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令和3年7月 加算算定状況調査を実施

2021.9 老施協 MONTHLY

令和3年度介護報酬改定の事項には、加算の要件として介護事業者に対応を求めるものが少なくない。半年間の猶予措置期間が設けられた対応もあるが、その期限が迫るなか、全国老施協の会員施設はどのようなことを課題と感じており、加算の取得を阻害している要因にはどのようなものがあるのか——。こうした実態を把握するため、このほど「令和3年7月 加算算定状況調査」を実施した。

令和3年度介護報酬改定では、LIFEに関連した科学的介護推進体制加算などが新設され、機能訓練、栄養・口腔に関する加算が拡充された。また、介護保険施設における事故発生の防止と発生時の適切な対応を推進する観点から安全対策体制加算が新設される一方、事故の発生または再発を防止するための措置が講じられていない場合の安全管理体制未実施減算も新設された(6か月の経過措置期間を設定)。
全国老施協では、会員施設の各種加算の取得を支援していくため、まずは令和3年7月実施分(8月10日時点の請求状況)について、加算・減算の有無や問題点・困りごとを調べることを決め、会員施設を対象とする「加算算定状況調査」を実施した。
本特集では、介護給付費分科会に委員として出席した小泉立志副会長に、半年が経過した令和3年度介護報酬改定の感想や評価について話を聞くとともに、本調査の結果概要(特養と通所)を紹介する。

2035年を見据え、新たな時代に対応できる介護基盤づくりに邁進

令和3年度介護報酬改定から半年が経過した。見えてきた課題、対応が求められる事項などについて、小泉立志副会長に語ってもらった。

小泉立志

小泉立志(全国老施協 副会長)

コロナ対策の上乗せ分10月以降も継続を要望

まず令和3年度介護報酬改定でのプラス0.7%という改定率については、運営環境が厳しい状況でのマイナス改定は絶対に回避したいという強い思いがありましたから、プラス改定が実現したことは大変ありがたいと思っています。
全国老施協として提案していた要望についても、濃淡はあるものの8割方は通していただきましたので、その点についても高く評価しています。これとは別に、コロナ対策としての9月30日までの基本報酬の上乗せ分(0.1%)については、10月以降も継続できるよう厚生労働省に要望書を提出しました。
今回の改定内容を見ると、感染症や災害への対応力強化、BCP策定への取り組み、虐待防止やハラスメント対策など、単位数には関わらない項目が多いことが一つの特徴となっています。こうした事項は点数には直接反映されませんが、介護業務の安定的な継続のために、各施設が日頃から取り組まなければならないものです。一方で、押印・署名の見直しなど、手続きの効率化・簡素化による業務の負担軽減などの事項も盛り込まれました。
この2つの方向性が意図するところは、各法人・事業者に、2035年を見据えて、今のうちに介護基盤をしっかり整備していってほしいということだろうと解釈されます。実際、介護需要が今後急速に高まっていくことを踏まえれば、強固な介護基盤を構築しておくことは介護業界の喫緊の課題だといえるでしょう。
また、今改定では、リハビリ専門職との連携を目的とした生活機能向上連携加算の見直しが行われました。これをステップとし、次期改定では、医療との本格的な連携が求められるのではないかと予測しています。

LIFEの評価には長期的な視点が必要

今改定の最大の柱となったのが、「LIFE」(科学的介護情報システム)の活用です。正直なところ、改定項目の多くがLIFE関連となっており、LIFEを導入しなければ収入増は見込めないのが現実です。全国老施協が6〜7月に行った「LIFE導入状況調査」では、8割以上の会員施設がユーザー登録を完了していることが報告されています。多くの事業者がそうした点を十分心得て、LIFEの導入に積極的な姿勢を示していると考えられます。
ただし、LIFEについては、記録ソフトの導入の難しさや、手入力の場合の職員の負担増といった現場の課題から始まり、LIFEへの取り組みが介護の質向上に直結し、利用者のメリットにつながるのかといった本質的な問題に至るまで、会員の皆様からさまざまな相談や意見が寄せられています。
「フィードバックを活かせ」と言われても、スタートからしばらくは有用なフィードバックは見込めないので、当面は現場の負担感に比してメリットは得られにくいでしょう。そのことに対する不満や不安は当然あると思います。しかし、LIFEはアセスメントの一種であり、良いアセスメントができて、そこから良いケア計画がつくられ、さらにそれが良い介護サービスにつながって利用者に提供されるというプロセスがあります。一朝一夕に成果が得られるものではない、ということをご理解いただければと思います。
最初のうちはデータを集積させることに重点が置かれますが、有効なビッグデータを構築することで、科学的根拠に基づいた最適な介護を効率良く利用者に提供できるようになることが期待されています。真の科学的介護を実現するためにも、介護業界が一丸となって取り組まなければならないと考えています。
LIFEについては、次回改定において大きくメスが入れられるのではないかと予測しています。今改定では、ひとまず導入させ、定着させることに意識が向けられましたが、今後は内容のさらなる充実が求められるでしょう。
現段階では、アセスメントのスキル向上や入力体制の整備などが必要で、こうした業務に慣れていなかった施設にとっては、それだけでも大きな負荷がかかっていると察します。当面は、LIFEに対応するための基盤を少しずつ整えていくことに注力していただきたいと思います。

