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11月11日は「介護の日」

今、私たちだからこそできること

2021.10 老施協 MONTHLY

今年も11月11日の「介護の日」が近づいてきた。国民全員が介護を身近なものとして捉え、それぞれの立場で介護を考え、関わっていくきっかけとするために制定されたもので、介護の意義を考え、その魅力を発信する多くのイベントが全国で開催される。多忙な日々を送る介護事業者だが、超高齢社会を見据え、この日を「自分たちに何ができるのか」「何をすべきか」を改めて考える機会としたい。

Part1

介護の魅力、素晴らしさを広める日

「介護の日」が制定された理由や意義、位置づけを振り返るとともに、介護人材確保の最新見通しを紹介する。

介護に関する国民への啓発を重点的に展開する日

高齢化などにより介護を必要な人が増加するとともに、介護にまつわる課題が多様化している。福祉・介護分野は、最も人材確保に真剣に取り組んでいかなければならない分野となっており、そのためにも福祉・介護サービスが、働きがいのある職業として社会的に認知され、特に若い世代から魅力ある職業として選択されるようにしていく必要がある。
厚生労働省は、介護についての理解と認識を深め、介護サービス利用者とその家族、介護従事者等を支援するとともに、これらの人たちを取り巻く地域社会における支え合いや交流を促進する観点から、2008年7月、高齢者や障害者等に対する介護に関し、国民への啓発を重点的に実施する日として11月11日を「介護の日」とすることを発表している。
ちなみに、11月11日はパブリックコメントで最も賛意を得られた日にちであり、「いい日、いい日、毎日、あったか介護ありがとう」を念頭に、覚えやすく、親しみやすいよう、「いい日、いい日」にかけたものとなっている。

福祉人材確保・定着を図る重点実施期間を設定

「介護の日」を含めた2週間(11月4日〜17日)は「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」に基づく取り組みの一環として、「福祉人材確保重点実施期間」に位置づけられている。
例年、この期間中は、福祉・介護について理解を深めるとともに、福祉人材の確保・定着を図るため、厚生労働省、福祉人材確保重点実施期間推進協議会、都道府県、指定都市、中核市、市町村、特別区、関係機関・団体、事業者などが連携して、全国各地で広報・啓発活動や福祉人材の交流などのイベントを実施している。
福祉人材確保重点実施期間推進協議会は「福祉人材確保重点実施期間」の趣旨・目的に賛同する福祉・介護分野の関係団体によって構成される組織であり、福祉人材確保に係る普及・啓発、福祉人材の確保・定着に努める。地方自治体は福祉人材確保重点実施期間をより意義のあるものとするため、各種広報活動により地域住民の福祉・介護についての理解と認識を深め、福祉人材の確保・定着の促進に努めるとされる。
また、厚生労働省はポスターやチラシの配付、同省ホームページや月刊誌・週刊誌などを活用した広報により、福祉人材確保重点実施期間を全国にアピールし、福祉・介護の意義や重要性について周知・啓発活動を行うとともに、福祉人材の確保・定着を促進するための事業を実施する。
今年も福祉人材確保重点実施期間中、全国各地でイベントなどが行われる(8〜9ページ参照)。福祉・介護を担う事業者としても趣旨を理解し、積極的に協力したい。


SCOPE「介護人材確保の最新見通し」

厚生労働省は介護職員の必要数の見通しをとりまとめて公表し、あわせて総合的な介護人材確保対策を示した。特に大都市部における将来の人材不足は注視が必要だ。

厚生労働省は7月9日、「介護サービス施設・事業所調査」で、第8期介護保険事業計画(2021〜23年度)の介護サービス見込み量に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数を公表した。
全国の2019年度の介護職員数は約211万人で、前年度より7万人増加し、初めて200万人を突破した。2025年度には約243万人、2040年度には約280万人が必要となると推計しており、2025年度までは毎年5万3,000人を確保しなければ約32万人不足、2040年度までは毎年3万3,000人を確保しなければ約69万人が不足するとしている。

