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いつもココロをフラットに

第8回 余計な落ち込みを招く「自己肯定感」の沼

2022.01 老施協 MONTHLY

健康社会学者として多彩な活動を行う河合薫さんが、日々、奮闘する介護現場の皆さんに、応援メッセージを贈ります。

間違った考え方で“聖人沼”にはまる

誰だっていい人でいたいし、優しい人と思われたい。でも、いつもいつもネガティブな感情を抑えられるほど、人の心は単純ではありません。するとたちまちいい人を演じている自分に嫌気がさし、「よっし、今日こそはちゃんと自分の意見を言おう!」と決心する。ところが、いざとなるとダメ。周りが期待するような言動を、つい取ってしまい、変わりたいのに変われない自分に意気消沈。“聖人沼”にはまっていくのです。最近やたらと「自己肯定感」という言葉が使われるのも、沼から出られないジレンマを抱えている人が多いからなのかもしれません。

気になるのは「自己肯定感=自分大好き」と勘違いされがちなこと。「子供の自己肯定感を高めるには褒めて育てろ!」だの「自己肯定感を高めるにはポジティブな言葉を使おう!」だのと言われていますが、本来の自己肯定感は「いいところも悪いところも含め、自分を好きになる感覚」であり、自分自身を受け入れること。むしろ自己肯定感より、健康社会学で「自己受容」と呼ばれる感覚の強化が、聖人沼脱出の鍵を握るのです。

自己受容はわかりやすく言えば、「私はこういう私なのだから、とりあえず折り合って付き合っていこう」と上手にあきらめることです。いい人ぶってるけど、実は辛辣な私。優しい人ぶってるけど実は意地悪な私。できる人ぶってるけど、実は見栄を張ってる私。本来であれば認めたくない「裸の自分」を認め、その上で、半径3メートル世界の人の役に立つことをすれば、自ずと周りから高く評価される人になる。自己受容は誰かに尽くし、喜ばれることで促進され、その結果としてあなたの承認欲求が満たされます。
ダメな自分を知る人は人の痛みもわかる。自己受容の最大の産物は他者に完璧を求めなくなること。私はそれが真の優しさだと思っています。

河合薫・健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行っている。

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