特集

チームのチカラ

【INTERVIEW】和田雄策/全日本空輸株式会社 B787機長

2021.10 老施協 MONTHLY

「チーム力」が求められる介護の現場。今回は、強固なチームワークや非常時での冷静な対応が求められる航空機運航の現場を取り上げます。全日本空輸株式会社の和田雄策機長に、チームワークにおいて必要なことや命に関わる現場でのリスク対処法などを聞きました。


安全を脅かす事柄を事前に把握し 瞬時のトラブル対応に活かす

安全を脅かす事柄を事前に把握し 瞬時のトラブル対応に活かす

「手順の確認」を重視しメンバー間の信頼感醸成

私たちパイロットは、安全で快適な飛行を行えるよう、グランドスタッフや整備担当者、CA(キャビンアテンダント)など、多くの専門職と連携しています。通常、一つのフライトで集まるメンバーは、初対面の場合が多く、お互いをよく知らないことがほとんどです。
そうしたチームにおいて私が重要視しているのは、すべての作業において「標準的に定められた手順」(SOP/Standard Operating Procedures)をおろそかにしていないかということです。SOPは運航の基本であるがゆえ、仕事への姿勢がにじむもの。手順のいくつかを「初歩的なこと」と飛ばしたり、質問に対する答えが曖昧なものだと、信頼関係は築けません。よく知らない者同士だからこそ、そうした基礎的なことをないがしろにしてはいけないのです。
こうした考え方は、介護など他の仕事の現場でもとても重要ではないでしょうか。

全日本空輸株式会社 B787機長 和田雄策

経験値や感覚に頼らない研修システムの確立へ

介護現場と同様、お客様の命を預かるフライトには、重大なミスやトラブルがあってはなりません。万が一に備え、私たちパイロットはTEM(Threat and Error Management)という考え方を用いています。
これは、安全性を向上させるための有効な方法を体系化したもので、トラブルに対する普段からの対応の大切さを示しています。具体的には、①「事前にThreat(スレット╱フライトの現場でエラーを誘発する脅威や要因のこと)を探し出し、脅威を抽出しておくこと」が第一のポイントです。いざという時のことを普段から想定しておくことで、余裕を持って対処できるよう準備しているのです。次に、②「いち早くスレットを予測し、それを取り除く」。予測するだけでなく、瞬時に反応することも訓練します。そして、③「スレットに正しく対処し、ミスを最小限に防ぐ」。トラブルに対する的確な対応力を磨きます。
TEMの考え方では、スタッフの意識とともに、システム自体を向上させていくことも大切で、そのためにSOPを絶えず見直していくことが欠かせません。たとえば、スレットが起こりやすい事項は複数のスタッフがダブルチェックするなど、初歩的な手順を改善していくことも、トラブルを減らしていく方法の一つです。
スタッフのスキルを充実させ、チームワークをつくるための研修システムも重要です。弊社で今めざしているのは、講師の経験値や感覚などに依らない、均一な訓練をシステマティックに行える研修体系の確立です。従来は、講師のキャラクターや熱意などに頼りがちだったスキルの伝達をシステム化することで、効率的にモチベーションを高められる研修づくりを模索しています。
旅客機の機内でお客様と最前線で接するのはCAですが、介護職の皆様も同じく「人対人」の仕事に取り組んでおられます。CA同様、いつも「人の立場に立って考えることの大切さと難しさ」を実感されていることと思います。そうした現場で日々奮闘されている介護職の皆様には、いつも頭が下がる思いです。

全日本空輸株式会社 B787機長 和田雄策

わだ・ゆうさく
フライトオペレーションセンター品質企画部AQP(ADVANCED QUALIFICATION PROGRAM)チームリーダー。B787機長。
1967年11月、広島県生まれ。明治大学政治経済学部卒業後、90年、全日本空輸(株)入社。自社養成訓練生。94年11月、B767副操縦士昇格。98年4月、B777に移行。2003年11月、B777機長昇格。14年4月、品質企画部訓練推進チーム配属。2021年4月、品質企画部現AQPチーム配属