特集

キラリ施設紹介

社会福祉法人昭徳会 ケアハウス高浜安立

2020.8 老施協 MONTHLY

本人の希望に寄り添う最期の実現に向けて、
「看取り」を実施

ケアハウスでは例の少ない「看取り」を実施。施設全体でさまざまな課題に取り組みながら、入居者の望む最期を実現するために模索を続けています。 月に1回 名古屋市にある大乗山法音寺のお上人様から法話をいただいている

自立・要介護を問わず安心して暮らせる施設

愛知県高浜市に、社会福祉法人昭徳会が運営する軽費老人ホーム「ケアハウス高浜安立」があります。同施設の特徴として、ケアハウスでは珍しく、「看取り」を行っていることが挙げられます。試行錯誤しながら一つひとつ経験を重ね、看取りへの対応力を向上させてきました。その成果を2019年度全国老人福祉施設研究会議(愛媛会議)で発表した介護職員(グループリーダー)の中平博敏さんは、「少しでも、ケアハウス運営にかかわっている方々の参考になればと思っています。私たち職員の取り組みが評価されて本当にうれしく、自信にもつながりました」と話します。 同施設は、定員50人の一般型(自立型)ケアハウスとして1996年に開設。2010年に一部を特定施設入居者生活介護に転換し、現在は一般型20人、特定型(介護付き)30人が入居する、自立した人と要介護5など介助が必要な人が混在する混合型のケアハウスです。 施設長の鵜芦由未子さんは、「以前は、介護が必要になると別の施設に移ってもらっていました。そうした負担や葛藤を減らしたいとの思いから、特定型を加えました。住み替えることなく安心して暮らせるケアハウスであると自負しています」と強調します。 実際、入居者はケガや病気で入院すると、「早くケアハウスに帰りたい」と希望する人が多いそうです。「私たちが最も大切にしているのは、その人らしく暮らせることです」と鵜芦さん。そのための取り組みとして、本人が一番元気だった昭和時代の思い出を語り合って記憶を刺激し認知症などの予防を図る「回想法」や、音読や計算などの教材を用いた「学習療法」を実践しています。また、各種クラブ活動や、地域とのかかわりを目的としたイベントなどたくさんの活動を通じて、入居者と定期的にコミュニケーションするなど細やかな対応に努めており、こうした姿勢は入居者からも高く評価されています。

「ここで最期を迎えたい」本人の希望で看取りを開始

同施設で看取りの取り組みを本格化させていった2つのケースを紹介します。 最初の事例は、特定型をスタートさせた直後に、夫婦で入居していた人(男性)が悪性リンパ腫で余命宣告を受けて帰ってきたというものでした。「ここで最期を迎えたい」という本人の希望に応えるために、戸惑いながらも最初の看取りケアをスタートさせました。以前に法人内の特別養護老人ホームで看取りを経験していた中平さんは、「ケアハウスでは職員の看取りの経験値が少なく、相談できる体制も整っていない状況でした。また、奥さまが介護の様子を24時間見ている環境も、特養とはまったく異なる体験でした」と振り返ります。 不安を抱えるなか、できる限り奥さまと過ごす時間をつくりつつ最期を見送りたい。そのためにも職員の早急なスキルアップが課題となり、勉強会などで学びながら看取りを進めました。 入居者は自分の部屋で自分らしく過ごす。職員は、引きこもることのないように工夫し、声をかけたりすることも

がん患者の看取りで大きな一歩を踏み出す

大きな転機となったのが、ケアハウスで生活を楽しんでいた入居者(男性)が急に体調を崩し、胃がんと診断された、2つ目のケースです。口からの食事が難しく、IVH(中心静脈栄養)と医薬用麻薬の管理が必要となりました。 栄養士や看護師たちは受け入れに賛成する一方で、介護職員は強く反対するなど、意見が分かれたのです。「とことん話し合いました。知識や経験不足からの不安による反対だということがわかり、まずは勉強してみようと力づけました」と、中平さんは話します。 これを機にIVH勉強会を開き、マニュアルも作成したことは、本人の要望に寄り添うための大きな一歩を踏み出せた瞬間でした。「いろいろな方法があり、正解がないのが看取りです。徹底的に話し合って取り組むようになりました」。介護職員はいつも入居者の一番近くにいるからこそ本人の代弁者になり得る、という意識が芽生えるきっかけにもなったといいます。

看取り体験を通して職員の意識も変化

同施設ではこれまで、70代から102歳まで17人の入居者を看取っています。これらの経験を通して、「食べたいものを食べてもらうための工夫」や「家族が施設に泊まり、一緒に過ごす時間を増やす」など、できることを増やしていきました。 看取りをすると、施設からの出棺を入居者や職員が見送ります。体験するうちに次第に「私もここで最期を迎えたい」という入居者が増え、職員も「本人が望むなら、積極的に受け入れよう」と意識が変わっていったそうです。 ご家族からも「いい最期が迎えられました」と言ってもらえることが増えました。一方で、本人と家族の意向が合わなかったり、本人の希望に沿えず病院で亡くなられた人もいます。「看取りで大切なのは、ご家族との連携です。家族関係が希薄なケースへの対応力を強化する必要があります」と、中平さんは今後の課題を語ります。 元気なうちに本人や家族などの意向を聞いておく「アドバンス・ケア・プランニング」にも力を入れ始めています。「まだ本人は、最期のことについて考えたくないという傾向が強いです。看護師を中心としたチームを結成し、職員が一丸となってスムーズに聞く方法を模索しているところです」と、中平さんは説明します。 本人の希望に寄り添い、後悔のない看取りを実現するための取り組みは、まだまだ試行錯誤が続きます。

社会福祉法人昭徳会
ケアハウス高浜安立

一般型(定員20人)、特定型(定員30人)
愛知県高浜市芳川町1丁目2番地48号
TEL:0566-52-7311 FAX:0566-52-8680
URL:http://www.syoutokukai.or.jp/carehouse/