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チームのチカラ

【INTERVIEW】宇津木妙子/女子ソフトボール元日本代表監督

2020.8 老施協 MONTHLY

「チーム力」が求められる介護の現場。女子ソフトボールの日本代表監督としてチームを2000年シドニー五輪で銀メダル、04年アテネ五輪で銅メダルに導いた宇津木妙子さんに、“勝てる集団”づくりの秘訣を聞きました。


メンバー一人ひとりの「個性」を把握し、それぞれの「役割」を明確にすることでチームの勝利につなげる

共通の目的意識のもと個性に合った指導を工夫

ソフトボールにおいて強いチームをつくるポイントは、選手たちに、チームに対する「共通の目的意識」を持ってもらうことです。日本代表監督に就任したときに私がまず話したのは、「日本の代表としての自覚を持つ」「ソフトボール界のために全力でやる」といった、基本的な心構えについてでした。それを身につけるためには、「挨拶」や「時間厳守」、「気配り」など、「人としての当たり前のこと」の励行が大事であるとも説きました。そうした、しっかりとした自己認識が、強いチームのベースになると考えています。
監督と選手がお互いの個性を知り合うことも重要です。日本代表監督に就任した当初は、私という監督の思いや気性、やり方を知ってもらうことから始めました。次に、選手には「性格分析ノート」を書いてもらい、家族関係や血液型、長所や短所など、一人ひとりの個性を知るようにしました。それをもとに、「叱ってよい性格か」「どのぐらいの実力か」などを見極め、各選手に合わせて声がけの仕方も変えました。だからこそ、お互いの信頼感が生まれたのだと思います。
さらに気をつけたのは、選手を見る場合に、誰かひとりに偏らないこと。選手はみな「自分だけを見てほしい」と思いがちですから、監督はえこひいきなく指導しなければなりません。私は、ノックを行いながらも、目の端でバッティング練習も観察するなど、全体と細部を同時に見るよう心がけました。そのような繊細な対応が選手のモチベーション向上につながっていきます。
こうしたことは、会社は無論、介護の現場でも当てはまることでしょう。トップに立つ人間は、働く部下たちをしっかりと見て、それぞれの個性に合った指導を工夫することで、自らの思いを隅々まで行き渡らせることができるのです。

適材適所の配置が勝てるチームをつくる

勝てるチームづくりには、選手がそれぞれの役割をきちんと把握し、全うすることも大切です。ソフトボールは個人の能力をうまく発揮するだけでなく、それをチームの勝利にもつなげなければならないスポーツだからです。そのため、私は選手個々に、打順やチームのなかでの役割を事前にしっかり告げるようにしています。「一番バッターだから、なんとしても塁に出ろ」とか「走塁で揺さぶれ」など、選手それぞれに適材適所で働いてもらうことが、チームの強さにつながるのです。
上野由岐子投手や宇津木麗華選手(現日本女子代表監督)など、スター選手の活躍ももちろん必要ですが、周りがいてこそ彼女たちも輝ける。ですから、選手には「全員にチャンスと見せ場がある」と伝えています。
介護の現場でも連携が必要ではないでしょうか。その場でひとりだけ突出した活躍をしていても駄目で、それぞれが能力を発揮し、協力して高齢者の生活を支えることが求められると思います。大変な仕事でしょうが、心からのエールを送りたいです。

うつぎ・たえこ
1953年、埼玉県生まれ。中学校からソフトボールを始め、高校を経てリーグ1部のユニチカ垂井へ。74年、世界選手権出場。現役引退後、日立高崎(現ルネサス高崎)の監督に就任し、チームを優勝に導く。97年、日本代表監督となり、2000年シドニー五輪で銀メダル、04年アテネ五輪で銅メダル獲得。日本代表監督退任後はNPO法人ソフトボール・ドリームを設立。現在は後進の育成や競技の普及に尽力。05年、日本人初となるISF(国際ソフトボール連盟)殿堂入りを果たす