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チームのチカラ

【INTERVIEW】 鈴木貴人/アイスホッケー元男子日本代表ヘッドコーチ/東洋大学アイススケート部ホッケー部門監督

2021.12 老施協 MONTHLY

「チーム力」が求められる介護の現場。今回は、アイスホッケー男子日本代表の主将などを経験したレジェンド的選手であり、現在は東洋大学アイススケート部ホッケー部門の監督を務める鈴木貴人さんに、強いチームをつくる秘訣について聞きました。


長所を伸ばし自主性を引き出すのがリーダーの役割

「振り返り」でチームを強くする

長所を常に伝えて自信をもたらす

強いチームをつくるために心がけているのは、選手の良いところを見つけ、それを伝えて伸ばすこと。これは、海外チームでプレーしていたときの経験に基づいています。

学生時代、カナダにアイスホッケー留学をしたほか、社会人になってから選手としてNHL(ナショナルホッケーリーグ:北アメリカのプロアイスホッケーリーグ)の下部チームでプレーしました。そうした海外での選手経験で体感したのが、「長所をほめて気づかせる」という指導法でした。

海外で欧米の選手に比べて身体が小さいことに悩んでいた私に、コーチは「攻撃のスピードが速い」「オフェンス時のゴールに向かう姿勢が素晴らしい」など、主に長所を繰り返し伝えてくれたのです。そのことでとても自信がつき、その後の自分のスタイルを支えてくれる大きな要因となりました。この経験から、私も選手たちに「自分の優れた部分を認識し、伸ばすことが重要だ」と常に話しています。

自信を持つことは、技術的なレベルアップにつながるだけでなく、試合にポジティブに向き合える土台ともなります。これはとても大事なことで、個人の意欲はやがてチーム全体にも伝わっていきます。どのような仕事でも、こうした意欲づけは極めて大切だと思います。

アイスホッケー

「アウトプット」を促し改善点を共有する

チームをまとめるためにもう一つ重要視しているのが、選手の自主性です。指導者はさまざまなテクニックを教えることができますが、実際にプレーするのは選手です。選手が自分で考え、行動できるようにしなければなりません。

選手の主体性を高めるために選手とともに取り組んでいるのは、練習や試合後に全員でプレーを振り返ることです。「何が足りなかったか」「どこが良かったか」「次はどのようにするか」などの問題を提起し、選手同士で話し合ってもらっています。

ただ、今の学生は情報を「インプット」することには長けていますが、意見を面と向かって言ったり話し合ったりする「アウトプット」には不慣れな面があります。特に、メンバー間の意思疎通がうまくいかずに負けた試合の後などは、意見がほとんど出ないことも少なくありません。しかし、そうした時こそ、今後に改良すべき部分を全員で共有するチャンスなのです。しっかりと議論することを指導者として後押しするようにしています。

介護の現場もチームで働く以上、問題点の共有は必要だと思います。

以前、チームのミスや雰囲気の悪さをすべて「自分の責任だ」と考えてしまうキャプテンがいました。介護職の皆さんのなかにも真面目さのあまり、すべてを背負ってしまう人もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、誰か一人がよく動いたからといって、持続可能な良いチームワークは生まれません。現場があまり機能的に動いていないと感じたら、リーダーはぜひ、「このチームの目的はどこにあるのか」といった原点について改めて意思統一を図ってみてください。そのうえで、全員で現状をどう改善していけばいいかを分かち合うことから始めてみたらいかがでしょうか。

鈴木貴人/東洋大学アイススケート部ホッケー部門の監督

すずき・たかひと
1975年、北海道生まれ。東洋大学在学中からアイスホッケー日本代表に選出。99年から15年連続で日本代表として、世界選手権に14回出場。卒業後はコクドに進み、2002年にはアメリカでもプレー。翌シーズンからコクドでプロ契約選手となり、同時に主将も務める。SEIBUプリンスラビッツ、日光アイスバックスなどを経て現役を引退。東洋大学アイススケート部ホッケー部門監督に就任。17年、日本代表ヘッドコーチ。18年からは「Bring Upアイスホッケーアカデミー」を発足させ、小中高生の選手指導やコーチの育成にも携わる