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チームのチカラ

【INTERVIEW】大八木弘明/駒澤大学陸上競技部監督

2020.7 老施協 MONTHLY

「チーム力」が求められる介護の現場。大学駅伝界で“平成の常勝軍団”を築き上げた駒澤大学陸上競技部の大八木弘明監督に、“勝てる集団”づくりの秘訣を聞きました。


リーダーの「本気」と「気づく力」が、強いチームをつくる。
日々、ひとつでも何か新しい試みを

メンバー個々に合った声がけで実力を伸ばす

駅伝は、選手が襷をつないでいき、チーム力で雌雄を決するスポーツです。そうした競技の監督として心がけているのは、それぞれの選手に真剣に向き合い、「全身全霊で見守る」「本気で強くする」という思いで声がけをすること。そうすることで、チーム全体の意識も高めていけると信じています。
ただし、声がけは、選手のコンディションやその時の課題にしっかり沿ったものであることが肝心です。いくら叱咤激励しても、その時の選手の状況に対して的外れなものだったら意味がない。そのためにも、とことん選手を見て、「顔色が悪い」「やる気がない」など、些細な変化に気づくことが重要です。マラソン元日本最高記録保持者で、教え子の藤田敦史(現・駒澤大学陸上競技部コーチ)が学生時代に低迷していた際、原因が貧血であると見抜けたのも、きちんと選手を見つめていた結果でした。これは駅伝だけではなく、いろいろな組織に当てはまると思います。リーダーは、メンバーの気持ちをしっかり把握し、適切な声がけをすることを重視すべきなのです。
チームの上級生と下級生で違った言葉がけをすることもあります。下級生には「先輩を追い抜く気持ちで走りなさい」と言い、上級生には「実力半ばの選手を引き上げてやれ」などと告げる。そうすることで、チームというものを意識するよう誘導していくわけです。そうしたことを考えながら、「そこで踏ん張らなくてどうする!」「男だろ!」といった檄も飛ばすので、選手がさらに頑張れるスイッチが入るんだと思います。

日々の“新化”こそ強くなるチームの秘訣

チームが強くなるためには、各人が自分なりに進歩していくことも欠かせません。我が部の今年のチームテーマは「原点と新化」だと、選手たち自身が決めました。原点とは、初心を常に忘れないこと。そして、新化は、日々の練習のなかで、何かひとつ、小さなことでも新しく取り入れていく大切さを表しています。
新化は大事です。日々のルーティンに甘んじず、練習メニューや順番を少し工夫してみたり、空き時間を有効利用したりと、見直す点はいくらでもあります。練習を離れても、「下級生に気配りをする」「チームに対してできることを常に考える」といった気持ちの面の変化をもたらします。介護の世界でも、「昨日より今日の作業をより良くしよう」と心がけたり、高齢者への声がけを見直してみたりと、この考え方が応用できるのではないでしょうか。
私は20年来、選手を「見て」「育て」「活かす」ことを重要課題に監督を務めてきました。そのうえで選手の成長に伴走し、結果を出すことが何よりの喜びです。同様に介護も、高齢者の健康や幸せを守る伴走者。これからも絶対必要な仕事だと思います。

おおやぎ・ひろあき
1958年、福島県生まれ。会津工業高校卒業後、小森印刷機械株式会社(現・株式会社小森コーポレーション)に就職、実業団駅伝などで活躍後、退社。川崎市役所に勤務しながら24歳で駒澤大学経済学部第2部(夜間部)に入学。箱根駅伝に出場し、1年時に5区で、3年時に2区で区間賞。卒業後は、実業団を経て、95年から駒澤大学陸上競技部コーチ。2004年に監督に就任。箱根駅伝の総合優勝6回を含め、大学三大駅伝で20回以上の優勝を飾るなど「常勝チーム」を指導する