特集

キラリ施設紹介

社会福祉法人長寿会 特別養護老人ホーム長寿園

2021.8 老施協 MONTHLY

看取りケアの実践を通して日常のケアの向上につなげる

最期まで安心して過ごせる施設をめざし、職員全員で日々のケアの積み重ねを大切にしています。

「死生観」に対する理解を深める研修を実施。職員が看取りケアに真剣に取り組むきっかけにもなっている

医療主体からケア主体の看取りへ

山口県山陽小野田市にある社会福祉法人長寿会は、長沢病院の初代院長であった故長澤正明氏が1978年に立ち上げ、同市初の特別養護老人ホームとして長寿園を開設しました。以来、利用者・家族、地域との関係性を大切にし、施設・在宅介護サービスを充実させてきています。
主任生活相談員の吉本暁子さんは、「当園では開設当初から24時間医師に連絡できる体制をとっていて、9割のご利用者が施設で最期を迎えられていました。ただ、看護師と医師が主体となって判断し、終末期に入ると静養室に移り、点滴や酸素吸入を行うという流れが決まっていて、それが当たり前と認識していました」と振り返ります。看取りを見直すきっかけは、2015年の介護報酬改定でした。「看取り期における対応の充実を求められたことで、自然死や平穏死を学ぶなか、ケア中心の看取りへと見直す必要があることに気づきました」と説明します。
そこで同園では、利用者や家族の意思を尊重した多職種によるケアの実践をめざし、15年に看取り委員会を立ち上げました。看護師、生活相談員、ユニットリーダーが中心となって、ケア中心の看取りの検討に着手したのです。

利用者の家族と定期的にカンファレンスを行い、日々の様子を伝えている 利用者の状態について管理栄養士と相談し、意見を交換

研修などにより職員間で共通認識を醸成

看取り委員会ではまず、①施設全体で看取りケアの共通認識を持つ、②「日々のケアの集大成」として尊厳ある最期を支える体制を構築する、という目標を明確にしました。
共通認識を持つために、職員に対して年1回、死生観の研修と外部研修のフィードバック、看取りケア後の振り返りを行っています。方向性を統一することで、職員が主体性を持って、利用者のためのケアを考える姿勢をつくっているのです。
支援体制の構築では、月に1回の看取り委員会で、対象の利用者の状況を把握したうえで、看護師・医師に判断をしてもらうようにしました。また、看取り期の基準を統一するために、「看取りステージの一覧表」を作成。ケアや家族とのカンファレンスは、これをもとに進めていきます。

特別養護老人ホーム長寿園の取り組み

利用者がどの段階かを客観的に確認するために、「介護職の気づきシート」も作成しました。食事・排泄など6つの分野について、変化の有無を記録し点数化したもので、家族に説明する際の根拠にもなっています。
家族への看取り期の説明では、一覧表から段階を伝え、今後の方向性や意向を確認します。動揺してすぐには決められない家族もいますが、カンファレンスを通して家族の理解を深めます。年に一度の家族談話会で家族向けの勉強会も開始し、看取りがどんなものかを知ってもらう機会としています。

看護師と意見を交換。居室には行事の写真や思い出の場所の写真が貼ってあり、利用者と思い出話に花が咲くことも多い

利用者の希望をかなえ家族との思い出づくりを

看取り期に入ると、本人の意思確認が難しくなることも多いそうですが、日頃話していたことを思い出し、ケアに取り入れるようにしています。
介護福祉士の横山美恵子さんは、「ご家族とご利用者の希望に沿った穏やかな最期を迎えられるよう、たとえば、看取り期の部屋を静養室と決めず、話すことが好きな方には談話室のそばにしたこともあります。看取り後は必ず振り返りを行う会議を開き、より良い看取りの実現につなげています」と言います。
新たに始めたものとして、2015年9月からの外出の取り組みがあります。介護職が看護師と利用者の体調や天候を相談したうえで、自宅や思い出の場所を家族と一緒に訪ねるというものです。

取り組みから始まった外出の様子。実家や思い出の場所を訪ね、利用者が素の顔に戻ることも

「以前は点滴に頼り、外出ができないことも多かったですが、今はなるべくご本人の希望を優先するようにしています。経口摂取の維持にも努め、管理栄養士と食形態を相談したりしています。巻きずしがお好きと言う方に軟らかい状態でお出しし、ご家族に喜んでいただいたこともあります」と、吉本さんは説明します。

施設長の上村篤子さん 主任生活相談員の吉本暁子さん 介護福祉士の横山美恵子さん

利用者・家族との関わりをより意識するように

医療依存度の高い利用者を施設で看取った例もあります。Oさん(84歳女性、要介護4)は肺がんが進み、食事をとれない状態でしたが、「最期までここにいたい」という本人の意思を尊重することにしました。呼吸が困難な様子を見て、職員も「病院に入院したほうが良いのではないか」と考えることがありましたが、本人の希望をくみ取り、ギャッチアップや座位で呼吸を楽にする姿勢を保ったり、背中のマッサージを行いました。身体的な苦痛を取り除くことはできなくても、施設で一緒の時間を過ごすことで、最期は穏やかな表情で亡くなられたそうです。
横山さんは、「取り組みを通して、ご利用者やご家族に最期まで良かったと思ってもらいたいという思いがより強くなっています」と言います。
今は新型コロナウイルス感染症の影響で面会や外出は以前のように行えていませんが、タブレットを活用することで利用者が家族と接する機会を増やしたり、ベッドごと専用の別室に運んで面会を行えるようにしています。
今後の課題について、吉本さんは、「ご本人の希望に沿うためにも、入所時など元気なうちから最期についてより話しておく必要性を感じています。ご家族への情報提供や共通理解をさらに充実させることも必要です」と話します。
施設長の上村篤子さんは、「看取りケア後のアンケートでは、ご家族から『長寿園で良かった』という声を寄せていただいています。誰もが最期を迎えるなか、看取りケアは介護の集大成といえます。特別なことではなく、日々の積み重ねを大切にしていきたいです」と語ります。

キラリスタッフの声

社会福祉法人長寿会 特別養護老人ホーム 長寿園

社会福祉法人長寿会
特別養護老人ホーム 長寿園

(定員82人:従来型74人、従来型個室8人)
山口県山陽小野田市大字小野田11324番地10
TEL:0836-84-2424 FAX:0836-84-6253
https://care-net.biz/35/choujukai01/