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チームのチカラ

【INTERVIEW】村瀬俊朗/早稲田大学商学部准教授

2021.4 老施協 MONTHLY

「チーム力」が求められる介護の現場。今回は、日米で10年以上チームワークやリーダーシップについての専門的な研究に携わる早稲田大学准教授の村瀬俊朗さんに、お互いが信頼して力を発揮するチームづくりのポイントを聞きました。


「心理的安全性」を醸成することで信頼感が育まれ、
創造性の高いチームが生まれる

「心理的安全性」がチーム力を高める リスクを取れる 課題や難問を議論できる 助けを求められる 周りと違うことを否定されない

強いチームには「阿吽の呼吸」あり

チームワークやリーダーシップを長く研究している立場からお話しすると、良いチームとは、メンバー間に自然とお互いが補い合える「阿吽の呼吸」があるものだと考えています。そのような「どんな時でもみんなが自然に動いて、連携がとれる雰囲気」がなければ、強いチームワークを発揮するのは難しくなります。

では、チームに阿吽の呼吸が生まれるようにするには、どうしたらいいでしょうか。

第一には、メンバー同士が役割や仕事の範囲を明確に把握していることが大切です。お互いの仕事内容を知っていることで、自分のやるべきことも見えますし、不測の事態の際、手助けすべき人やタイミングもわかってきます。

もう一つ、阿吽の呼吸を育むうえで特に重要なものが、「心理的安全性」です。

心理的安全性とは、1999年にハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授によって提唱された考え方で、「対人関係のリスクを負うことに対して安全であるという、チームに共有された信念」と定義されています。つまり、「このメンバーでは何を言っても良い」「どのような行動をとっても大丈夫」といった自由で安心できる雰囲気がチーム内で共有されていることです。心理的安全性があることで、多様な意見が出やすくなります。「これを言ったら批判されるのではないか」といった不安もないので、新しいアイデアを果敢に検討できるようにもなります。こうしたことが、創造性の高いチームづくりに結びついていくのです。

心理的安全性をつくるために大切なのは、リーダーの役割です。なぜなら、その姿勢や行動によって徐々に、「メンバー同士の違いや間違いを許容する」感情が定着していくからです。そのためリーダーは、メンバーの意見をまずは否定せず聞くようにしましょう。また、良い意見は実際に行動に移すようにもすべきだと思います。現場のスタッフは、それをメッセージとして受け取り、納得感ややりがいにつながります。そのようなリーダーの行動の積み重ねで、心理的安全性がチームに浸透していきます。

多職種連携では仕事のつなぎ目に注意

介護の現場では、多職種によるチームの役割が重要だと聞いています。介護職と医師や看護師、ケアマネジャーなどとの連携をうまく行う際に注意すべきは、各職域のつながりの部分を意識することです。その部分で「医師はこの担当」「介護職はここまで」というように、お互いが自分の職種の線引きや成果だけを考えると、連携に齟齬が生じます。そうならないように、全体を俯瞰して見られる管理者クラスの方は、連携部分の役割を精査し、可能な範囲で業務を少しダブらせるような工夫をすることも必要ではないかと思います。お互いの仕事・役割を理解し、コミュニケーションをきちんと行うことが大切です。
介護職は、非常に責務の重い仕事です。個人の能力の数倍の力を発揮できるチームづくりに向けて、現場で努力を積み上げていってほしいと思います。

早稲田大学商学部准教授 村瀬俊朗

むらせ・としお
早稲田大学商学部准教授。
1997年に高校卒業後、渡米。2011年、中央フロリダ大学で博士号取得(産業組織心理学)。
ノースウェスタン大学およびジョージア工科大学で博士研究員(ポスドク)を務めた後、シカゴのルーズベルト大学で教鞭をとる。
17年9月から現職。専門はリーダーシップとチームワーク研究