特集

キラリ施設紹介

社会福祉法人慈光会 味酒野ていれぎ荘

2020.6 老施協 MONTHLY

「その人らしい生活」の実現をめざし、ノーリフティングケアでADL改善

開設7年目の新しい施設。利用者一人ひとりの希望や願いを聞いて尊厳を守る「百人百色介護」を基本にサービスを展開しています。

夕涼み会。利用者様もホールに出て来られ、楽しまれている

夕涼み会。利用者様もホールに出て来られ、楽しまれている

暮らしの継続を重視した施設づくりを進める

愛媛県松山市にある社会福祉法人慈光会が運営する高齢者福祉施設「味酒野ていれぎ荘」は、住宅地の中で特別養護老人ホーム(6ユニット)、デイサービス、居宅介護支援事業所を展開。開設から7年目となる新しい施設ですが、地元の行事にも積極的に参加するなど、特養という枠にとらわれない地域に根ざした活動を続けています。
「介護が必要になった高齢者が、入所して新しい生活をスタートさせるのではなく、今までの生活がそのまま継続できる施設づくりをめざしてきました」と、窪田里美施設長は話します。同施設の中で地域から切り離された生活を送るのではなく、外に出ていって地域の一員という認識を持ってもらえるように、入居者が地域住民として地域の文化祭や祭りなどに参加したり、施設のイベントには地域の人たちにも参加してもらうなど、さまざまな取り組みを行っています。

同施設では、入所後も暮らしの継続を実現するためには、介護を必要とする前段階から地域住民と関わりを持つことが重要であると考え、介護予防の観点からの地域交流にも力を入れています。その一環として、地域住民の介護予防教室「いきいき味酒野!」を春と秋に8回シリーズで開催し、健康ミニ講座、健康チェック、体操、ウォーキングなど、毎回約2時間のメニューを提供しています。


地域の方へ向けた健康教室(いきいき味酒野!)。ウォーキング前に体操で身体をほぐす

地域の方へ向けた健康教室(いきいき味酒野!)。ウォーキング前に体操で身体をほぐす

また、介護する家族が交流できる場として「みさけのカフェ」を定期的に開催。家族同士で気軽に話し合ったり、勉強会でいろいろな知識を得たりできるほか、各テーブルには介護職員が配置されており、気軽に相談し悩みごとを打ち明けることもできます。

1人でも移乗介助でき職員の負担も軽減

同施設では、開設時から徐々に入所者が重度化する傾向にあります。それまでデイサービスを中心に働いていた作業療法士の城本拓哉さんは、特養での業務に携わるようになり、現場での介助量が多いと感じていました。職員の負担が増えると、入所者の「その人らしい生活」を支援することが難しくなり、より心身機能の低下を招いてしまいます。
入所者が重度化すると、食事や着替え、入浴など何をするにも、2人介助による移乗が必要となります。トイレに行きたいと言われると別の職員を探しに行かなくてはなりません。自分のユニットに他の職員が見当たらず、別のユニットまで探しに行くと、トイレを我慢する時間が長くなり、失禁してしまうこともありました。そうした状況に問題意識を持った城本さんは、偶然参加した勉強会でノーリフティングケアに出会い、自分たちの施設でも導入したいと考えました。
まずは試験的に1ユニットを選定して導入すると、開始から3か月で成果が見られました。床走行式リフトで1人でも移乗介助ができるので、利用者が求めればすぐに応えられます。「1人だった夕食も他の入所者と一緒にとることができるようになりました。その人が望むタイミングで離床・臥床ができるため、離床時間も長くなり表情も豊かになりました」と語る城本さん。これまで身体を担がれることに緊張していた人の拘縮も軽減し、着替え時の苦痛も緩和されました。トイレも行きたいタイミングで行けるので、失禁が減っただけでなく、排泄の質の改善にもつながったのです。今では6ユニットすべてでノーリフティングケアを実施しています。

ノーリフティングケアの導入により職員の負担は軽減され、入所者のADLが改善するという一定の成果は示されました。しかし、活動への参加や、その人らしい生活の実現といったところまでは至っておらず、城本さんはまだ道半ばだと考えています。「ノーリフティングケアに個々のアセスメントを活かす働きかけが必要であり、段階を踏んだ実践や活動への参加につながった事例を積み重ねていきたいです」と、城本さんは今後の展望を語ります。

ミッションを明確化自ら考え行動する組織へ

ノーリフティングケアのような新しい取り組みを実践するには、「職員間の連携がうまくとれていることが大事」と、城本さんは話します。そのためには組織づくりが欠かせません。窪田施設長は「当施設は何を目的としているのか、自分たちのミッションはどういうものなのか、ということを理解し、一つの目標に向かって、それぞれのスタッフが自分で考えて行動していく組織をめざしています」と強調します。
そうした流れはすでにつくられており、熱心な職員が中心となって、業務終了後に「味酒野塾」を開催し、介護のあり方などについて、事例を通したディスカッションを続けています。そこでは入所者の楽しみや幸せの実現支援や、地域との共生という共通の目的に絶えず立ち返り、その達成をめざして自分で考える力を養っています。
「介護業界全体を盛り上げていくために、これからもノーリフティングケアなど生産性を向上させる取り組みを広めていきたいと考えています。少しでも興味があれば見学に来ていただきたいし、こちらからも出かけていって発信をしていきたいです」と、窪田施設長は抱負を語ります。

社会福祉法人慈光会
味酒野ていれぎ荘

特別養護老人ホーム(定員60人/6ユニット)、
デイサービス(定員33人/1日)、居宅介護支援事業所

TEL:089-989-5571 FAX:089-989-5572
MAIL:misakeno0331@abeam.ocn.ne.jp
URL:http://www.jikoukai-ehime.or.jp/misakeno/