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チームのチカラ

【INTERVIEW】佐藤 壮/ラクロス元女子日本代表ヘッドコーチ

2020.10 老施協 MONTHLY

「チーム力」が求められる介護の現場。今回は、ラクロスの女子日本代表ヘッドコーチとして2度のW杯を戦い、現在は日本ラクロス協会の強化部長として選手育成に努める佐藤壮さんに、チームのメンバー全員がリーダーシップを発揮し組織力を高める考え方などについて聞きました。


メンバー全員がリーダーシップを発揮——
「アメーバ型」組織を構築してチームを強くする

リーダーシップを出し合い分かち合う

ラクロスは1チーム10人で、スティック(クロス)を使って相手ゴールまでボールを運ぶ、チームプレーの球技です。2017年のW杯ではベスト4をめざして戦いました。結果は9位でしたが、その際のチームづくりの方向性は今も間違っていなかったと思っています。
チームづくりにおいて一貫して重視したのが、「シェアード・リーダーシップ」という考え方です。これは「リーダーシップとは、チームのリーダーだけが一人で発揮するものではなく、メンバーそれぞれが出し合い分かち合うもの」という考え方を基本とするものです。
そもそもリーダーシップとは何でしょうか。私は「ピラミッド型」の組織図のように、一人のカリスマが絶対的に引っ張っていくものとは違う考え方を持っていました。すなわち、リーダーシップとは“メンバー全員が持っている固有の能力”だと思ったほうがよいのではないか、ということです。そう捉えれば、試合中に誰もが得意分野でリーダーシップを発揮できます。たとえば、シュートが得意な者は「シュートというリーダーシップ」でチームに貢献する。足が速い者は素早さで、声を出せる者はムードメイクで、チームに好影響を与えればよいのです。
この考え方は、選手それぞれの「得意なこと」を見える化していくことにもつながります。練習や試合を通して皆がお互いをよく見るようになり、「攻撃はあの選手が得意なので任せよう」といった「他者受容」の気持ちも生まれます。
こうした雰囲気ができていくことで、私が考えていた「①目標設定の共有(世界4位以内をめざす)」→「②率先垂範(得意なことを自分から進んで行う)」→「③他者受容・支援(他のメンバーの得意分野を認めて、任せ合う)」という、強いチームをつくるために必要なプロセスを踏むことができたのです。

指導者は選手にとって「壁打ちテニスの『壁』」

選手とのコミュニケーションにおいては、指導者は選手にとっての「壁打ちテニスの『壁』」であることを心がけています。指導者は「何かを一方的に教える」という存在ではなく、選手が自身で練習の質と量を客観的に判断できるように問い返す存在だということです。
ですから、日々の練習のなかでも、まず選手には「今日は何を鍛錬したいか?」と、その日の目標を聞きます。そのうえで、「パスワークを磨く」など、そこに至るプロセスと到達点を一緒に決め、あとは自発的に練習をしてもらうようにします。指導者として、そうしたプロセスにつき合い、「目標ができたか、できないか」「どうすればもっとできるようになるか」など、成果に対するディスカッションを重ねながら、選手個人が自分で気づくように導いていくわけです。
指導者はメンバーの目標設定を手伝い、振り返りや反復に伴走する存在であることが求められます。介護の世界でも、こうした関わり方が重要なのではないでしょうか。

撮影:海藤秀満

さとう・たけし
1976年、埼玉県生まれ。立教大学男子ラクロス部を経て、2002年から同大学女子ラクロス部のヘッドコーチを務める。2009、17年W杯で女子日本代表ヘッドコーチとして世界と戦う。15年には、22歳以下女子日本代表ヘッドコーチとして「第7回APLUアジアパシフィック選手権大会」に優勝するなど、日本ラクロス界の実力の底上げに尽力。現在は、立教大学女子ラクロス部監督を務める傍ら、日本ラクロス協会強化部長として選手の育成にあたる