特集

キラリ施設紹介

社会福祉法人仙台市社会事業協会 養護老人ホーム 仙台長生園

2020.7 老施協 MONTHLY

触法高齢者の受け入れを通じて
「人」に注目した支援の重要性を学ぶ

開設して82年。地域の高齢者施設の草分けであり、「自立を促し、自主性を尊重し、社会性を伸ばす」を方針に掲げ、利用者一人ひとりに合わせた支援を行っています。


談話室での日常の一コマ。右側のテーブルでは、利用者が塗り絵の活動に取り組んでいる

さまざまな社会的課題を抱える利用者に対応

養護老人ホーム仙台長生園を運営する社会福祉法人仙台市社会事業協会は、救護法が制定される前年の1928年、困窮する高齢者を支援するため、篤志家により設立されました。仙台長生園は38年に仙台市内初の高齢者施設として開設されました(63年に養護老人ホームに移行)。
同協会の支援の範囲は高齢者にとどまらず、戦前から戦後にかけては保育園や母子生活支援施設、戦争未亡人の職業訓練用の理容術補導所(現在の仙台理容美容専門学校)などを運営。その後、昭和、平成と時代の変遷と福祉制度の拡充に伴い支援内容を広げ、現在は「いつも希望を、もっと笑顔を、ずっと安心を実現したい」を基本理念に、特別養護老人ホームやデイサービス、グループホーム、地域包括支援センターなども展開しています。

書道、生花、民謡、焼き物、折り紙等のサークル活動を実施。写真は焼き物サークルでの作品

養護老人ホームは、環境や経済的な理由により居宅で過ごすことが困難な人のための措置施設です。同園の佐藤文彦園長をはじめ、総勢70人の職員たちは、これまでさまざまな社会的課題を抱える利用者の支援に携わってきました。
「たとえば身体的な介助が不要でも、精神的な疾患などで見守りが必要な方や、身元引受人がおらず介護施設への入所が困難な方、虐待から避難されてきた方……。養護老人ホームは支援を必要としているにもかかわらず、介護保険の網目からこぼれ落ちてしまう人の受け皿になっています」と、取り組みを主導した副園長の小船順子さんは話します。


支援が必要な人に偏見なく手を差しのべる

こうした施設の性格上、それまでも罪を犯した触法歴を持つ利用者を支援してきましたが、2009年に矯正施設を退所した高齢者・障害者を福祉サービスにつなげる地域生活定着支援センターが各都道府県に設置されたことで、触法高齢者の受け入れの相談が入るようになりました。受け入れに対し不安を口にする職員も多いなか、触法者の社会復帰の手助けをする保護観察官らを講師に招き、何度も勉強会を行いながら、職員全体で理解を深めていったのです。
以来、同園では窃盗、詐欺、覚せい剤売買といった経歴を持つ10人以上の高齢者を受け入れました。そのうちの一人が、2014年に入所相談があった77歳の男性Aさんで、罪状は強盗・殺人・死体遺棄(計画を立て犯行現場に立ち会った。主犯であるが実行犯ではない)。無期懲役で38年服役し、仮出所してきたAさんの受け入れにあたり、職員は「殺人」という罪状の重さに動揺したといいます。

副主任介護士の岡崎美佳さんは当時の様子について、「受け入れ後にほかの利用者とトラブルがあったら、私たちで対応できるのか。偏見を持たずに接することができるのか。そもそも、触法歴のある高齢者の支援は介護の仕事なのか。職員一人ひとりに不安や葛藤など、さまざまな思いがありました」と振り返ります。
Aさんの入所を前に、職員向けの勉強会が開かれました。「重い罪状を聞いて、乱暴で何かトラブルを起こすのではないかと恐ろしさを感じたのは事実です。でも、私たち養護老人ホームの職員には、福祉の支援が必要な人に手を差しのべるという使命があります。改めて、それを理解してもらうために、勉強会を開く必要がありました」と、小船さんは説明します。
そんなある日、Aさん本人から同園に手紙が届きました。罪を償って誠実に生きようとしていること、自分の受け入れを決めた園・職員に対する感謝の言葉……。丁寧につづられた肉筆を目にしたことで、職員の気持ちに変化が表れ、「きちんと罪と向き合ってきた人なんだ」と、好意的な意見が聞かれるようになったそうです。
実際、入所後のAさんはいつも穏やかで、ほかの利用者とのトラブルもなく、すぐに同園の生活になじみました。岡崎さんやほかの職員にとって、Aさんは同じ利用者の一人であり、「触法高齢者」という認識は徐々に薄れていきました。Aさん自身も「園での生活を楽しく幸せだと感じる一方、自分がこのような思いをしてもいいのかと感じ、被害者や被害者遺族のことを考える時間が増えた」と、自らの変化を語ったといいます。

「罪」ではなく「人」を見ることが大切

この経験を通して、「触法高齢者に限らず、誰であっても、人を支援することに変わりはない。職員にそうした気持ちの変化が起こりました」と、岡崎さんは強調します。それを踏まえ、「罪ではなく人に注目することの大切さを、養護老人ホームの関係者に伝え続けたいと思います。新しい職員にも勉強会を行い、不安や葛藤を軽減できるようにサポートしながら、人として分け隔てなく利用者を支えていきたいです。たとえ罪を犯した人でも、罪を責める側ではなく、その人を支える側であり続けたいと思います」と抱負を語ります。
小船さんは、養護老人ホームが抱える課題として定員割れの現状を指摘し、支援の手が届いていない人がいるのではないかと危惧しています。同園では定員150人に対し、現在の入所者は120人です。「行政機関や地域包括支援センターと協力しながら、必要な人に支援が行き届くように働きかけをする必要があります。困難なケースであったとしても、できる限り私たちは受け入れます。それが養護老人ホームの存在意義ですから」と力強く話します。

社会福祉法人仙台市社会事業協会
養護老人ホーム 仙台長生園

養護老人ホーム(定員150人)
TEL:022-271-7255 FAX:022-271-7220
URL:http://www.fukushi-sendai.or.jp/
(社会福祉法人仙台市社会事業協会)