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第39回総会で承認 “介護を守る”新事業を実施!
——広域感染症災害救援事業を創設

2020.7 老施協 MONTHLY

全国老施協は「老施協ビジョン2035」を掲げ、改革への取り組みを始めた。“最期の一瞬まで自分らしく生きられる社会”の実現に向けて、「現場のために、人のために、社会のために」の3原則のもと、体制を一新し新たな事業に乗り出そうとした矢先、世界を新型コロナウイルス感染症の脅威が襲った。
介護現場は緊張と不安のなかで感染予防・拡大防止対策に一致団結して取り組んでおり、そうした対応が社会からも評価されてきているところだ。
こうしたなか、全国老施協も新型コロナウイルス感染症対策を最重要かつ最優先課題として位置づけ、令和2年度事業計画・予算の大幅な見直しを行い、新たな感染症対策事業を実施することとした。本特集では、その概要を紹介する。


1 「新しい生活様式」に向けて事業計画を大幅に見直し

全国老施協は6月24日、「第39回総会」をオンラインで開催した。新型コロナウイルス感染症の対策を盛り込んだ事業計画など4つの議案が原案通り承認・可決された。


新たな組織の実現をめざし事業計画見直しを行う

第39回総会は、新型コロナウイルス感染症の対策としてオンライン開催となった。
冒頭、平石朗会長は、全国の代議員からオンラインによる開催への理解を得られたことに感謝の意を述べた。そして、23日に平石会長をはじめ介護3団体の代表が天皇皇后両陛下に拝謁し、介護現場での新型コロナウイルス感染症の対応について説明したことに言及
「4 介護3団体トップ会談」)。「現場の労をねぎらう言葉をいただいた。全国の介護現場での取り組みが高く評価された」と喜びを語った。また、第二次補正予算で介護現場の職員に慰労金が支給されることが決まった。について、「そのだ修光参議院議員(全国老施協常任理事)の力強い働きがあった。深く感謝したい」と述べた。

定足数を満たした総会では、第1号議案「令和元年度事業報告(案)について」、第2号議案「令和元年度決算報告(案)について」、第3号議案「令和2年度事業計画の変更(案)について」、第4号議案「令和2年度収支補正予算(案)について」の4議案を審議し、いずれも原案通り承認・可決された。

事業計画の変更は、「新しい生活様式」に適合する形での見直しが柱となっており、委員会・部会の活動は、テレビ会議や動画の有効活用が促された。そして新型コロナウイルス感染症の対策として、新たに「広域感染症災害救援事業」が創設された(図表1)。
平石会長は「感染症への具体策として、現場が必要とする新事業(広域感染症災害救援事業)を実施する。皆さんの承認をいただき、ただちに実行に移したい」と決意を示した。

見直しの基本方針

新型コロナ対策の実施が「老施協ビジョン2035」を具体化する

新型コロナウイルス感染症の急速な拡大を受け、介護現場における利用者の安全を最優先すべき観点から、介護現場における感染拡大防止の取り組みに対する支援を緊急的に最優先課題として取り組む。

新型コロナウイルス感染症が再拡大した場合も、的確に対応できるような体制を整備し、各事業を「新しい生活様式」に適合した形で運用することが求められる。これを受けて、今年度の事業全体で必要な見直しを行う。

事業計画へのご意見等はこちら


2 感染症の発生した施設を支援「広域感染症災害救援事業」を開始

今年度、最大かつ最重要課題と位置づけて創設されたのが「広域感染症災害救援事業」。新型コロナウイルス感染症に対して、現場の機能を低下させず職員を守る支援が目的だ。


衛生・防護用品の配布など総合的な支援の実施へ

全国老施協は総額約1億円を投じ、令和2年度の新事業として「広域感染症災害救援事業」を創設した。感染予防ではなく、感染症が発生した施設等を総合的に支援するもので、感染症対応の備品を各都道府県・指定都市老施協に供給することや、見舞金を支給するなどの支援を行う。また、感染症の発生した介護施設などで現場業務に従事した職員なども支援する。感染症対応の後方支援を行うことで、高齢者福祉分野における感染症対応力を高める役割を担う。
具体的に、次の5つの項目が柱となっている(図表2)。

※「広域感染症災害救援事業」の詳細な予算は精査中。全国大会・全国研究会議の中止、延期や委員会・研修等への対応(テレビ会議システムの活用等)により、全体の資金収支は当初予算とほぼ変更なし。

新型コロナウイルスへの対応を契機に
新生老施協への第一歩を踏み出す!

