになるが、1か月に支払った利用者負担の合計が負担限度額を超えた分は、払い戻されることになっている。この制度を「高額介護サービス費」といい、その負担限度額は、一般的な所得の世帯あたり月額4万4,400円とされていた(月々の1割負担の世帯の合計額が所得に応じて区分された上限額を超えた場合、自治体への申請により、超えた分が介護保険から支給される)。
前述の介護保険部会の「介護保険制度の見直しに関する意見」では、この高額介護サービス費の自己負担上限額についても医療保険の高額療養費制度における負担上限額に合わせることを求め、今回、負担能力に応じた負担を図る観点から、現行の現役並み所得者のうち、一定の年収以上の高所得者世帯について見直しが行われることになった。具体的に、こちらも今年8月1日以降に利用したサービス分より、図表3のように負担上限額(月額)が変更された。

図表3 高額介護サービス費の負担上限額(月額)の見直し

年収の高い層の自己負担が増えるが、これ以外の市町村民税非課税世帯の人などの負担上限額に変更はない。
介護事業者として、こうした制度の見直しを理解し、利用者が不利益を被らないよう説明できるようにしておきたいところだ。


関連通知

令和3年8月からの介護保険制度の見直しに係る周知への協力依頼について
(介護保険最新情報Vol.985)(5月28日)

8月から実施される補足給付における食費の見直し、高額介護(予防)サービス費の負担限度額の見直しについての周知を依頼。リーフレットやポスターの活用も促している。

令和3年8月からの介護保険制度の見直しに係る周知への協力依頼について

介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて
(介護保険最新情報Vol.997)(7月5日)

ここで紹介した8月からの見直し事項について、自治体に向けて留意事項や利用者負担等に係る事務処理の取り扱いを整理している。

介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて


基準費用額の見直しの経緯

全国老施協が強く訴えてきた介護保険施設の食費の基準費用額の見直しが、今回の令和3年度介護報酬改定で実現した。実現に至るまでの流れを振り返る。

実態にそぐわない額が事業を脅かす要因に

介護保険施設やショートステイの食費・居住費は、所得に応じた負担限度額が設定されており、これと基準費用額(標準的な費用の額)の差額が介護保険から給付される。食費の基準費用額については、実態を反映しないものとなり、事業継続を脅かす一つの要因ともなっていた。介護事業経営実態調査による食費の推移をみれば、材料費等の値上がりもさることながら、調理員等の人件費の高騰が大きいことがわかる(図表4)。

図表4 介護保険施設における食費・居住費の平均的な費用額の推移(令和元年度改定時)

令和元年度介護報酬改定では、8%から10%への消費税率引き上げによる影響分が上乗せされ、食費の基準費用額は月額4万1,952円から4万2,317円に見直されたものの、なお実態を反映したものとはいえなかった。
昨年5月、全国老施協は厚生労働省に要望書を提出し、「食費基準費用額については、実態のコストが投影されていない」と訴え、また介護報酬改定について審議する介護給付費分科会においても委員として参加した小泉立志理事(現副会長)が再三見直しを求めた。こうした要望活動を受け、厚生労働省は令和3年度介護報酬改定において見直しを検討し、食費の日額が1,392円から1,445円に53円引き上げられることになった。