特集

キラリ施設紹介

社会福祉法人三光会 特別養護老人ホーム悠久の里

2021.6 老施協 MONTHLY

地域の“つながり”を生み出す場としてオレンジカフェを展開

地域のなかでの“つながる場”を意識し、特養による「オレンジカフェ」を開設。困りごとの解決に挑戦しています。

カフェではレクリエーションなども実施。多世代が集まる場所となっている

地域福祉事業部を立ち上げ 課題の洗い出しに着手

大分県中津市の三光会は、社会福祉法人三光会と医療法人三光会からなるグループで、「医療を通じて地域社会に奉仕する」という基本理念のもと、地域に根づいた活動を展開してきました。
社会福祉法人三光会は、2002年に開設した特別養護老人ホーム悠久の里を中心に、サテライト型居住施設などを運営しています。
理事長の那須千代さんは「三光会は、地域の人々が住み慣れた場所での生活を継続できるよう、医療・介護・福祉を総合的に提供してきました。地域との関わりをより深め、地域貢献をさらに進めるため、17年に特養の一部署として地域福祉事業部を立ち上げました」と語ります。
地域福祉事業部は、社会福祉主事の酒井久美子さんが運営しています。もともと栄養士として同施設に入職しましたが、介護に魅力を感じて介護福祉士の資格を取得。さらにコミュニティソーシャルワーカー、認知症介護指導者を取得し、生活困窮者のサポート事業、大分県の法定研修や認知症サポーター養成講座の講師などの地域事業に携わってきました。

地域福祉事業部を担当する酒井久美子さん 理事長の那須千代さん

同事業部新設にあたっては、理事長の考えのもと、ただ地域資源を提供するだけではなく、地域が必要とする事業を行いたいと考え、地域ニーズや課題がどこにあるかを調べました。社会福祉協議会の作業部会に参加し、高齢者や子育て世代などさまざまな立場の住民からの要望を聞くことなどを通して、「孤立」「認知症患者への対応」「集まる場づくり」「ひきこもり支援」「就労準備支援」の5つの課題が見えてきました。
「行政の事業や会合に参加するなか、制度の狭間で必要な支援が届いていない方や地域で孤立している方が多いことに気づきました。声を上げることができない方に、地域とのつながりをつくる仕組みの必要性を痛感しました」と振り返ります。
5つの課題解決へ向けて、「住民同士で解決することができる力を持つための地域づくり」をコンセプトに、オレンジカフェ(認知症カフェ)の仕組みを活用することにしました。認知症の人や家族の相談・交流の場という機能だけでなく、多世代が集い、地域のなかで“つながり”をつくるカフェをめざしたのです。

障害者支援学校や介護経験のある家族の方から提供してもらった絵をランチョンマットとして活用 カフェで使用する調度品はひきこもりの人が選んで、購入した

認知症やひきこもりの人もスタッフとして参加

コンセプトに沿ったカフェにするために、地域で孤立している認知症の人やひきこもりの人にもスタッフとして加わってもらうこととし、それぞれが活躍できる役割を考えました。
認知症の人には受付とウエイトレス、ひきこもりの人には就労準備支援として名簿作成やチラシづくりなどの事務作業をお願いすることにしました。若い世代との交流を図るため、地元高校の食物科の生徒に、カフェで提供するデザートの調理を依頼。本音で話せる雰囲気をつくろうと、介護経験のある地域住民にも相談係を頼みました。

カフェのお客さんと交流する地元高校の食物科の生徒さん

スタッフの募集は、社協や民生委員を通して行い、30人の認知症高齢者やひきこもりの人に声をかけましたが、「外に出ることが嫌」「失敗して恥ずかしい思いをしたくない」と、なかなか承諾をもらえませんでした。それでも「困っているのでぜひお願いしたい」と何度も熱心に足を運んだところ、7人が参加してくれることになりました。
認知症スタッフの負担はできる限り軽くするように配慮。配膳はワンプレートにしてカートで運び、テーブルには目印を付け、専門職が各テーブルにつきます。配膳を間違えても否定的な言葉はかけないようにしています。
こうして18年7月、「オレンジCafé 三歩」がオープンしました。主な客層は、要介護認定申請前の70〜90代の高齢者とその家族。悠久の里の歯科衛生士が口腔ケアのレクリエーションなども行っています。

店名の飾り

特別養護老人ホーム悠久の里の取り組み 人は“命”だけでは活きられない?!~”繋がる場”オレンジカフェ開設までの取り組み

誰一人孤立させない地域づくりをめざす

オープン直後は緊張感もあり、スタッフ間でもめることもありました。そんなときは専門職がスタッフの動きに気を配り、必要があればすぐに対応するようにしたことや、お客やボランティアの学生とのコミュニケーションが生まれたことで、穏やかな雰囲気が見られるようになりました。利用者からも、開催を楽しみにする声が増えていったといいます。
オープン後の2年間で、カフェへの月平均参加人数は32人(うち10人前後はスタッフ)。カフェへ相談に来たことがきっかけで、認知症の人を病院やデイサービスに、在宅での介護に悩んでいる人を行政につなぐこともできました。現在は新型コロナウイルス感染症の影響により休止中ですが、カフェを利用する独居高齢者を月に一度は酒井さんが訪問し、コミュニケーションをとって困りごとをすくい上げるようにしています。

ひきこもりの人が事務局を担当。チラシを作成して近所に配る活動も行った

これまでは困りごとの実情を伝えることもできなかった人たちとのつながりを着実に築きつつあると、酒井さんは手応えを感じています。「どなたでも来られるようにしたことで、これまで行政の手が届かなかった、地域で孤立していた方からの相談の電話やメールが増えました。スタッフとして参加してくださった方たちも以前に比べて心を開いて話してくれるようになり、役割をこなしたことでやりがいを感じてくれたと思います」。また、「ひきこもりの高齢者の人は、かなりいらっしゃいます。こうした方々に対し、地域の企業と一緒に就労準備支援を行い地域の中での役割をつくりだすなど、社会福祉法人として、さらに活動の幅を広げていきたいですね」と抱負を語ります。
施設長の松永卓也さんも、「地域課題に取り組んだことで、住民の方から感謝の言葉をいただくことも増えました。外への視点を持つことで、当法人は地域にとって欠かせない存在になるのではないでしょうか」と意気込みを語ります。

施設長の松永卓也さん。腕に抱く豆柴犬がカフェの店長を務めた

キラリスタッフの声

社会福祉法人三光会 特別養護老人ホーム 悠久の里

社会福祉法人三光会
特別養護老人ホーム 悠久の里

(定員89人:従来型50人、ユニット型29人、短期入所10人)
大分県中津市大字永添945番地
TEL:0979-26-0760 FAX:0979-26-0761
http://www.matsunaga-hp.com/related_facility/f06.html