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新型コロナ第2波に備えよ!迅速・適切な対応で介護現場をサポート

2020.6 老施協 MONTHLY

新型コロナウイルス感染症については、5月25日に緊急事態宣言が解除された。とはいえ、新たなクラスターの発生や再流行を招く可能性もあり、高齢者を預かる施設としては、気を緩めるわけにはいかない。
欧米では高齢者福祉施設での死者数の割合が全体の過半数を超える国が多いが、日本は低い数字に留まっている(図表1)。介護現場の適切・迅速な対応がクラスター化を食い止めているといってよい。
今後の対応に役立てていただくため、今月号でも全国老施協が用意しているサービスや取り組みを整理・紹介する。また、新たな段階に入るなか、高齢者福祉施設として、どのような点に気を配るべきか、各分野の専門家にコメントを寄せていただいた。


危機感を持って対策を継続し「介護崩壊」を防ぐ

緊急事態宣言が解除され、新たな局面を迎えようとしている新型コロナ対策だが、高齢者福祉施設は引き続き危機感をもって対策を継続しなければならない。会員施設をサポートするため、全国老施協はさまざまな対応をこれからも進めていく。


第2次補正予算で介護職員に慰労金支給へ

全国老施協は、新型コロナウイルス感染症対策として、現場の実情と要望を把握するためアンケート調査を実施し、これを踏まえた厚生労働省などに対する要請により、具体的な施策につなげてきた。令和2年度第1次補正予算では地域医療介護総合確保基金により、介護施設に対するマスクの配布や多床室の個室化に要する改修に必要な費用の補助などの予算が確保された。
4月22日〜23日に会員施設に対して2回目となる緊急アンケートを実施し、4月27日に厚生労働省老健局長などに現場の状況を訴え、要望書を提出した。このなかでは「マスク、手袋、防護服等の衛生用品等の安定的供給体制の確保」や「介護現場の職員に対する優先的なPCR検査や早期治療」のほか「介護従事者への特別手当等の給付」など8項目の実現を求めた。
5月27日に閣議決定された第2次補正予算では、介護事業者を対象とした「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)」として4,132億円が計上され、介護現場の職員への慰労金として、▶新型コロナウイルス感染症が発生または濃厚接触者に対応した施設・事業所の職員に1人20万円、▶それ以外の利用者と接触する職員に対しては1人5万円――が支給されることが決まった。これは本会およびそのだ修光常任理事の取り組みの結果でもある。
また、全国老施協は5月7日、特別養護老人ホーム等における令和3年度介護報酬改定で検討すべき要望事項を取りまとめて厚生労働省に提案した。このなかでは、新型コロナウイルス感染症体制について、高齢者福祉施設の感染拡大防止に係る適切な対応を評価しさらにその質を向上させる観点から、基本報酬において評価するよう要望している。

「新しい生活様式」に対応する施設での留意点を示す

5月25日に緊急事態宣言が全国で解除されたことに伴い、経済活動・社会活動が順次、再開されることになる。これに伴い、新たなクラスターが発生するリスクが高まり、また秋から冬場にかけて感染拡大の第2波が襲う可能性を指摘する声もある。高齢者福祉関係者としてはここで対応を緩めるわけにはいかない。
5月4日、国の専門家会議は、新たな感染者の数が限定的となった地域では再び感染が拡大しないよう、長丁場に備えて「新しい生活様式」に切り替える必要があると提言し、実践例を示した。あわせて業種ごとの感染拡大予防ガイドラインに関する留意点を示し、このなかで「高齢者や持病のある方については、感染した場合の重症化リスクが高いことから、サービス提供側においても、より慎重で徹底した対応を検討する」としている。
高齢者施設としては、長丁場に備えた対応が求められるが、その一方で、面会を希望する利用者・家族の心情を踏まえれば、緊急事態宣言の解除後、一定の条件を満たす場合、面会を認めることも考えられる。
こうした際の留意点について全国老施協は5月14日、「いわゆる『新しい生活様式』に関する留意点について」を取りまとめ、さらに改訂版も公表している(図表2)。面会については、一部の地域を除き、感染発生に最大限努めるとともに、限定的な実施を促している。

