特集
東京2020パラリンピック 男子走り幅跳び出場!
小久保寛太
2021.8 老施協 MONTHLY
職場の仲間と利用者さんたちの応援と期待を追い風に、世界へ跳ぶ!
東京2020パラリンピック男子走り幅跳び/知的障害クラスに挑む小久保寛太さんは、社会福祉法人かつみ会(埼玉県深谷市)に勤務する介護職。小久保さんの抱負に加え、同法人の常務理事・事務長の伊藤重来さん、勤務先のセンター長を務める三浦真理子さんに小久保さんの仕事ぶりなどについて聞きました。
コンディションは絶好調メダル獲得に自信!
8月24日、いよいよ東京2020パラリンピックが開幕します。パラ陸上に出場する小久保寛太さんは、男子走り幅跳び/知的障害クラス(T20)の注目選手。2020WPA(国際パラ陸上競技連盟)公認関東パラ競技選手権大会で、日本新記録を更新し(6m88㎝)、優勝しました。今回のパラリンピックでの活躍が期待されています。
小久保さんが陸上を始めたのは中学1年生のときでした。「高校2年生まで400mなどの短距離走に取り組んできましたが、高校3年生のときに走り幅跳びに転向しました。どんどん記録が伸びるので、すごくやる気が湧きました」
小久保さんを一流アスリートへと成長させた走り幅跳び。この競技に出会えてよかったと、うれしそうに語ります。
現在の課題は、距離をさらに伸ばすため、空中動作の改善などでいかに滞空時間を長くするか。このことを意識して練習に励んでいます。
「今、とてもコンディションが良いので、助走や踏切のタイミングが合えば、7mを超えられる可能性があると思います」と、メダル獲得への自信をのぞかせます。
利用者からも職員からも慕われる優しさと笑顔
小久保さんは特別支援学校を卒業後、社会福祉法人かつみ会に就職。認知症対応型デイサービスで働き始めて4年になります。同法人の常務理事兼事務長の伊藤重来さんによれば、小久保さんとは、以前から縁があったとか。伊藤さんは4歳の頃から、小久保さんの両親が営む理容室に通っていたのです。しかし、小久保さんを受け入れたのは縁だけではありません。彼の人柄が介護職に向いていると判断したからです。
「感情的になってしまった友達に対しても自ら寄り添い、なだめるのが上手だと、先生から聞いていました。彼なら認知症高齢者の方に対しても、穏やかに接してくれるのではないかと思ったのです」
小久保さんは、伊藤さんの期待どおりのケアを実践しています。認知症の行動・心理症状(BPSD)により、感情的になってしまった高齢者の方に対しても、目線を合わせ、寄り添うことで心を落ち着かせるような対応が自然にできています。
「どう接したらいいか悩むこともありますけど、個性を尊重しながら接しています。一緒に体操をしたり歌ったりするのは、すごく楽しい。できなかったことができるようになったときも、とてもうれしいです。介護は自分に向いている仕事だと思っています」と、小久保さんは微笑みます。
センター長の三浦真理子さんは、常に笑顔を絶やさない姿にいつも感心しています。「練習で疲れていても、大会で結果が出せなかったときも、いつもニコニコしていますし、仕事態度が変わることもありません。すごいなと思います」
「寛太さん」「カンちゃん」と呼ばれて慕われている小久保さん。パラリンピックで助走路に立つ瞬間、「カンちゃん、頑張れ!」の声援がデイサービスに響き渡ることでしょう。
小久保寛太(こくぼ・かんた)
社会福祉法人かつみ会 認知症対応型通所介護スタッフ
1999年、埼玉県深谷市生まれ。社会福祉法人かつみ会の地域密着型認知症対応型通所介護施設エンゼルデイサービス山河で介護職として勤務。東京2020パラリンピック男子走り幅跳び/知的障害クラス(T20)に出場する。2018年のアジアパラ競技大会では銀メダルを獲得

社会福祉法人 かつみ会
特別養護老人ホーム、通所介護などの高齢者福祉のほか、保育園、学童クラブ、障害者就労支援施設などのサービスを展開する
TEL:048-546-1200 FAX:048-546-1201
https://www.enzel.jp/