特集

キラリ施設紹介

社会福祉法人鳥取福祉会 養護老人ホーム鳥取市なごみ苑

2021.7 老施協 MONTHLY

ACP導入をきっかけに施設の意義・目標を明確化

独自の「なごみ苑Vision」を作成。利用者自身の判断や行動基準を尊重しながら、地域の中での“自律”を支援しています。

利用者の“自律”に向けてボランティア活動を展開

鳥取県鳥取市で社会福祉法人鳥取福祉会が運営する養護老人ホーム「鳥取市なごみ苑」は、「なごみ苑で自律して地域と共に暮らせる支援!」をスローガンに利用者自身の判断や行動基準を尊重する生活支援に取り組んでいます。法人の理念に掲げる「ともに生きる社会」に基づき、①職員の意識・行動改革、②利用者の意欲の醸成、③なごみ苑を知ってもらう——という3本柱からなる「なごみ苑Vision」(以下、ビジョン)を昨年2月に作成しました。
養護老人ホームは社会復帰(退所)へ向けての自立を支援する施設ですが、現実は退所して自宅で自立した生活を送る人はほとんどおらず、要介護度が上がって特別養護老人ホームや医療機関に移っていくことになります。所長の川口弥文さんは「それならば自立の定義を変えようと思い立ち、自分の判断基準や思いで行動することがなごみ苑でできていたら“自律”と呼ぼうと考え、施設独自のビジョンを作成し、施設の意義・目標を明確化することにしました」と語ります。

その一環として、他の高齢者施設に出向いてボランティア活動を行う「やりがい活動」を今年1月から始めました。65歳以上を対象とした鳥取市介護支援ボランティア制度になごみ苑の利用者が登録して、デイサービスセンターなどに出向いて将棋の指導を行ったり、おやつの配膳や皿洗いを手伝ったりするものです。「最初はボランティアに行くことをおっくうに感じていたご利用者様も、行ってみると楽しいということで、周囲の人を誘い、ボランティアの輪が広がっています」と、川口さんは話します。
自活して退所することだけを「自立」とするのではなく、なごみ苑で暮らしながら、自分の判断で地域に出かけていき、地域のために活動できることを、ビジョンでは「自律」した社会復帰と考えているのです。

独自の文書を作成しACPを実践

ビジョン作成のきっかけになったのが、2019年3月のACP(アドバンス・ケア・プランニング=人生会議)導入の取り組みでした。入所時点で要介護度が高く、終末期に向けた利用者本人の意思確認ができないケースが多い特養などでは、状態急変時に本人だけでなく家族も対応に困るという現状があります。「養護老人ホームに入所されるのはある程度元気で意思疎通できる方がほとんどであり、元気なうちに意思確認ができれば、いざというときにご本人の希望に沿った対応ができ、ご家族の心的負担も軽減されます」と、川口さんは中間施設として本人の思いをつないでいく必要があると語ります。

具体的には、鳥取県東部医師会や行政などの協力を得て独自に作成した「わたしの心づもり」を利用しています。これは、質問に答えて記入していくことで終末期の治療方針や最期の望みなどの意思確認を行えるACP用の文書です。
取り組みを始めるときには、元気な利用者は延命など死にまつわる話をされると抵抗を覚えるのではないかという危惧もあったそうですが、「しっかりとしたマニュアルを作成して丁寧に説明すると、もしものときの話をしておけて良かった、元気なうちに決めておくことができてありがたい、といった声が意外に多いことがわかりました」と、川口さんは話します。現在、7〜8割の入所者が「わたしの心づもり」を作成しているそうです。
「元気なときは無理な延命措置は望まないという意思表示が多いですが、健康状態に変化があったときには気持ちも変わるかもしれないので、そのつど意思確認を行います」
そのときの状態に見合った文書を作成し、退所するときにはその文書を次の移管施設に渡し、本人の希望を引き継ぎます。利用者の状態が急変し、医師から延命するかどうかの判断を突然委ねられたケースでも、家族が戸惑うことなく意思表示ができ、「ありがたかった」という声が届いています。
このように、最期まで自分らしく豊かな人生を送ることを自分自身で決めていく“自律”を独自に定義することで、なごみ苑が将来どういう施設をめざすのかというビジョンの構築につながった、と川口さんは強調します。

職員の専門性を高め利用者の意欲向上を支援

冒頭で述べた「やりがい活動」のほかにも、なごみ苑ではさまざまな地域活動に取り組んでいます。
その一つ「赤ちゃん先生プロジェクト」は、NPO法人「ママの働き方応援隊」から3歳未満児と子育て中の母親が講師役として同施設を訪れ、高齢者と交流する取り組みです。利用者と一緒に手遊びをしたり、歌を歌ったりするほか、母親が利用者に子育てについて相談することもあります。

また、社会貢献活動として、保護観察中で社会復帰をめざす少年の職場体験の受け入れも行っています。「最初はコミュニケーションに戸惑うこともありますが、ご利用者様や職員から感謝の言葉を受けると自信を持つようになり、顔つきも変わってきます」と、川口さんは話します。体験を通して高齢者福祉施設で働くことを希望し、資格を取得した人もいるそうです。
川口さんは、「今後、ご利用者様のニーズが多様化するのに伴い、職員もそれぞれの専門性を高め、ご利用者様の意欲がより向上するような支援を続けていきたいです」と抱負を語ります。

社会福祉法人三光会 養護老人ホーム 鳥取市なごみ苑 悠久の里

社会福祉法人 鳥取福祉会
養護老人ホーム 鳥取市なごみ苑

養護老人ホーム(定員90人)、ショートステイ(定員6人)
鳥取市的場2丁目1番地
TEL:0857-53-6551FAX:0857-53-6554
https://www.tottorifukushikai.jp
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