風評被害等に対応するサポート窓口も設置

全国老施協では会員施設のアンケートに加えて、メールでの問い合わせなどにより的確な情報や現場の声の把握に努めるとともに、会員施設に対する情報提供にも力を入れてきた。その一環としてホームページに「毎日更新 コロナ対応ページ」を設けて、「対応方針チェックリスト」「対応フロー」「感染対応マニュアル」「Q&A」などの形で各種情報をとりまとめているほか、職員の「メンタルヘルス相談窓口(JS-MS)」などのサービス提供も行っている。
そのほか、新たに新型コロナウイルス感染症に伴う会員各施設におけるインターネット上の風評被害やメディアからの取材などに関するコミュニケーションを支援するため、専門家に電話で相談ができる「風評被害等のコミュニケーション対応支援サポート窓口(略称「JS-CS」)」も開設した。必要に応じて利用していただきたい。

コロナでお困りの皆さんは、こちらまで

専門家に聞く!新型コロナウイルス感染症対策のポイント

新型コロナウイルスには未知の部分も多く、対応に苦慮する施設は多い。高齢者福祉施設における感染症予防のあるべき対応、職員のメンタルヘルスや災害が発生した場合の対策、風評被害やマスコミ対応について、第一線で活躍する専門家にポイントを説明してもらった。


日常の対策に改めて目を向け「感染症に強い施設づくり」を


笹原鉄平 氏
自治医科大学 医学部感染免疫学講座 臨床感染症学部門講師。全国老施協の感染症に対する問い合わせを担当

現在、日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究で高齢者施設の感染対策の向上をテーマに活動している。そのなかで感じた施設の感染対策の課題を述べたい。
インフルエンザ、ノロウイルスなどへの各論的対策については、関係医療機関のサポートも受け、真面目に取り組まれている印象がある。一方、日常業務・作業における基本的感染対策については、かなりの改善が必要と感じる。すべての入居者が「何らかの感染症を有しているかもしれない」という意識のもと効率的な感染対策を実施するのが標準予防策だ。これが「できている」と自信を持つ施設も、実際に見てみるとできていないことが多い。その最大の理由は、病院を対象としてつくられた標準予防策の概念がわかりづらく、場合によっては介護施設の実状にそぐわないことにある。施設職員が日常業務のなかで標準予防策を意識しながら、その都度適切に判断するのは難しく、施設ごとに標準予防策を反映した業務手順書を作成する必要があるが、これを整備している施設は多くない。手指衛生ひとつとっても、適切なタイミングで、適切な回数実施できているケースは少ない。
今回の新型コロナウイルス感染症をきっかけに、日常の基本的な感染対策に改めて目を向け、「感染症に強い施設づくり」をめざしてほしい。

感染症に関するご相談があればメールにてお送りください。

過度な「がんばり」が不調につながる「我慢」している職員を見逃さない


得津 慶 氏
産業医科大学 公衆衛生学 非常勤助教。産業医。全国老施協「介護従事者等のメンタルヘルスサポート窓口(JS-MS)」を担当

感染対策に伴う業務量や心的負担の増加が長期化し、応急措置的な対策に限界が生じ始めている。特に、ご高齢の方が多い利用者に日々向き合っている介護従事者は責任感から許容できる以上の負担であるにもかかわらず、「がんばり」続けてしまいがちと感じる。過度な「がんばり」は「我慢」につながり、一気に心身の調子を崩す原因になる。しかも管理者の側は職員との接触機会が減少して早期発見が難しくなっており、急に体調が悪化したように見えるケースが増える可能性がある。こうしたことから、「バーンアウト(燃え尽き)」のリスクが高まっているといえる。
施設でできるバーンアウト対策として、「我慢」を続けずに済む労働環境をつくることがある。不要不急の事務処理を見直し、効率化を図って業務の選択と集中を進めるとともに、「我慢」を続けている職員を早く見つけられるようにしたい。そのためには感染対策を講じた手段を用いて、仕事だけでなく生活面や感情面についてもリラックスして話せる機会を意識的に設けることが有効だ。
管理者や産業医といった施設内のスタッフだけで対応しきれない場合、外部資源を積極的に活用するべきだ。全国老施協は新型コロナウイルス感染症対策としてメンタルヘルスサポート窓口を早くから設けている。「我慢」せず、気軽にご相談いただきたい。

