特集

特集記事

「介護給付費分科会」リサーチ

事業者団体ヒアリングを実施
報酬アップ、加算新設を求める声相次ぐ

2020.9 老施協 MONTHLY

新型コロナウイルス感染症が収束に至らないなか、厚生労働省は令和3年度介護報酬改定に向けた社会保障審議会介護給付費分科会の議論を急ピッチで進めている。8月3日、19日には、議論の参考とするため関係事業者団体へのヒアリングを実施。各団体は新型コロナウイルス感染症への対応や人材不足の厳しい状況を訴え、処遇改善を求める声を上げた。
本特集では、各団体が具体的にどのようなことを要望しているかを紹介し、今回のヒアリングから見えてきたこと、次期報酬改定への影響として予想されることを整理した。


訪問介護の倒産件数が増加 危機的な人材不足を訴える

第1回目のヒアリングでは、在宅系サービスを提供する事業者団体や専門職の代表団体が意見を述べた。
日本ホームヘルパー協会は、株式会社東京商工リサーチが1月に公表した2019年度の老人福祉・介護事業の倒産状況に触れ、訪問介護の倒産件数が58件と急増したことに言及。人材不足が危機的状況にあることを訴えたうえで、サービス提供責任者が、訪問業務に多くの業務時間を取られ、法で定められた業務がまっとうできていないとし、退院・退所時や緊急時などのカンファレンスに参加した場合や、ターミナルケアのために利用者宅を訪問して心身状況の確認・サービス提供を行った場合の加算の新設を求めた。
全国訪問看護事業協会は、中重度者の在宅療養を支える訪問看護の提供体制の拡充と質の高い訪問看護の評価(診療報酬との齟齬の解消)を訴えた。
全国介護事業者連盟は、加算体系やサービス種別を再構築し、介護保険制度をシンプルにすることにより利用者がサービスを選択しやすい情報や判断基準を示す必要があるとした。また、地域密着型サービスについて、利用者が市町村に限定されているため、県境や市境近くで運営している事業所に不都合が生じていると指摘し、枠組みの見直しを求めた。
指定権者におけるローカルルールの撤廃が必要と述べたのは、24時間在宅ケア研究会。定期巡回・随時対応サービスの可能性について述べ、人材不足に対応するためには、不要なローカルルールをなくし、人材の有効活用を図ることが必要だと指摘した(図表1)。

経営協、特養の34.9%が赤字 基本報酬増額を求める

全国社会福祉法人経営者協議会は、特別養護老人ホームの34.9%が赤字、定員30床の特別養護老人ホームの約半数が赤字という同協議会による調査結果を示し(図表2)、経営基盤強化のため基本報酬の増額の必要性を訴えた。

日本福祉用具・生活支援用具協会は、居宅への有効なロボット、センサー、新たな福祉用具の導入促進を、日本福祉用具供給協会は、特定施設入居者生活介護の利用者を福祉用具貸与の給付対象とすることを求めた。また、両団体とも福祉用具貸与価格の上限設定の制度について適正な運用などを要望している。
全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会は、軽度から重度まで一貫して在宅で支えることができるような基本報酬の見直しを、全国個室ユニット型施設推進協議会は、個室ユニット型の推進につながる改定を求めている。
日本栄養士会は、管理栄養士の配置により特養での入院が有意に抑制されたデータを示した(図表3)。これに基づいて、介護保険施設における栄養ケアの推進と業務の適正な評価を要望している。

日本リハビリテーション医学会、日本リハビリテーション病院・施設協会、日本訪問リハビリテーション協会、全国デイ・ケア協会などからなる全国リハビリテーション医療関連団体協議会は、退院後、通所リハビリテーションを利用開始するまでの期間が短いほど機能回復が大きい傾向がみられた調査結果を示し(図表4)、退院前カンファレンス参加加算の新設を要望した。また、専門職配置や加算算定率等を基準化した総合的報酬体系の構築も求めている。