図表

都道府県別に2040年度の介護職員の必要数を見ると、最も多いのは東京都の26万3,741人で、次いで大阪府の23万5,608人。最も少ないのは鳥取県の1万3,256人で、次に福井県の1万3,466人。また、推定される介護職員とのギャップ(不足数)が最も多いのは東京都の7万2,338人で、次いで大阪府の6万7,539人。最も少ないのは高知県の248人のプラス、次いで福井県の406人となっている。
こうした状況に対し、国は、①介護職員の処遇改善、②多様な人材の確保・育成、③離職防止・定着促進・生産性向上、④介護職の魅力向上、⑤外国人材の受け入れ環境整備――など総合的な介護人材確保対策に取り組むとしている。


Part2

インタビュー
自信と誇りを持って働ける職場環境づくりを進め、
介護人材の確保・定着を図っていく

「介護の日」を制定し、取り組みを主導する厚生労働省社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室の田中義高室長に、介護の日の意義や今後の展開などについて語ってもらった。

田中義高

田中義高
厚生労働省社会・援護局福祉基盤課 福祉人材確保対策室長
たなか・よしたか/2000年、京都大学法学部卒業、厚生労働省入省。滋賀県庁出向(健康福祉政策課長等)、保険局医療介護連携政策課長補佐、大臣官房総務課国会連絡室長、日本年金機構企画調整監等を経て現職。米国留学中にニューヨーク州弁護士資格取得

国、自治体、関係団体が連携し各種イベントを全国で展開

介護についての理解と認識を深め、介護サービスの利用者とその家族、介護従事者の方々などを支援するとともに、これらの方々を取り巻く地域社会における支え合いや交流を促進する観点から定められたのが、11月11日の「介護の日」です。
介護人材の不足が深刻化するなか、介護人材を確保していくため、まずは介護の仕事を身近に感じてもらう必要があります。
「介護の日」の前後2週間は啓発活動の重点期間(福祉人材確保重点実施期間)と位置づけ、国、地方自治体、関係団体などが連携して、全国各地で介護にまつわるイベントなどを実施しています。こうしたイベントを通して、介護に関する情報や魅力発信を集中的に行うことで、介護をより身近なものとして捉え、介護に関心を持つきっかけにしてもらえればと考えています。
これまで具体的に、都道府県の介護担当部局のみならず、福祉人材センター、ハローワーク(公共職業安定所)、社会福祉協議会などが連携して、市民向け公開講座や介護の仕事体験、介護の仕事の就職フェアなどを重点的に実施してきました。今年度も、各機関が連携した取り組みが行われます。
「介護の日」および福祉人材確保重点実施期間で啓発していくべき内容や、介護人材の確保対策が求められることは全国共通ですが、人材確保の手法については各地域で状況に応じて考えていただく必要があります。介護職の有効求人倍率を見ても、全国的に高い水準にあるなか、都道府県ごとの差もあります。介護サービスの需給の違いに伴い、今後、介護人材にかかる都市部の課題、地方の課題はますます多様化していきます。各都道府県に設置した地域医療介護総合確保基金もメニューを充実させてきていますので、地域の実情に応じてご活用いただきたいと思います。