メンタルヘルス相談窓口(JS-MS)はこちらをご参照ください。

対応方針を日頃から積極的に配信施設の“安心・安全”を地域に訴求する


平野元希 氏
株式会社リシンク 代表取締役。全国老施協「新型コロナウイルス感染症風評被害等のコミュニケーション対応支援に関する相談窓口(JS-CS)」を担当

新型コロナウイルスの感染が判明した施設の利用者やそこで働く介護従事者が差別を受ける事案や、実際には感染者がいないにもかかわらず、ネット上で根も葉もない噂を拡散され、誹謗中傷を受ける事案が発生している。取材に押しかけて来るマスメディアへの対応に苦慮している施設もある。人手不足で運営が慢性的に逼迫している施設では、十分なサービスが提供できない事態にも陥りかねず、非常に憂慮すべき事態だ。
初動対応として重要なのは、何が事実で何が虚偽であるかを明確にする「事実関係の正確な把握」だが、インターネットメディアの発達に伴い、自施設の情報がいつどこでどのように発信されているのか正確に把握することが難しくなっている。
対応として、施設の感染防止対策などを公式ホームページなどを通じて積極的に発信しておくことにより、地域住民や利用者のご家族などに向けて、できる限り自施設が安全への取り組みに努めていることを理解してもらえるよう検討すべきだ。
マスコミ側も新聞協会と民放連が感染者や医療従事者への差別をなくすための共同声明を出している。事実を報道してもらうためのマスコミ関係者とのコミュニケーションも大切になる。全国老施協は新型コロナウイルスに伴う風評被害等の相談窓口を設置している。気軽にお問い合わせいただきたい。

風評被害相談窓口(JS-CS)はこちらをご参照ください。

自然災害との「複合災害」は必ず起こるその覚悟をして万全の準備を


鍵屋 一 氏
跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部教授。一般社団法人福祉防災コミュニティ協会代表理事

新型コロナウイルス感染症は、少なくとも2年は続くとも言われる。となれば、当面、この感染症と風水害、地震災害などとの複合災害も覚悟しなければならない。
まず、(福祉)避難所に来る住民が多くなればなるほど、対応は困難になる。住んでいる地域の洪水ハザードマップを見て、大丈夫なら自宅に留まってもらう。リスクがある場合でも、(福祉)避難所に直行するのではなく、縁故避難、車中泊、ホテル・旅館避難などを優先してもらい、(福祉)避難所のクラスターを防ぐことが重要である。自治体には、あらゆる手段を駆使して注意喚起をしていただきたい。
過去の災害では、福祉施設に助けを求めて避難する方が必ずいる。特に福祉避難所に指定されている福祉施設は、その受け入れが大きな課題だ。
その時、たとえ新型コロナウイルスの感染を疑う方が避難してきた場合でも、受け入れ拒否の即答は差別や排除につながる。どんな状況下であれ、一人ひとりの尊厳が守られるよう、病院への移送や、個室が確保できる場所を探すなど最善を尽くしていただきたいと願っている。
嫌な時代になった、というのが福祉施設職員の実感かもしれない。しかし、私たちが感染症を含む複合災害に向き合う、またとない機会でもある。心とモノの準備をして、空振りはラッキーと受け止め、見逃しは許さないという覚悟を持ちたい。

コロナ禍における災害対応の参考資料はこちらをご参照ください。