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チームのチカラ

【INTERVIEW】藤重佳久/一般社団法人石見音楽文化振興会音楽研究推進室室長/島根県立大学客員教授

2022.01 老施協 MONTHLY

「チーム力」が求められる介護の現場。今回は、中学・高校などの吹奏楽部の指導者として国内外の多くのコンクールでグランプリに輝き、「カリスマ」と呼ばれる音楽監督・藤重佳久さんに、強いチームをつくるための秘訣やリーダーに必要な心構えを聞きました。


感性を磨き 感受性を育むことが良いチームへの第一歩

自発的な成長を促すアプローチ

笑顔は信頼と活力を生む「心のビタミン」

中学や高校の吹奏楽の指導では、幸運にも多くのコンクールで良い成績を残すことができました。それはあくまで、「どうすれば人の心を動かす演奏ができるか」を追い求めた結果だと考えています。つまり、「ただ高得点を狙うための演奏」ではなく、生徒が楽しんで、自分のベストを出すことが最も大切だということです。

では、どうすれば人を感動させる演奏ができるチームになれるのでしょうか。まず大切にしているのは、生徒(メンバー)との信頼関係です。信頼関係がないと、どのような指導もメンバーに響かず、何より笑顔が出ません。笑顔は、人間同士のつながりを強くし、信頼や活力を生む要。「心のビタミン」です。より多くの笑顔が出るような雰囲気をリーダーはつくっていくべきです。

次に大切なのは、生徒の感性を伸ばすこと。残念ながら今の教育は、情緒を育てず、点数や成績で区分けしてしまうものとなっています。だからこそ私は、困っている人や仲間を自然に「どうしたの?」「大丈夫?」と気遣える、当たり前の感性を身につけていくことを重要視しています。感性が豊かな感受性を育み、人間的な優しさを生みます。それがないと、良いチームにはなりませんし、感動させる演奏もできません。

吹奏楽

偏りなく褒めることで 自発的な成長意欲を高める

生徒との関わりの中では、徹底的に褒めることを意識しています。少しでも上達したら褒める。笑顔が素敵だったら褒める。前日より積極的に練習に取り組んだら褒める。生徒へのアプローチの基本は「認める」「褒める」「励ます」です。

褒めることで、生徒は「見ていてくれる」という安心感を持つことができます。他のメンバーも「この音が良い音なんだ」「この行動が褒められるんだ」と気づくことができます。この気づきがメンバーに広がることで、チーム全体が自発的により良いパフォーマンスをしようと動き始め、「成長し続けよう」という空気も生まれるのです。

ただしリーダーは、褒めるメンバーが偏ってしまうことに注意しなければなりません。1日の中で「この子を褒めた」「あの子は褒めなかった」というムラができて、それが何日も続いてしまうと、「私はこんなに頑張っているのに先生は全然見ようとしてくれない」という不満を抱かせてしまいます。

それを防ぐため、私は時々、部の生徒全員が写っている集合写真を見るようにしています。そうすることで、話しかけていない子や褒めていない子がいないかを常に確認するように努めています。現場のリーダーには、コミュニケーションの偏りをなくすため、ご自身で何らかの工夫をすることをお勧めします。

介護の仕事について私がよく思うのは、「音楽というものをもっと現場に取り入れても良いのではないか」ということです。音楽には懐かしい気持ちを思い起こさせる効果がありますし、喜怒哀楽のさまざまな感情を伝えるのにも適しています。高齢者の意思疎通や心身の活性化に有効な活用法がまだまだあるのではないでしょうか。

藤重佳久/一般社団法人石見音楽文化振興会音楽研究推進室室長/島根県立大学客員教授

ふじしげ・よしひさ
福岡県久留米市生まれ。武蔵野音楽大学卒。1980年、精華女子高等学校(福岡県)音楽科教諭に就任。吹奏楽部顧問として全日本吹奏楽コンクールに19回出場し、金賞を10回受賞。全日本マーチングコンテストに16回出場し、すべて金賞受賞。99年、マーチングショーバンド世界大会でワールドチャンピオンを獲得。2015年、活水女子大学(長崎県)特任教授に就任。活水中学校・高等学校吹奏楽部を初年度から全日本吹奏楽コンクールに出場させ、全日本マーチングコンテストで2度の金賞受賞に導くなど強豪校に育て上げる。21年4月より、一般社団法人石見音楽文化振興会、島根県教育委員会、長崎県大村市教育委員会で吹奏楽指導に携わる。主な著書に『やる気と能力を120%引き出す奇跡の指導法』(ポプラ社)など