若者の参入を促すため返済免除付き貸付事業を創設

「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」によれば、2019年度の介護職員数である約211万人から、2025年度にはさらに約32万人を確保する必要があると推計されます(SCOPE「介護人材確保の最新見通し」参照)。
介護人材確保のため、介護職員の処遇改善、多様な人材の確保・育成、離職防止・定着促進など総合的な取り組みを進めていくことが重要です。外国人材については、世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響が生じていますが、国内の受け入れ環境の整備が必要です。
多様な人材の確保・育成についての具体的な施策としては、他業種からの参入を促すためのキャリアコンサルティングや求職者向け職業訓練枠の拡充、訓練への職場見学・職場体験の組み込み、訓練委託費の上乗せなどがあります。
あわせて現場の生産性向上、負担軽減につながるロボットやICTなど先端テクノロジーの活用、文書負担のさらなる軽減なども推進していかなければなりません。アクティブシニアに介護助手として周辺業務を担ってもらい、介護職員が本来のケアにより注力できるようにする取り組みも求められています。
また、高齢者施設事業者としては中核となる人材を確保したいニーズがあると思います。厚生労働省は今年度、他分野で働いていた方々や若い方々の介護分野への参入を促進するため、他分野から介護分野に就職した職業訓練の修了者や福祉系高校入学者向けの返済免除付きの貸付事業を創設しました(Column参照)。
こうした取り組みを進めるうえでは、まずは介護以外の分野で働いていた方や若い方を含む多くの方々に、介護に興味・関心を持っていただく必要があります。今後とも、「介護の日」を含めて介護に関して普及啓発し、介護の魅力を発信していくことが重要であると考えます。

介護職は社会に必要不可欠なエッセンシャルワーカーと再認識

福祉人材確保対策室では、介護の魅力を発信する取り組みとして、たとえば民間企業が実施主体となって、イベント会場やメディアなどで、実際に介護の現場で働いている方に介護の素晴らしさや働きがいなどを語っていただき、それをテレビやYouTubeなどで発信するなど、多くの方々に介護の仕事に関心を持ってもらうきっかけをつくる事業も実施しています。このような取り組みを通して、介護に接点のない方に介護の仕事に関心を持っていただくとともに、すでに介護の現場で働いている方により自信と誇りを持って働いていただけるようにすることで、介護人材の確保・定着を図っていきたいと考えています。
SNSなどの活用も含め、これまでの手法でなかなかアプローチできなかった人たちにいかに情報を届けていくかなど、常により良い手法を模索しながら、介護の仕事の素晴らしさ・魅力を広く発信していきます。
改めて申し上げるまでもなく、介護の仕事は、人と接し、人と関わり、その尊厳を守り、自立を支援する尊い仕事で、社会に不可欠なものです。利用者やその家族のために働き、直接、感謝されることに喜びを感じられる仕事でもあります。介護現場の方々に利用者の笑顔や感謝の言葉をやりがいとして感じながら、いきいきと働いていただけるよう、行政は高齢者施設など関係者と協力し、より良い職場環境をつくっていかなければならないと考えています。
全国老人福祉施設協議会の会員施設の皆様には1年以上にわたり、新型コロナウイルス感染症対策に日々ご尽力いただいていることに、この場を借りて感謝と敬意を表します。皆様がこのような危機的な状況においても、感染予防に細心の注意を払いながら、途絶えることなく介護サービスを提供してこられたことにより、介護職が社会に必要不可欠なエッセンシャルワーカーであることが改めて認識されるようになっています。
このような社会的機運をより一層高めていくためにも、「介護の日」を通じて、一人でも多くの方に介護に対する理解と認識を深めていきたいと思います。


Column「福祉系高校修学資金貸付事業」

令和3年度から福祉系高校に通う学生に対し、地域医療介護総合確保基金において設けられた支援策。▽修学準備金(入学金を除く):3万円以内(初回のみ)、▽介護実習費:3万円以内(年額)、▽国家試験受験対策費用:4万円以内(年額)、▽就職準備金:20万円以内――の貸付を行い、卒業後、介護分野の仕事に継続して3年間従事すれば返済が全額免除される。
そのほか、介護分野への就職支援策として、次のような貸付事業も実施されている。

・介護分野就職支援金貸付事業:介護未経験者や無資格者、無職の方で、介護職員初任者研修等を修了した方が対象(貸付金額:20万円以内)。介護分野の仕事に継続して2年間従事すれば全額返済免除される。

・再就職準備金貸付事業:介護職員として働いていた経験のある方で、介護分野の仕事に復帰する方が対象(貸付金額:40万円以内)。介護分野の仕事に継続して2年間従事すれば全額返済免除される。

図表001

図表002