日本理学療法士協会、日本作業療法士協会、日本言語聴覚士協会が構成するリハビリテーション専門職団体協議会は、地域包括ケア構築に向けた課題解決として、理学療法・作業療法・言語聴覚療法の提供体制の地域格差の是正を提案した。
なお、介護給付費分科会には、全国老施協から小泉立志理事が委員として参加しており、この日、基準費用額の見直しについて、全国社会福祉法人経営者協議会に対し「会員から挙がった具体的な意見を教えてほしい」と求めている。

サービス担当者会議にICT活用を認めるべき

2回目のヒアリングは8月19日に実施された。
日本認知症グループホーム協会は、地域の多様な関係者と連携し、複数の認知症地域支援に取り組むなど認知症の人にやさしいまちづくりに積極的に貢献している事業所に対する認知症ケア拠点加算や医療連携体制加算の実績要件(喀痰吸引、経鼻胃管や胃ろう等の経腸栄養)の拡大を要望したほか、早期退院をめざすには、入院時から退院を見越した医療機関との連携を図ることが重要との実績データを示し(図表5)、居宅介護支援に認められている入院時情報連携加算の適用を求めた。

日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会による四病院団体協議会は、新型コロナウイルスに備えた対応について意見を述べた。具体的に、介護職員が不足した時に介護職員を派遣できるシステムづくりを求めたほか、感染拡大を踏まえて臨時的に認められている、居宅介護支援のサービス担当者会議をオンラインで実施できることについて、通常の状態でも「オンラインで実施」できるようにすることを提案した。また、生活機能向上連携加算の活用促進のため介入する事業者(病院や通所リハビリ事業所)への加算の創設、通所介護のアウトカム評価(ADL維持等加算)について単位数を上げることなど、適切な評価を要求した。
全国軽費老人ホーム協議会は、特定施設も入院時費用加算の対象とすることや、施設機能強化推進の拠点加算の新設を求めた。小泉理事は、栄養スクリーニングへの要望があったことを踏まえて、「栄養マネジメントの取り組みも考えられるのではないか」との充実への意向を質した。

有老やサ高住の団体「集住」のメリットを強調

有料老人ホームや介護付きホーム、サービス付き高齢者向け住宅などが加盟する高齢者住まい事業者団体連合会は、特定集中減算について利用者が選択したものについてまで行うべきではないと主張。併設介護事業所による集合住宅居住者への効率的なサービス提供を適切に評価すべきとして、後期高齢者の住まいとして「集住」のメリットを強調した。
有料老人ホームや介護付きホーム、サービス付き高齢者向け住宅は近年、急速に定員数を増やしている。厚生労働省も介護保険事業(支援)計画策定において、こうした実態を見過ごせず、第8期介護保険事業(支援)計画の基本指針では、有料老人ホームとサ高住の設置状況が勘案されることになっている。介護保険施設にとって、地域におけるこれらの施設との「共生」も喫緊の検討課題だ。

医療等との連携を評価する加算の充実が検討項目に

2回にわたるヒアリングでは、人材不足や経営状況の厳しさに加えて新型コロナウイルスに関する発言も目立ち、感染拡大防止に関連づけて非接触という観点からICT(情報通信技術)の導入促進に言及する団体もあった。新型コロナの影響については当然、考慮されてしかるべきであり、どのように審議の取りまとめに盛り込まれるかが注目される。
また、ヒアリングで複数の団体が言及したことに、生活機能向上連携加算、入院時情報連携加算の対象拡大、退院前カンファレンス参加加算の新設などがあり、これらは今後検討されるものと思われる。
ヒアリングの内容は、年末に予定される審議の取りまとめに向けた議論の参考とされる。新型コロナウイルス感染症という新たなリスクに対応し、利用者および職員を守っていくため、全国老施協は引き続き、処遇改善などについて思い切った決断を国に対して求めていく。

国に対し、皆さんの声・意見を届けます