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いつもココロをフラットに

“思い”の伝わる注意の仕方に欠かせないこと

2021.9 老施協 MONTHLY

健康社会学者として多彩な活動を行う河合薫さんが、日々、奮闘する介護現場の皆さんに、応援メッセージを贈ります。

他人に注意する際は、「目的」の共有を意識して。そうすれば人間関係を壊さずにすみます。

共通の目的達成のためなら軋轢は生まれない!?

講演会でいつも受ける質問があります。「相手を傷つけないように注意すると、まったく通じない」という笑えないリアルです。後輩に成長してもらいたい、同僚に厄介者になってほしくないと「ボール」を優しく投げているのに受け取る側は完全にスルー。中にはあからさまに「うっせいわ」という顔をする人もいて、正直凹みます。注意するのって本当に難しい。

とはいえ、私もCAの頃はカップの置き方、声のかけ方、お茶の出し方まであれやこれやとやたらと細かく注意する先輩をウザイと思っていました。そこである時から「そうですね攻撃」に徹することに。「そうですね」と返せば大抵のお小言はやり過ごせます。はなから聞いていないので先輩の“思い”が通じるわけがないのです。

ところがある事件を起こし猛省しました。お客さんの背後からお茶を差し出そうとした瞬間、お客さんの腕がぶつかりお茶が洋服にこぼれ、一つ間違えば大ヤケドをさせかねない事態を招いてしまったのです。先輩の「お客さんの顔を確認してサービスしなさい」というお小言は「良いサービスを提供する」という共通の目的達成のためだった。なのに、個人攻撃されていると思い込んでいたのです。

人間関係を壊さず上手に注意するには、「三項関係」をつくるのがベスト。コミュニケーションの基本は「他者と自分」の二項関係で成立しますが、両者を媒介する「目的=三項」を見つけ、共有し協同作業するのです。そのために「何のために注意するのか?」と、まずは自問。その上で「目的」が後輩や同僚と合致しているか?を確かめてください。時には後輩の目標を聞き、自分の目標にするのもOKです。

同じ方向を見て役立つ情報を提供し、具体的に動けば、心の距離感も縮まります。そして「相手も立派な社会人」という気持ちも忘れずに! 三項関係には上下はありません。

河合薫・健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行っている。

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