各種調査を適宜実施有用な情報提供に努める

全国老施協では、会員の各種加算の取得支援を目的として、8月末まで「加算算定状況調査」を実施しました(令和3年7月「加算算定状況調査」の概要参照)
調査結果を見て最初に感じたのは、LIFEへの登録を特養の81%、通所介護の69%が済ませており、各施設・事業所ともかなり努力されているということでした。全体としては、「体制届あり」の施設数が非常に多い項目と、「届出なし」の施設数が非常に多い項目が、顕著に分かれている点が印象的でした。言い換えると、どの施設にとっても非常に取りにくい加算があるということです。報酬体系をあまり複雑化させないためにも、そのような項目については今後、国に対して何らかの提言を行っていく必要があると思っています。
また、通所介護においては、昨今廃業する事業所が多く、退会件数も増えているという実情があります。経営維持が難しい状況に置かれている会員の方々に対し、有用な情報を提供し、それぞれの施設・事業所の特性を踏まえたうえで、適した支援につなげられるような取り組みを行うことも、全国老施協の務めです。経営を困難にしている原因や課題を的確に見極めるためにも、このような実態調査を定期的に行い、分析・検討を加えた結果をHP上で公表していきたいと考えています。
全国老施協のHPでは、「令和3年度介護報酬改定ポータルページ」を設置して、LIFE活用法や各加算の解説など幅広い情報発信を行っていますので、そちらもぜひご活用ください。

コスト管理を意識しつつ「革新」に向けたチャレンジを

全国老施協では、令和3〜4年度に取り組む重点事項として「介護現場の革新」を掲げ、介護現場の生産性の向上へ向けて、会員に対するICT導入のための基盤構築の支援や情報提供を推進しています。しかし、やみくもにIT・ロボットを導入せよと言っているのではありません。不用意にIT・ロボットを導入すると、期待したほどの成果が得られないまま、コストが無駄になってしまうこともあり得ます。経営には「革新」に向けたチャレンジも必要ですが、コスト管理も大切です。
介護報酬の算定にも同様のことがいえます。たとえば、個別機能訓練加算を算定しようとPTやOTを雇用したとして、おそらく収益面ではプラスにはなりません。しかし、それでもチャレンジしようとする施設は、収益だけを見ているのではないでしょう。サービスの質の向上や利用者のニーズなど、さまざまな要素を考え合わせたうえで、施設にとって収益とは別のプラス面が見込めるからこそ、加算を算定するわけです。そこに、経営の本質があるのではないでしょうか。
確かに、経営判断は簡単ではありません。しかし、各施設には自らの強みや課題を踏まえ、コスト管理を意識しつつも、ハード・ソフトの両面から「革新」に向けたチャレンジをしていただきたい。今は、介護業界が2035年に向けて、腹をくくり、新しい時代に対応できる介護基盤づくりに邁進しなければならない時期だと考えています。皆様のチャレンジをサポートすべく、今後も多方面からさまざまな取り組みを行っていきます。

■調査目的:今後の取得支援のため
■調査対象:本会会員の特別養護老人ホーム、短期入所、通所介護
■調査期間:令和3年8月23日(月)〜8月27日(金)※8月31日(火)まで延長
■調査方法:Web調査(Microsoftフォームズ)

回答の状況

※ここでは、特養と通所介護について、「体制届の状況」の結果を紹介します。特養(地域密着型)、短期入所、通所介護(地域密着型)については、10月上旬を目途に全国老施協のホームページで公表いたします。

図表1

図表2

※今回の調査の分析結果等については、11月25日から配信される第78回全国老人福祉施設大会(山口大会)の分科会において報告を行う予定です。