公益社団法人として、国民や現場から信頼される組織をめざし、平石新執行部は全国老施協の改革をスタートした。第39回総会に先立ち、平石朗会長は、令和2年度はこの改革をさらに進めつつ、今回の新型コロナウイルスを契機とした新たな組織の実現を呼びかけた。


会員に向けて動画で令和2年度事業の概要を説明し、決意を語る平石会長

新型コロナウイルス感染症対策を最重要、最優先課題に改革を前進

全国老人福祉施設協議会会長 平石 朗
全国老施協は、「老施協ビジョン2035」を掲げ、最期の一瞬まで自分らしく生きられる社会の実現に向け、「現場のために、人のために、社会のために」という原則に基づいて改革に取り組んできました。
令和元年秋より会長・副会長等が各ブロックに出向き、各都道県老施協会長等と直接意見交換を行うことで、相互理解の促進を図りながら、組織の課題を明確化してまいりました。それによって、改革すべき残された事項が洗い出され、改革の方向性と各事項の具体化が示されました。しかし、改革の総仕上げに入る矢先、このたびの新型コロナウイルス感染症の世界的な危機が起こりました。

組織改革を念頭に置きながら事業計画と予算の大幅な見直し

介護現場では現在、緊張と不安の中で感染予防対策・拡大防止対策に専心して取り組んでいます。全国老施協も至急、新型コロナウイルス感染症対策を最重要かつ最優先課題として位置づけ、これまで議論してきた改革を念頭に置きつつ、事業の選択と集中を行い、大幅に事業計画を見直し、感染予防、拡大防止に向けた取り組みとして「広域感染症災害救援事業」を創設しました。
全国老施協は組織を挙げて、介護現場の皆さんが安心して働けるように取り組んでまいります。


3 全国老施協のコロナ対応 感染発生施設に介護職員等を応援派遣

全国老施協は「新型コロナウイルス感染症対策チーム(リーダー:木村哲之副会長)」を設置し、会員施設・事業所における感染防止対策に役立つ情報やサービスの提供を推進している。


情報提供や相談対応などで会員をサポート

新型コロナウイルスに関する情報やサービスは、常にアップデートされている。国や関係省庁の通知や情報などを随時、適切に見極めた対応が求められる。今後も感染拡大によって、状況は刻々と変化することが予想される。
全国老施協では対策チームを設置し、情報を集約して会員の施設・事業所に向けた有益な情報やサービスの提供に努めている。ぜひ、自施設や事業所、法人における対策に活用していただきたい。
これまで全国老施協は新型コロナウイルスの感染拡大に対して、さまざまな対策を講じてきた(図表3)。介護現場にアンケートを実施し、政府・与党に実態に即した要望を行ってきたほか、厚生労働省と情報交換・共有を行いながら協力体制を組み、全国老施協の「コロナ特設ページ」などで常に最新の役立つ情報を発信している。

第2波、第3波に向けて職員の応援派遣を実施

緊急事態宣言の解除後、介護施設での面会が段階的に緩和されているが、いまだ感染収束の先行きは見えない。今後起こり得る、第2波、第3波への介護現場の体制の整備は急務だ。そのひとつが、感染発生施設への応援派遣である。
現実的には、各都道府県と各都道府県老施協、デイサービスセンター協議会の協議により、地域の実情に応じて検討していくことになる。応援派遣の原則は、同じ都道府県内の施設同士が前提だ。そして、応援派遣者と応援派遣受け入れの条件と、費用負担などの事前協議がスムーズな連携のポイントとなる。
応援派遣には、図表4のような形態がある。派遣側、受け入れ側の双方に求められる条件があるため、注意を払う必要がある。

全国老施協DWATも応援派遣への体制を整備

全国老施協DWATによる応援派遣も、原則として、応援派遣先施設と応援派遣元施設が緊急事態宣言解除地域にあり、「直近1週間の10万人当たり累積新規感染者数の報告数」が0.5人未満としている。そして、派遣者と受け入れ施設に求められる条件と措置を、図表5のように示している。
いずれの応援派遣も、感染拡大状況や地域の実情によって変化する。最新の情報を入手しながら、あらゆる資源を用いて現場の体制整備に努めていただきたい。

コロナ対策ページ


4 介護3団体トップ会談 コロナ対応や次期介護報酬改定に向けて協力を確認

高齢者介護施設が新型コロナウイルス感染症という前例のない事態に直面するなか、6月24日、全国老施協の平石朗会長、全国老人保健施設協会の東憲太郎会長、日本認知症グループホーム協会の河﨑茂子会長は、参議院議員のそのだ修光常任理事を交え、参議院会館で会談を行った。新型コロナや次期介護報酬改定への対応などを話し合い、協力関係をより一層深めていくことで一致した。

左から、公益社団法人日本認知症グループホーム協会の河﨑茂子会長、公益社団法人全国老人保健施設協会の東憲太郎会長、参議院議員のそのだ修光全国老施協常任理事、全国老施協の平石朗会長

天皇皇后両陛下から介護現場にねぎらいの言葉

会談の前日の23日、平石朗会長、東憲太郎会長、河㟢茂子会長は赤坂御所に招かれ、天皇皇后両陛下に新型コロナウイルスが介護現場に与える影響や感染防止対策などについて説明した。
平石会長は、感染の影響で高齢者と家族の面会が難しくなりオンラインによる面会を実施したことなどを説明。両陛下は、「本当によく頑張られたんですね」と、ねぎらいの言葉をかけられた。

介護現場の頑張りで施設が守られている

そのだ修光常任理事・参議院議員も交えた24日の会談では、平石会長がまず「こうして3団体がつながれたことにお礼を申し上げたい。『他職種連携』という言葉をよく耳にするが、医師のほうから介護に近づいてもらうのが医介連携の鍵だと思う。今日は、全老健の東会長および河㟢会長にお運びいただき、ありがたく思う」と語った。

そのだ議員は、「感染拡大の第2波、第3波に備えるためにも事業者団体の会長をされている皆さんとお話しできる機会は貴重だ。皆さんの声をしっかり国に届けたい」と述べた。また、「介護現場は感染症対策に日々取り組んでおり、これまでもインフルエンザやノロウイルス対策に努めてきた。今回は、介護の人手不足が深刻ななか、小中学校などの一斉休校もあり、子育て中の職員が職場に出にくくなるという状況もあった。それでも施設を守り、死者数をこれだけ抑えてきたのは職員たちの努力にほかならない」と強調。そのうえで「たとえば、デイサービスでは『3つの密』を避けるため、定員以下の利用者に抑えているところもあり、このままでは経営が成り立たない。感染しやすい高齢者を預かる施設への支援は国にとっても重要施策の一つだ。私は声を大にしてこのことを訴えていく」と決意を語った。

6月12日に成立した第二次補正予算では緊急包括支援交付金のうち介護にあてられる予算として4,132億円が計上された。当初案では1,500~2,000億円と見込まれていたが、そのだ常任理事は「慰労金を医療だけでなく介護にも給付しなければ、介護現場は崩壊しかねないと内閣官房、財務省などに粘り強く要請した」と経緯を説明した。結果として、高齢者介護施設・事業所のすべての職員に慰労金が支払われることが決まっている。

会談終了後、4氏は首相官邸に菅義偉内閣官房長官(中央)を訪問。3団体の連携などについて説明した。菅長官は、「今後も3団体がまとまって活動していただくことが大切」と、今後の活動に激励の言葉を述べた

介護を守るため、3団体が連携することの意義を強調

河㟢会長は、そのだ常任理事の活動に謝意を表したうえで、「戦後生まれの我々にとって、経済か生命か、と問われる事態に初めて直面することになった。今回のコロナ騒動で、介護が日本の行く末を支えていることを携わっている我々自身が改めて気づかされ、肝に銘じたのではないか」と述べた。

東会長は「老健は(他の施設類型と比べて)入所者の入れ替わりが多い。入退所の度にPCR検査を行うのは難しい。老健の入所者が病院を受診してPCR検査を行ったら診療報酬で請求してよい、ということになったが、新規入所者についてスクリーニングできるようになればありがたい。そうしないと、在宅の高齢者もショートを利用しにくくなる」と危惧を示した。また、利用控えや行政からの自粛要請により、特にデイサービス、デイケアで収支が悪化していることに触れ、「2段階上の報酬を取れる特例が設けられたものの、現実には、サービスを再開する利用者に対して『自己負担分が増えます』と言いづらい。多くの施設で経営的な落ち込みが現れている。これで次期報酬改定がマイナスにでもなれば致命的だ」と訴えた。

これらを受け、そのだ常任理事は「年末にかけて介護報酬改定の議論が行われる。財務省は今回いろいろ予算を付けたと言うかもしれないが、それはあくまでもコロナ対策だ。介護現場を守るため、基本報酬を上げなければならない。利用者さんのためにも、協力していきましょう」と呼びかけた。
最後に平石会長は「こうしてお会いしてお話すると、いろいろな視点でものを見られるようになる」と、3団体が連携する意義を強調した。

両陛下の笑顔と優しいまなざしに、その場にいた全員が感動

全国老施協会長 平石 朗
このたび介護現場を代表して両陛下に拝謁する機会をいただき、新型コロナウイルスの感染拡大防止に努めている介護現場の実態についてお話しさせていただきました。その中で、両陛下が介護現場を気遣って下さったことに感謝申し上げ、苦労だけではなくその魅力についてもお話しさせていただきました。
印象的だったのは、両陛下の笑顔と優しいまなざしです。その場にいた全員が感動し、優しさに包まれたまま赤坂御所を後にした次第です。